見たい、知りたい!今月のイベント―2020年1月

見たい、知りたい!今月のイベント―2020年1月

読者のみなさん、遅ればせながら2020年、あけましておめでとうございます!今年もJDNでは、おもしろくヒントになるような記事をたくさん紹介していきます!

さて、今年最初の「見たい、知りたい!今月のイベント」は、アート、写真、グラフィックデザイン、印刷などさまざまなイベントを集めてみました。年始ということもあって、見聞を広げられそうなものをご紹介します。

未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命 ― 人は明日どう生きるのか

最先端テクノロジー、アート、デザインなどを通して、近未来の社会や人間のあり方を考える展覧会が、3月29日まで森美術館で開催中です。

テクノロジーの発達は、いま、私たちの生活のさまざまな側面に大きな影響を与えようとしています。近い将来、人間は多くの判断をAI(人工知能)に任せるようになり、AIが人類の知能を超え、私たちの社会や生活に急激な変化をもたらす「シンギュラリティ」が到来すると言われています。

エコ・ロジック・スタジオ《H.O.R.T.U.S. XL アスタキサンチン g》2019年 © NAARO

本展は、「都市の新たな可能性」「ネオ・メタボリズム建築へ」「ライフスタイルとデザインの革新」「身体の拡張と倫理」「変容する社会と人間」という5つのセクションで構成し、100点を超えるプロジェクトや作品を紹介するもの。

AI、バイオ技術、ロボット工学、AR(拡張現実)など最先端のテクノロジーとその影響を受けて生まれたアートやデザイン、建築を通して、近未来の都市、環境問題からライフスタイル、そして社会や人間のあり方を来場者とともに考える展覧会です。

ちなみに、展覧会タイトルはIBMが開発したAI(人工知能)「IBM Watson」との協働により決定されました。AIによって生成された15,000を超える候補から「未来と芸術展:AI、ロボット、都市、生命―人は明日どう生きるのか」というタイトルが決まったそうです…!

会期:2019年11月19日(火)~2020年3月29日(日)
場所:森美術館
https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/future_art/index.html

至近距離の宇宙 日本の新進作家 vol.16

恵比寿にある東京都写真美術館が、毎年異なるテーマを決めて開催している「日本の新進作家」展。2002年より開始し、シリーズ第16回目となる今回のテーマは「至近距離の宇宙」です。

齋藤陽道 《星の情景》〈せかいさがし〉より 2019年 発色現像方式印画

齋藤陽道 《星の情景》〈せかいさがし〉より 2019年 発色現像方式印画

一般的に世の中では、家を出ないこと、遠くに行かないこと、広い世界を見ようとしないことは否定的に受けとられ、さまざまな国へ出かける活動的なことは肯定的にとらえられる傾向にあります。その一方、近年では、インターネットで世界の隅々の風景を見ることができ、世界中のものを出かけることなく手に入れることができるほか、VRやホームシアターなどによって家にいながらリアルな臨場感や没入感を持って映像体験ができるなど、どこかに行かずとも何でもできることを、グローバル化とともに人々は積極的に受容しています。

本展では、はるか遠い世界に行くのではなく、ごく身近な身の回りに深遠な宇宙を見いだす作品を紹介。出展作家には、相川勝、井上佐由紀、齋藤陽道、濱田祐史、藤安淳、八木良太の6組が並びます。

会期:2019年11月30日(土)~2020年1月26日(日)
場所:東京都写真美術館
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-3447.html

ニューヨークが生んだ伝説の写真家 永遠のソール・ライター

2017年に日本初の回顧展を開催し、大きな話題を呼んだ写真家ソール・ライター。天性の色彩感覚によって「カラー写真のパイオニア」と呼ばれたライターの展覧会が再び、Bunkamura ザ・ミュージアムで3月8日まで開催されています。

ソール・ライター《薄紅色の傘》1950年代、発色現像方式印画 ⒸSaul Leiter Foundation

本展では、前回の展覧会では発掘しきれなかった膨大なアーカイブの中から、世界初公開となる作品を含む、多くの未公開作品と豊富な作品資料を通して、ソール・ライターのさらに知られざる一面を紐解き、その魅力に迫ります。

雨に濡れたガラス越しに人物を捉えた写真や、雪道の中で鮮やかな赤い傘をさして歩く人物を捉えた写真など、写真でありながら抽象画のような印象もあるライターの作品。「こういう風景の切り取り方があったのか!」と、写真を志す方はもちろん、デザイナーの方にも大きな参考になりそうです。

会期:2020年1月9日(木)~ 2020年3月8日(日)
場所:Bunkamura ザ・ミュージアム
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/20_saulleiter.html

