データを活用して“温かい場所”をつくる。丹青社とドコモが考える5G時代の空間デザイン(2)

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データを活用して“温かい場所”をつくる。丹青社とドコモが考える5G時代の空間デザイン(2)

5GやxRを使った、新しい空間演出の可能性

――ドコモの5Gが持つ「高速・大容量」「低遅延」「多数接続」という特徴を活用した、新しい空間演出についても2社で議論されていると聞きました。具体的には、どのような活用方法を考えているのでしょうか?

釼持:今回のテーマのような交通インフラ施設は、利用者のタイムマネジメントが厳密であるがゆえに、より効果的なプロモーションを打たないと購買につながりません。そんなとき、高速・低遅延である5Gを有効に活用できると思います。

例えば、その空間の利用者が「ここに行きたい!」と調べていると、即座に広告を出すことができたり、MR(複合現実)技術との掛け合わせをすれば行きたい場所を調べると、その場所への案内表示をムービングプロジェクターで床に映し出したりできるはずです。そういうサービスは大体がアプリを入れて展開すると思いますが、5G基地局経由でリアルタイムにプロジェクターと連動できれば、アプリダウンロードの手間もかかりません。

鈴木:いいですね。最終的にはその端末を持っている人の思考情報などに基づいた案内ができると面白いと思います。

鈴木靖隆:株式会社ドコモ・インサイトマーケティング エリアマーケティング部

釼持:そうそう。「この人はたばこを吸う人だから、この広告」とか「トンカツが好きそうだから、このレストラン」みたいな。

鈴木:逆に、「この人は最近トンカツを食べすぎだから、今日はヘルシー系」といったサジェスチョンがあったり……(笑)。

釼持:そういうサジェスチョンをしてくれると、より面白い世の中になりそうですね。しかも5Gは同時多数接続が可能なので、端末を持つ全顧客に対してさまざまなサービスを同時に提供することができる。5Gの技術で、サービスの質は確実に向上するでしょうね。

――最新技術であるxR(MR、VRなどの総称)といったテクノロジーも空間演出には効果的だと思いますが、どのような活用が期待できるのでしょうか?

鈴木: MR、VRといった技術は、あらゆる空間演出の可能性があると思います。例えば、MRの技術を使って、何もない空間にルーブル美術館の作品を映し出すこともできますよね。

釼持:逆に、「そこにあったもの」を残しておき、再現することもできるはずです。デジタルアーカイブという形で、優れたアーティストのパフォーマンスなんかも残しておきたいですね。それこそ伝統芸能とか。賛否が分かれると思いますが、息遣いやオーラみたいなものがデジタルでどこまで残せて、どこまで再現できるのかはとても気になります。

丹青社オフィスで公開された竹工芸作家 四代 田辺竹雲斎×B-OWND「竹によるインスタレーション-Gather-」(撮影:石上洋)

丹青社オフィスで公開された竹工芸作家 四代 田辺竹雲斎×B-OWND「竹によるインスタレーション-Gather-」(撮影:石上洋)

デジタルアーカイブ作成中の画面。短期展示作品も記録できるほか、普段とは異なる視点からの作品の鑑賞も可能になる

デジタルアーカイブ作成中の画面。短期展示作品も記録できるほか、普段とは異なる視点からの作品の鑑賞も可能になる

「データは冷たいものじゃない」未来の可能性を広げるデータの力

――「モバイル空間統計」だけでなく、ドコモのあらゆるICT技術(情報通信技術)を活用して得られたデータが、空間づくりの軸になってくると思いますが、今後どんな展開を期待していますか?

釼持:センシング技術や画像解析などを活用して、人々がその場所でどのように動いているかを把握するヒートマップを作れたらいいなと思っています。店レベルでやるとしたら、「この通路を何人の人がどう通り、どのくらい足を止めたのか」など、もっとくわしい人の動きを把握できれば、サービスの改善にもつなげていける。つまりデータは、発想のシーズ(種)にもなるんです。そのシーズとニーズをどう掛け合わせていくかがとても重要だと思います。

剱持祐介:株式会社丹青社 デザインセンター コミュニケーションデザイン局 エリアユニット(関西)クリエイティブディレクター

鈴木:そうですね。私たちがデータを提供してきたクライアントも、データから発見した新しい視点をベースに、販促施策を考えているというのは結構多いです。まさにそれが、データがシーズになるパターンですね。

ほかにも、アイデアの説得材料にも活用いただいています。「すごくいい施策だと思っているけど、社内を説得する材料がない」といったような場面で、データがあれば円滑に話を進めることができたり……。新しい種を生むことにも、確固たる情報を共有し、説得材料として使うこともできると思います。

釼持:特に交通インフラ施設は、商売の場だけじゃなく、国交省や航空会社からの目線も入って来るのでステークホルダーがとても多い。その人たちを巻き込んでいく上で、データという共通のフォーマットがあれば論点が絞りやすいし、納得性が高まると思います。

