12月もなかばを過ぎ、2020年も残すところあとわずか。年末年始に向けて目まぐるしい日をお過ごしの方も多いと思いますが、今月も時間を見つけてぜひ行ってみてほしい、編集部おすすめのイベントをご紹介していきます!
今月は、編みもの、現代アート、絵本、眠りにまつわるアート、映画衣装などに関する展覧会を集めました。
編みものけものみち 三國万里子展
福岡の三菱地所アルティアムで開催される「編みものけものみち 三國万里子展」は、数々の手芸本を出版し、編みものキットのお店「Miknits」を展開する、ニットデザイナー・三國万里子の九州初展覧会。
三國万里子の作品は、チャーミングでユーモラス、そして懐かしい心地良さが漂うニットたち。その魅力は、図柄の見立てのおもしろさ、サイズ感や着心地の良さだけでなく、編み飽きないための工夫もあいまって、「見る」「着る」「編む」といった複数の観点からバランス良く生み出されているからかもしれません。ときには、豊かな物語が始まりそうな情景が込められた作品もあり、三國万里子というニットデザイナーの、編みものの枠にとらわれない感性の豊かさがうかがえます。また、昨年は、ヨーロッパで買い付けたアンティーク・ビンテージアイテムの展示販売会「MY FAVORITE (OLD) THINGS」を開催するなど、古いものを見る目そのものにも定評があります。
本展では、三國万里子のニット作品や愛用道具、ニットとともに楽しむ洋服やアクセサリーのコレクション、そして貴重な所蔵書籍や資料なども展示されます。幅広い関心とチャレンジングな姿勢で、ニットの独自の楽しみ方を伝え続けてきた三國万里子。彼女が生み出した豊かな創造とその道のりを楽しめる展示内容となっています。
場所:三菱地所アルティアム
生命の庭―8人の現代作家が見つけた小宇宙
東京都庭園美術館で1月12日まで開催されている「生命の庭―8人の現代作家が見つけた小宇宙」は、8人の現代作家たちの作品を通して、人間と自然との関係性を問い直す試みを行う展覧会です。参加作家は、青木美歌、淺井裕介、加藤泉、康夏奈、小林正人、佐々木愛、志村信裕、山口啓介の8人。
太古の昔にひとつの生命体として誕生して以来、刻々と変化する地球の過酷な環境に柔軟に適応することで進化を遂げ、高度な知性を獲得するに至った人類。その一方、仮想現実に囲まれた日々の暮らしの中で、ともすれば自分たちが自然の一部であることさえ忘れがちです。
コロナ禍により、自然との新たな関わり方が求められている現在、私たちが本能的に有している感覚を取り戻す手段として、注目されているアートの役割。会場に展示された絵画や彫刻、映像、インスタレーションなど個性豊かな作品の数々は、私たちのなかにひそむ自然をそっと呼び起こしてくれるかもしれません。
場所:東京都庭園美術館(本館+新館)
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/201017-210112_GardenOfLife.html
『ねないこだれだ』誕生50周年記念 せなけいこ展
松屋銀座にて来年1月13日まで開催の「『ねないこだれだ』誕生50周年記念 せなけいこ展」。『ねないこだれだ』や『いやだいやだ』の作者として知られるせなけいこは、1969年、子育てに奔走する中、37歳で絵本作家としてデビューしました。
以来、おばけや妖怪、うさぎなどをモチーフに、貼り絵の手法を用いて生み出したシンプルながらも独創的な絵本は、世代を越え、多くの親子に読み継がれるロングセラーとなっています。
本展では、代表作のひとつ『ねないこだれだ』の誕生50周年を記念し、絵本デビュー作の『いやだいやだの絵本』4冊シリーズをはじめとする、絵本原画など約250点を展示。会場には、楽しい仕掛けもあり、小さなお子さんでも楽しめる展覧会です。
眠り展:アートと生きること
人々にとって生きていく上で欠かせないだけでなく、芸術家たちの創造を駆り立ててきた「眠り」をテーマにした展覧会が、東京国立近代美術館で開催されています。本展は、東京国立近代美術館と国立美術館による合同展。国立美術館所蔵の絵画や版画、素描、写真、立体、映像など幅広いジャンルの作品約120点から、「眠り」がいかに表現されてきたか、それが私たちに投げかけるものは何かを探る展覧会です。
会場には、ルーベンス、ゴヤ、ルドン、藤田嗣治、内藤礼、塩田千春など、国立美術館の豊富な所蔵作品の中から厳選した古今東西のアーティスト33人の作品約120点が一堂に会します。
また、本展の展示室の設計デザインはトラフ建築設計事務所が、グラフィックデザインを平野篤史(AFFORDANCE)が担当。「眠り」というテーマから、展示空間にはカーテンを思わせる布や、布のようなグラフィックなどが現れます。また、「夢かうつつか」はっきりしない状態をイメージさせる不安定な感じの文字デザインなど、起きていながらにして「眠り」の世界へいざなうさまざまな仕掛けも見どころです。
場所:東京国立近代美術館
https://www.momat.go.jp/am/exhibition/sleeping/#section1-1
石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか
東京に生まれ、アートディレクター、デザイナーとして多岐にわたる分野で新しい時代を切り開きつつ、世界を舞台に活躍した石岡瑛子。東京都現代美術館で開催されている本展は、時代を画した初期の広告キャンペーンから、映画、オペラ、演劇、サーカス、ミュージックビデオ、オリンピックのプロジェクトなど、その唯一無比の個性と情熱が刻印された仕事が総覧できる、世界初の大規模な回顧展です。
石岡瑛子の仕事は、マイルス・デイヴィス、レニ・リーフェンシュタール、フランシス・フォード・コッポラ、ビョーク、ターセム・シンなど名だたる表現者たちとの緊張感に満ちたコラボレーションの連続で生み出されてきたものでもあります。
全世界から集めた壮麗な映画衣装などによる、圧倒的な石岡瑛子デザインを体感できるとても貴重な本展。石岡瑛子ファンはもちろん、映画好き、衣装好きの方などさまざまな世代に響く展覧会です。
今年はコロナウィルスの影響で、ほとんどの人の生活スタイルが変化せざるを得ない1年となった気がします。旅行などの遠出が難しいいま、各美術館やギャラリーではそれぞれ感染症対策を行っていると思うので、気になる展示の会期を逃さないよう行ってみてくださいね。
タイトルデザイン:石井嗣也 構成:石田織座(JDN)