春らしい陽気が増え、桜の開花も話題になっている今日この頃。コロナ禍の春も2年目を迎えました。昨年は多くの美術館やギャラリーが休館を余儀なくされるなどの対応に追われましたが、今年は感染症対策を行った上で開館しているところばかりです。
今月は、ブックデザインや本にまつわる展覧会を中心に、いま観てほしい5つのイベントをご紹介します。
世界のブックデザイン 2019-20
印刷博物館で毎年開催されている、世界のブックデザインを紹介する本展。今回は、2020年3月に発表された「世界で最も美しい本コンクール」の入選図書とともに、4カ国(ドイツ、スイス、カナダ、中国)のコンクール入賞図書を加えた、約90点を展示しています。
例年は展示されている受賞図書のすべてを手にとって閲覧することができましたが、今回は新型コロナウイルス感染予防・拡散防止のため、限定した図書のみ閲覧可能だそうです。もちろん中面が見れると理想ですが、本の顔となる表紙を見るだけでも各国のブックデザインの方向性や良さがわかるはず。入場はオンラインによる事前予約制なので、公式サイトのご確認をお忘れなく!
場所:印刷博物館
https://www.printing-museum.org/collection/exhibition/g20201212.php
ブックデザイナーの仕様書展 2021
「本のある暮らしの拠点」になることを目指している、青森県・八戸市の八戸ブックセンター。5月初旬まで開催されているのは、本づくりにおいて重要な「仕様書」にまつわる企画展です。
本づくりに関わるひとたちの想いをどうやって「本」という形にしていくか、数ある本の中からどうやって手にとってもらうか、一冊の本の中にはデザイナーの方たちのアイデアが詰まっています。本展では、ふだん目にすることがない「仕様書」と、その仕様書をもとにできあがった「本」を一緒に紹介しています。
参加しているデザイナーは、川名潤さん、鈴木千佳子さん、山田和寛さんの3名。1冊の本が本という形になるまでには、どんなアイデアや試行錯誤があるのか。仕様書を通じて、デザイナーのみなさんの頭の中をちょっとのぞけるような展示になっています。
ドラえもん1コマ拡大鑑賞展
2020年に50周年を迎えた「ドラえもん」。50周年にまつわる展覧会やイベントがさまざまな場所で行われていますが、渋谷PARCOのほぼ日曜日で開催されているのは、ドラえもんの漫画の「1コマ」にフォーカスをあてた展覧会です。
藤子・F・不二雄先生の描く漫画『ドラえもん』には、1コマだけをとりだして見てもアートとして成り立つ絵がたくさんあります。本展は、そんなコマをいくつか選んで拡大し、額装をして、まるで美術館のように鑑賞することができる展覧会です。
なお、コマが含まれている貴重な原画の数々は「川崎市 藤子・F・不二雄ミュージアム」に飾られています。そちらでも50周年にまつわる展覧会が実施されているので、チェックしてみてはいかがでしょうか。
こわくて、たのしいスイスの絵本展~クライドルフ、フィッシャー、ホフマンの世界~
兵庫県・神戸市の神戸ファッション美術館で3月28日まで開催されている「こわくて、たのしいスイスの絵本展」。展覧会タイトルからも興味を引かれる本展では、スイスの文化が息づく絵本を紹介しています。
エルンスト・クライドルフ、ハンス・フィッシャー、フェリックス・ホフマンの3名の絵本にフォーカスし、長野県にある小さな絵本美術館協力のもと、原画やリトグラフをはじめ、手描き絵本も含めた約150点を紹介。
アルプスの草花を擬人化した『花のメルヘン』をはじめ、数々の絵本を手がけ、ヨーロッパにおける絵本画家の先駆けとなったエルンスト・クライドルフ。勢いのある線を重ねて絵を描き、『ブレーメンの音楽隊』や、『こねこのぴっち』などを発表し、人気を博したハンス・フィッシャー。わが子へ贈るために手作りした『おおかみと七ひきのこやぎ』が、日本でも愛される絵本となっているフェリックス・ホフマン。
草花や風俗、独自の伝説などを通じ、スイスらしさをそれぞれに表現した彼らが手がけた絵本や挿絵には、楽しそうに見えていても実はこわい場面や、こわそうに見えていても楽しい場面が描かれています。少しこわいけど、楽しいスイスの絵本の世界をお楽しみください。
場所:神戸ファッション美術館
https://www.fashionmuseum.or.jp/special/swiss_picturebook/?page=0
20世紀のポスター[図像と文字の風景]
1910~20年代のヨーロッパで生じ、芸術・デザインに革新をもたらした「構成主義」。特にビジュアルデザインの領域において、図像と文字を幾何学的・抽象的な融和のもとに構成しようとする特徴的な表現様式をもたらしました。
エル・リシツキー、ヤン・チヒョルト、マックス・ビル、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマンなど、数々のアーティスト/デザイナーが時代を超えて共有したこの様式は、広くビジュアルデザインの可能性を拡張する試みとして発展を重ね、今日のビジュアルデザインの基盤を形成しています。
東京都庭園美術館で開催されている本展は、この潮流のもとに世に送り出され、時代を彩った“構成的ポスター”が、20世紀を通じて織りなした図像と文字の風景を、竹尾ポスターコレクション(多摩美術大学寄託)により辿るものです。展示される個々のポスターが示す鮮やかな創造力や、それらのポスターが総体として示す歴史的な継承と発展のプロセスを楽しむことができます。
場所:東京都庭園美術館(本館+新館)
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/210130-0411_ConstructivePostersOfThe20th.html
以上、今月は5つのイベントをご紹介しました。2020年に引き続き、今年もマスクをしっかり装備しての春となりましたが、対策はしっかりした上で展示を楽しみましょう。来月も編集部が気になるイベントをご紹介します!
タイトルデザイン:大塚文香 構成:石田織座(JDN)