髙橋:もうちょっとソフトなところでいうと、効率化が求められる世の中だからこそ、煩わしいことはデータに任せてしまえば、「人の心を動かすものは何か」とか「そもそも人間が喜ぶこととは何か」とか……原点回帰じゃないですけど、そういったところに目を向けることができると思います。

髙橋亜由美さん

釼持:そうなんだよね。データは「温かい社会、面白い社会を作るためにはどうすればいいか」という気付きを与えてくれるツール、発想の源なんですよ。データや統計がベースとなる社会は、冷たい印象を持たれがちだけど、決してそんなことはないと思う。そこから生まれた空間デザインって、きっと面白いものになるはずです。

鈴木:たしかに! データが当たり前になってきたからこそ、色々な技術が発展してきたんですよね。自動車の自動運転とか……。

釼持:そうそう。自動運転で完全にハンズフリーになると、助手席に子どもを乗せて移動しながら一緒にオセロで遊んだりすることも可能になります。そうなると、移動の概念も、室内空間の考え方も、インテリアデザインも新しいものになってくる。でも、そこで生まれた新しい空間って、コミュニケーションのある温かい場所なんですよ。元号も変わったし、データ=冷たいという考え方も変えていきたいですよね。

協業は「温かい料理をつくるようなもの」。丹青社とドコモが目指す未来

――最後に、丹青社とドコモの協業で目指していくもの、未来の空間づくりについて教えてください。

釼持:この協業って、データ思考と我々のデザイン思考の掛け合わせなんですよ。お互いの強みを存分に活かして、人々が求める体験やサービスを模索し続けていきます。

鈴木:私たちが提供できるのは、データや技術といった素材です。その素材を使って、新しい空間や体験を生み出していくのは丹青社の得意とするところ。一緒に温かくて美味しい料理を作っていくようなイメージで、未来を面白いものにしていきたいですね。

プロジェクトの“中の人”に聞く

<株式会社NTTドコモ 筧慎吾さん>

2020年春より順次商用サービスの提供が始まる5Gを軸として、世界の通信技術をリードし続けるドコモ。中期戦略の「beyond宣言」では、2020年のさらにその先の未来を見据えた挑戦として、パートナー企業との協創を推し進め、社会の課題解決につながる新しい価値の実現を目指しています。そんなドコモが目指す5Gが導く未来について、パートナー戦略を担う筧慎吾さんにお話を伺いました。

筧慎吾さん(以下、筧):今の時代、1社で新しいものを作り出すことは、なかなか難しくなっています。そのためドコモでは丹青社をはじめ、3,000社以上のさまざまな分野の企業とパートナーシップを結び、5Gというサービスを通して、新しい価値の創造を目指しています。

筧慎吾

筧慎吾:株式会社NTTドコモ イノベーション統括部 企業連携担当。NTT入社後、法人営業SEを経て、ひかり電話などのサービス開発に5年間従事。新入社員の育成や中堅・中小企業への営業戦略立案、パートナー戦略などを担当。2019年NTTドコモへ転籍。これまでの営業・サービス開発経験を通して、通信キャリア×アライアンス企業=お客様の課題解決という可能性を追求。

5Gが持つ強みを存分に活かすことができれば、私たちが想像できないような未来が待っていると筧さんは言います。

筧:例えば「低遅延」なので遠方にいる優れた医師から、リアルタイムとほぼ変わらずにサービスを受けることが可能になります。また、「多数接続」が可能となればより多くのIoTデバイスが利用できるようになり、少子化や働き手の減少といった社会問題をデジタル化によって解決していけるのではないかと考えています。

なかでも5Gのサービスは、空間演出にとても効果的だそう。クリエイティブな新しい空間演出としてもワークスタイルの革新としても、その可能性は無限大。

筧:クリエイティブな視点だと、VRやMRといった技術を活用したサービスが想定できます。例えばMRのヘッドセットやスマートフォンを使い、何もない空間に世界の美術作品を再現することができれば、地方の公民館を美術館にすることだってできます。

ワークスタイルという観点で言えば、遠隔の会議やテレワークなどで有効です。テレビ会議をする空間でMRの技術を取り入れれば、専用の眼鏡をつけることで目の前に座って話しているような映像を再現することも可能ですし、メモを空間に貼り付けたり、資料の共有もしやすくなると思います。丹青社とは、そういったリアルとデジタルが融合した新しい空間づくりができるのではないかと期待しています。

丹青社との協業で、人々が感動できるような空間や体験を生み出していきたいと語る筧さん。ドコモが持つ技術と丹青社のクリエイティブな力を掛け合わせることで、新しい空間価値が生まれることは間違いないでしょう。

筧:まだまだ色々な空間や場面で我々の技術が活用できると考えていますので、丹青社とはアイデアをぶつけ合い、人々の利便性が上がったり、快適になったりする空間をつくっていけたらと思います。また、5Gの技術が当たり前の社会になれば、ライフスタイルやワークスタイルの革新にもつながっていくでしょう。豊かでワクワクする未来は、すぐそこで待っています。

文:室井美優 撮影:中川良輔 取材・編集:石田織座(JDN)

丹青社
https://www.tanseisha.co.jp/

NTTドコモ
https://www.nttdocomo.co.jp/