見たい、知りたい!今月のイベント―2021年8月

見たい、知りたい!今月のイベント―2021年8月

8月も残りわずかとなり、夜には秋を感じさせる鈴虫の声も多く聞くようになってきましたね。

今月は、観察と発見をテーマにしたものや展示品をレンタルできる企画、閉館前ラストの企画展など、編集部おすすめのイベントを5つご紹介します!

日本のグラフィックデザイン 2021

六本木の東京ミッドタウン・デザインハブにて9月5日まで開催されている本展は、日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)が1981年から毎年発行している年鑑『Graphic Design in Japan』の、2021年版の発行を記念して開催されている展覧会です。

厳正な選考を通過した約600作品(1,500図版)が掲載されている『Graphic Design in Japan』は、日本のグラフィックデザインのいまを伝えつつ、データベース性も持たせた、実用性の高いデザイン年鑑です。会場には、掲載作品の中から約300点が実物とモニタで展示されています。

日本のグラフィックデザイン 2021

身近な雑貨から書籍、商品パッケージ、シンボル・ロゴ、ポスター、Webサイト、映像、展覧会やショップの空間デザインなど、お腹いっぱいになるくらいデザインの“いま”を感じ取ることができる本展。各展示物のキャプションには、時折「This One!」というラベルが貼ってあるものがありますが、これはいわゆる審査員賞にあたるもの。純粋に自分が良いと思えるデザインを探しつつ、審査員が特に気になったデザインを知ることができます。

会期:2021年7月16日(金)~9月5日(日)
場所:東京ミッドタウン・デザインハブ
https://designhub.jp/exhibitions/6848/

WHO ARE WE 観察と発見の生物学

大分県立美術館で9月12日まで開催されている「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」は、国立科学博物館の収蔵庫の中から世界屈指の動物標本コレクションとして知られる「ヨシモトコレクション」を中心に、選りすぐりの哺乳類の標本を紹介する展覧会です。展示の企画編集・デザインを担当したのは、日本デザインセンターの三澤遥さん。

およそ480万点という膨大な数の標本が保管されているものの、その多くは普段公開されていない国立科学博物館の収蔵庫。「WHO ARE WE=私たちは誰なのか」という印象的なタイトルが冠された本展では、「観察の眼、発見の芽」というテーマを掲げています。“声なき標本たち”の姿を通して、見つめる眼(観察)と見つける眼(発見)を育み、ほかの動物との意外な共通点や私たちの日常とのつながりなど、標本にまつわる学びや問いを発見することができる展覧会です。

WHO ARE WE 観察と発見の生物学

提供:国立科学博物館 写真:©Gottingham

各標本が展示されている台には引き出しが付いており、引き出しを開けるとそこには観察におけるヒントが書かれています。ヒントを読んだ上でもう一度観察を行うと新たな発見がありそうです。

会期:2021年7月22日(木)~9月12日(日)
場所:大分県立美術館 3F コレクション展示室
https://www.opam.jp/exhibitions/detail/725

47 RENTAL STORE

渋谷ヒカリエにあるd47 MUSEUMは、2012年の開館以来、「旅」「クラフト作家」「これからの暮らしかた」「修理と手入れ」「発酵」など、さまざまなテーマで47都道府県の個性を紹介してきました。第28回となる企画展「47 RENTAL STORE」は、「レンタルから生まれるコミュニケーション」をテーマに、47都道府県の“もの”や“サービス”を実際に体験・購入できる展覧会です。

47 RENTAL STORE

会場に並ぶ47商品は、気に入ったものがあれば会場内でのお試しやレンタル(1週間から)できるということが本展の大きな特徴。自分の生活の中に商品を取り入れてみることで、ライフスタイルとの相性や商品そのものの魅力をリアルに体感できます。なお、気に入った商品はそのまま購入することも可能。

また、商品を使った感想や気付きをつくり手にフィードバックすることで、つくり手のものづくりを後押しすることにもつながっていきます。使い手とつくり手のあいだに新たな関係性を生み出しそうな展覧会です。

会期:2021年7月1日(木)~9月27日(月)
場所:d47 MUSEUM
https://www.d-department.com/item/DD_EVENT_27160.html

