インスピレーションを形にした実験展示「DRIED」、つくられていない造形美

インスピレーションを形にした実験展示「DRIED」、つくられていない造形美

京都を拠点に活動する「PULL + PUSH PRODUCTS.」のデザイナー、佐藤延弘氏の個展が浅草の蔵前にあるgallerykissaで10月24日~11月7日まで開催された。

DSC07280

本展は佐藤氏が行っている、プロダクトの一歩手前にある“インスピレーション”の段階を実験的に一つひとつ形にしていくプロジェクトを展示したもの。今回は「DRIED(乾き物)」というテーマで作品が並んだ。ドライフルーツや乾物のような、量産品でありながらも均一ではない豊かな表情に着眼し、それらの製造工程をヒントとして最終的にプロダクトに落とし込むことを目的としている。

以下、興味を引かれた作品を一部紹介したい。

DSC07273

洗濯機に溜まるほこりカスからインスピレーションを得た作品。昔ながらの和室によくある「綿壁」を使い、干し柿のように干して乾燥させたもの

DSC07314

壁以外ではあまり素材として使われない綿壁は、キラキラしたラメのようなものやヒジキのような破片など多様な表情を見せていた。香りが混ぜているものもあり、匂い玉のような作品だった

DSC07309

アイデアの発端となったほこりカスも一緒に並んでいた

DSC07310

佐藤氏が描いた、作品に行きつくまでのアイデアスケッチも展示されていた

DSC07295

丸く伸ばしたスライムを放置して乾燥させたら、展示期間中にポテトチップスのようになったという。穴を開けて吊るせば、モビールなどとしても使えそう

DSC07282

ゼラチンを乾燥させたもの。スプーンで無作為にすくったものを置いておくと、それぞれ微妙にちがった表情に

DSC07321

ゼラチンについてのメモ書き。歴史なども書いてあり、佐藤氏の思考を垣間見ることができた

DSC07302

乾燥した植木もいくつか展示してあった。木の根の成長のすごさを感じる

DSC07322

会場では干し網がいくつか吊るされており、果物や野菜などさまざまなものが乾燥中だった。写真はとうもろこし

完成された美しさも魅力的だが、そこに一切意匠が加わっていない表情も美しいと改めて感じる展示だ。ゆっくりと乾燥し、できていく表情は自然が作る美にほかならない。

会場では、佐藤氏が描いたアイデアスケッチやメモ書きがいたるところに貼られており、「佐藤さんが日々頭の中で考えていることを体験するような展示です」と、ギャラリーオーナーの瀧本佳成氏は話した。会期が終わってしまい残念なのだが、インスピレーションの一端をおすそ分けしたかったのでここに記録しておきたい。

また、京都のPULL+PUSH PRODUCTS.のショップ&ギャラリーで規模を縮小した「DRIED」の展示が行なわれるそうなので、興味のある方はぜひ。

satonobuhirohitotsuhitotsu EXHIBITION 「DRIED 1.1」
会期:2015年12月4日(金)~ 12月10日(木) ※7日は休廊
時間:12:00~18:30
会場:comado(京都市右京区龍安寺五反田町15)

satonobuhirohitotsuhitotsu
http://satonobuhiro.com/