ワークウェアのリニューアルプロジェクトは、女性制作職が自分の経験や課題を共有する取り組み「つなぐプロジェクト」からの提案でスタートし、グループ従業員の声を集めて完成。今回の記事では、ワークウェアのデザイン監修を担当した丹青社の池田正樹さん、さまざまな現場の声を届けた制作職の仲野有紀さん、デサントの石川裕さん、矢澤航さんにお話をうかがいました。新たなウェアに込められた想いとは?
社員の“期待”と“着たい”にマッチしたデサントの提案
――まずはワークウェアをリニューアルすることになった経緯を教えてください。
池田正樹さん(以下、池田):丹青社ではここ数年、制作職にも女性従業員が増えており、より女性が働きやすい環境づくりを目指しています。女性が働きやすい環境づくりは、誰もが働きやすい環境につながるとも考えています。そこで、2023年から「つなぐプロジェクト」という社員同士のコミュニケーションの場を設けていました。
その「つなぐプロジェクト」から、ワークウェアをリニューアルしたいという意見が出たのがはじまりです。以前のワークウェアは長年使われており、そろそろアップデートしたいというタイミングでもありました。

池田正樹 株式会社丹青社 デザインセンター/一級建築士/シニアクリエイティブエキスパート。これまでに企業ミュージアムや大阪・関西万博のパビリオンの設計なども担当。コーポレートデザインアドバイザーも担当しており、今回のプロジェクトでは丹青社としてどのようなワークウェアが相応しいのかを監修する立場で参加
――複数の提案を受け、デサントに製作してもらうことに決まったそうですね。丹青社からはどのような要望を伝えたのですか?
池田:まず、既存ワークウェアの情報や課題の整理、他社事例リサーチをおこない、目指す姿や狙いなど、優先順位について精査しました。そこで誰にとっても働きやすいワークウェアで、「丹青社グループで働きたい、働き続けたい」と思ってもらえるようなものにしたいという想いを提案いただいたみなさんに伝えました。
石川裕さん(以下、石川):デサントはスポーツ用品、中でもウェアを得意とする会社ですが、2017年からワークウェア事業をはじめました。今回の提案にあたり、丹青社の企業理念をどう表現するのかを、デザイナーとかなり相談しました。

石川裕 デサントジャパン株式会社 デサントマーケティング部門 カテゴリーマーケティング3部 マーケティング2課 課長役。ワークウェア事業に携わって4年目
――なぜデサントにウェアリニューアルを託したのでしょうか?
池田:ご提案をいただいた中で、丹青社グループ従業員として誇りを持って働きたいという想い、従業員の“期待”や“着たい”に応えることができる点でチーム内での共感が多かったんです。
特に一番の決め手になったのはデザイン性、それから機能性ですね。当社の制作職は安全に目配りしながらも、自らフットワーク良く動くことが多く、「コンマ1秒を縮めるため」というスポーツメーカーとしてデサントが培ってきたデザインの知恵と企業姿勢が生きてくるのではと思いました。
現場の声を大事に。何度も重ねたコミュニケーション
――デザインや機能には従業員のみなさんの意見を反映したそうですね。どういったプロセスを辿ったのでしょうか?
仲野有紀さん(以下、仲野):以前のワークウェアに対しては悩みが多かったんです。例えば、丈夫な反面、シワになりやすい、洗濯をすると縮みやすいなど。色が薄かったので、女性は下着が透けるのではないかという心配もありました。さまざまな年齢、体型の従業員が働いている中で、もっとみんなが働きやすいものにしたいなと思っていました。
新しいウェアを製作するにあたっては、「つなぐプロジェクト」のワークショップなどで寄せられた女性制作職の声を踏まえ、リニューアルポイントを改めて検討していただきました。

仲野有紀 株式会社丹青社 商空間事業部 SE統括部 推進2部 推進1課 課長。商業施設などのデザインを技術の力で具現化する制作部門で、現場管理者として、安全、工程、品質、予算などをマネジメント。今回のワークウェアのリニューアルプロジェクトでは、実際にウェアを着用する立場として参加
石川:コンペの段階ではデザイン性を重視した提案をしましたが、どんな環境での仕事なのか、どのような道具を使うのかなど、何度もヒアリングをおこないました。その意見をもとに、ポケットの位置など細かい部分を少しずつ形にしていきました。
仲野:製作の途中段階でも、制作職選抜メンバーや経営幹部がプレゼン資料やサンプル類を見たり、実際に着用してみたりしてフィードバックし、それをまた形に反映していただきました。何度も検討を重ねましたね。

経営幹部も現場の声を活かしたいと検討
池田:これまでの課題をクリアすることにとどまらず、“いまの先に挑みたい”と考えました。いまは働き方改革やウェルビーイング経営にも取り組んでいますし、仕事であっても自分自身が気持ち良くありたい、快適でありたいという個々の思いを反映していくと、働きがいも高まると思っています。
――対話を大切にしながら、その会社のビジョンをデザインするという意味では、アスリートのウェアづくりにも通ずるところがありそうですね。
石川:最終的にはその企業の個性を反映したものができあがるので、そうかもしれないですね。例えば、男性のスーツは既製品である「吊るし」から購入する方法と、あるものを少しカスタマイズして自分らしさを加える「セミオーダー」、さらにすべてのサイズを測り自分らしさを表現する「フルオーダー」があります。
我々の仕事はここでいう「フルオーダー」です。こだわっていいものをつくりたいという丹青社の姿勢と、それぞれの企業のこだわりを形にしたいという我々の姿勢が上手くマッチしたのではないかなと思っています。
矢澤航さん(以下、矢澤):私は今回のプロジェクトに直接関わっていませんが、2021年まで陸上の選手としてデサントを背負って活動しており、現役時代に着用していたデサントのスポーツウェアの機能が今回のワークウェアにも反映されています。

矢澤航 デサントジャパン株式会社 デサントマーケティング部門 販売部 販売2課 主任。2021年まで陸上の選手としてデサントのユニフォームを着用して活動。日本代表として2016年リオデジャネイロオリンピックにも出場。2021年10月に引退し、2024年6月から現在の業務を担当
池田:丹青社では、従業員の満足感を高めることや、当社のバリューを体現することを大切にしてきました。なので、短期的にコストを下げるよりも、長い目線での機能的価値と情緒的価値の両立を目指しました。
会社としては、長時間労働の是正や働き方改革の一端として、ワークウェアの着心地や使いやすさは、働きやすさと働きがい双方の重要な要素だと思っています。
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