包む ― 日本の伝統パッケージ

日本のデザイン黎明期に、日本の伝統的なパッケージの収集と研究を続け、「TSUTSUMU(包む)」という言葉とともに大きな足跡を残したデザイナーの岡秀行さん。目黒区美術館で開催される本展は、自然素材のパッケージに向けた岡さんの眼差しから見えてくる、「包む」ことに日本人が込めた想いや手わざの美を紹介する企画展です。

すでに絶版になっているものの、1972年の出版以来、愛蔵書として今なお読み継がれる写真集『包』(毎日新聞社刊)。著者の岡さんは戦前からアー トディレクターとして活躍する一方で、木、竹、藁など自然素材が生かされたパッケージに魅了されて収集・研究を始め、藁の苞(つと)の素朴な美しさや、すし桶、菓子箱の職人技による伝統美に、日本人ならではの「美意識」と「心」を見出しました。それらに「伝統パッケージ」という呼称を与え、書籍の出版や展覧会を通じて、高度経済成長期の日本において消えつつある技術や美があることの啓蒙につとめました。

岡さんのコレクションは1970年代半ばには世界巡回展へと発展し、「TSUTSUMU」(包む)という言葉とともに大きな反響を呼びました。そして、同コレクションを日本の美術館で初めて本格的に紹介したのは、1988年に目黒区美術館が開催した「5つの卵はいかにして包まれたか―日本の伝統パッケージ展」でした。これを機に目黒区美術館は出品されたパッケージ群を岡さんより譲り受け、「〈包む〉コレクション」として収蔵しています。本展は、2011年にその全容を紹介する展覧会を開催して以来、10年ぶりの展覧です。

包む ― 日本の伝統パッケージ

本展で展示されるパッケージは、製造されてから30年以上が経ち、自然素材ゆえの色褪せや割れといった経年変化が見られます。しかし、展示でパッケージに向けられた岡さんのまなざしと、「包む」ことに込められた日本人の心や手わざの美しさを見つめる貴重な機会になりそうです。

会期:2021年7月13日(火)~9月5日(日)
場所:目黒区美術館
https://mmat.jp/exhibition/archive/2021/20210713-358.html

絶望を覆すことができない恋を正義とせよ、きみが、死んでも残る花。

2021年8月31日をもって閉館となる福岡の三菱地所アルティアム。32年間にわたり福岡の文化発信拠点のひとつとして企画を開催してきた同館の最後の展覧会となる本展は、過去に三菱地所アルティアムで展示し、活躍を続ける作家たちによるグループ展です。参加作家は塩田千春さん、淺井裕介さん、潘逸舟さん、津田直さん、山内光枝さん、鹿児島睦さん、最果タヒさんの7名。

印象に残る展覧会タイトルは、出品作家の一人である最果タヒさんが閉館前最後となる本展に寄せて書き下ろした詩の一文です。

絶望を覆すことができない恋を正義とせよ、きみが、死んでも残る花。

本展メインビジュアル

1989年の開館以来、“時代の新しい表現”を紹介する場所として、美術、デザイン、建築、文学、映画、演劇、ファッション、食など幅広いジャンルの展覧会を開催してきた同館。特に現代美術においては、中堅作家の個展や地元作家の紹介に力を入れてきました。

本展開催によせて同館は、「芸術作品には、さまざまな解釈を可能にする豊かさがあります。個人的体験である鑑賞が、深い内省を伴う時、私たちの世界観は広がります。視野が広がり、着眼点が増え、言葉にならない感覚や考えを認識する機会にもなります。アルティアムがなくなっても、来場者それぞれが獲得した鑑賞体験が、各々の心に長く留まることを願って、本展を開催します」と、コメントしています。なかなか外出が難しい現在の状況ですが、お近くにお住まいの方は閉館前に足を運んでみてはいかがでしょうか。

会期:2021年7月14日(水)~8月31日(火)
場所:三菱地所アルティアム
http://artium.jp/exhibition/2021/21-03-the-last-exhibition/

以上、今月は5つのイベントをご紹介しました。毎日のように新型コロナウィルスの感染者数が過去最高を記録している日々が続きますが、読者のみなさんもどうか気をつけてお過ごしください……!展覧会に行く際は予約制のところも多いので、公式サイトを確認して、感染症対策をしてお出かけくださいね。来月も編集部おすすめのイベントをご紹介します!

タイトルデザイン:宮岡瑞樹 構成:石田織座(JDN)