動きの中の思索―カール・ゲルストナー
ギンザ・グラフィック・ギャラリー第377回企画展

ギンザ・グラフィック・ギャラリーでは、第377回企画展として「動きの中の思索―カール・ゲルストナー」が1月18日まで開催中です。

1965年、日本のデザイン胎動期に、若手デザイナー11名による展覧会「ペルソナ」が松屋銀座で開催されました。田中一光、福田繁雄など、当時30歳前後の若さで活躍していたグラフィックデザイナーたちの仕事を紹介したもので、1週間の会期中に35,000人もの来場者がありました。

この展覧会に招聘された海外ゲスト4名のうちの一人が、スイスのグラフィックデザイナーであるカール・ゲルストナーでした。

National-Zeitung Poster / 1960 / <br />Photograph Courtesy of the Museum für Gestaltung Zürich, Poster Collection, ZHdK

National-Zeitung Poster / 1960 /
Photograph Courtesy of the Museum für Gestaltung Zürich, Poster Collection, ZHdK

本展は、その伝説的な展覧会から半世紀を経た今、改めてその業績に焦点をあて、ゲルストナーとは一体何者だったのか、豊富な作品や資料を通して紐解くもの。

現在も古びることのない洗練された広告デザイン25点や傑作ポスター9点をはじめ、CI構築のプロセスや、1964年に上梓した『デザイ二ング・プログラム』の全貌を紹介。また、彼がデザインと並行して取り組んだアート作品にも着目し、デザイナー、そしてアーティストとしてのゲルストナーの思考に迫ります。日本初個展となる本展、グラフィックデザインを学ぶ上で見ておきたい展覧会です。

会期:2019年11月28日(木)~2020年1月18日(土)
場所:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
http://www.dnp.co.jp/gallery/ggg/

ニューヨーク・アートシーン
ロスコ、ウォーホルから草間彌生、バスキアまで ―滋賀県立近代美術館コレクションを中心に

戦後、画期的な表現を次々と生み出して注目を集めた街、ニューヨーク。埼玉県立近代美術館で開催中の「ニューヨーク・アートシーン」は、ニューヨークを中心としたアメリカ美術の半世紀を紹介する展覧会です。

アーシル・ゴーキー《無題(バージニア風景)》1943-44年頃 油彩、カンヴァス 滋賀県立近代美術館蔵

大戦中、戦火を逃れてヨーロッパから移り住んだ多くの作家たちによって伝えられた近代美術はアメリカの若者たちを刺激し、新しい意欲的な表現へと道を開きました。抽象表現主義、ネオ・ダダ、ポップ・アートといったアメリカ独自の美術が生まれたほか、草間彌生や河原温といった日本人アーティストも活躍していました。

同展では、現在改修のため休館中の滋賀県立近代美術館が所蔵する日本屈指の戦後アメリカ美術のコレクションを中心に、国内の美術館に所蔵される優品を加えた約100点の作品によって、ニューヨークという都市で繰り広げられたアメリカ美術の半世紀を紹介しています。

アーシル・ゴーキー、モーリス・ルイス、マーク・ロスコ、マルセル・デュシャン、アンディ・ウォーホル、ロイ・リクテンスタイン、草間彌生、河原温など名だたるアーティストの作品が一堂に会する本展。アートシーンを贅沢にふりかえることができる展覧会となりそうです。

会期:2019年11月14日(木)~2020年1月19日(日)
場所:埼玉県立近代美術館
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/

たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代

東京・墨田区にあるたばこと塩の博物館で、2月16日まで開催されている「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」展。本展は、ポスターが広告メディアの花形だった1890年代から1960年代に製作された作品を展示するものです。

会場では、明治期の美しい石版印刷ポスターや、大正から昭和にかけて活躍した図案家によるポスター、名コピーが登場した昭和30年代のポスターなどから日本のグラフィックデザインの変遷を紹介。あわせて、サヴィニャックや有名デザイナーの作品を含む、海外のたばこポスターも並びます。約100点のさまざまな資料から、印刷技術の歴史や時代を映すデザインについて知ることができる展覧会です。

先日、同展の展覧会レポートを公開したので、ぜひそちらもチェックしてみてください!

【展覧会レポート】印刷からひも解く、日本のグラフィックデザインのルーツ。「たば塩コレクションに見る ポスター黄金時代」展

1月というと毎年あっという間に過ぎていってしまう気がしますが、2020年の事始めとして、デザインやアートの世界に浸ってみてはいかがでしょうか?来月もお楽しみに!

タイトルデザイン:akira muracco 構成:石田織座(JDN)