4億本を売り上げる、ガリガリ君。「おいしい」「楽しい」「元気」を叶えたデザイン(2)

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4億本を売り上げる、ガリガリ君。「おいしい」「楽しい」「元気」を叶えたデザイン(2)

話題の味、コーンポタージュの制作秘話

高橋:ガリガリ君といえば、話題になった「コーンポタージュ」など、やや変化球の味を思い出す方は多いかもしれません。第1弾がコーンポタージュ、第2弾がシチュー味、第3弾のナポリタン味で大変なことになるのですが……(笑)。いちばん話題になったのがコーンポタージュですが、これも提案した赤城乳業の社員の方からすると、そこまでの狙いや計算はなかったと思います。

ガリガリ君リッチ コーンポタージュ、シチュー味、ナポリタン味

ガリガリ君リッチ コーンポタージュ、シチュー味、ナポリタン味

月に2回、ガリガリ君に関わるいろいろなセクションの方が集まる会議があるのですが、僕たちも毎回参加させてもらっています。 その時に味の決定や試食も行うのですが、コーンポタージュを提案した社員の方はまったくふざけた感じではなく、真面目に味を検討していく中での一つの案だったと思うんです。冷製スープもあるし、コーンのお菓子もあるし、じゃあコーンポタージュのアイスは? という感じだと思います(笑)。

楠原:コーンポタージュを発案したのは、まだ入社して2~3年の若い社員の方でした。製造過程においてもさまざまな悩みや苦労があったと思いますが、新しく始めることに苦労はつきもの。そういったことをすべて乗り越えて発売にいたったのがコーンポタージュだったのではないかなと。

ガ赤城乳業本庄千本さくら『5S』工場 見学コース

赤城乳業本庄千本さくら『5S』工場 見学コース

デザイナーが商品開発に関わって生まれるメリット

高橋:ガリガリ君は新商品のサイクルがとても早いので、会議に参加させてもらい、開発者の想いをダイレクトに聞いたらそのまま下絵に落とし込むぐらいのスピード感が求められます。間に第三者が入ることなく、直にクライアントの意図や要望を聞いて直接デザイン案を提案できるのは、速さ以上に正しい方法なんじゃないかと僕は感じています。

ガリガリ君に関わるみんなの意見を間違いなく反映できるシステムですし、何かあった時の改善策も出しやすい。1年かけてパッケージデザインを考えるような仕事もある中で、コンビニに並ぶくらいメジャーな商品を毎回こんなにスピーディーにつくっている例って、ほかにないんじゃないかな(笑)。

歴代のパッケージ

歴代のパッケージ

楠原:赤城乳業の社員の方々は、みなさんとても気さくな方々ばかりです。だからこそプロジェクトに参加させてもらっている私たちもさまざまな意見が出しやすく、和気あいあいと商品づくりができているように思います。とてもいい関係を築かせてもらっています。

高橋:数年のテスト販売を経て、今年からタイで販売を始めたところなんです。向こうは甘くてこってりしたスイーツが主流なので、かき氷という概念があまりないようですが、気候が暑いのもあってみんな喜んで食べてくれました。ガリガリ君がアジアの国々で受け入れられれば、またおもしろいことになる予感がしています。

原点は「なんでもやってみたい」という欲張りな気持ち

キャラクターをデザインしたのは、ガリガリ君がはじめてだったという高橋さん。もともと桑沢デザイン研究所(以下、〈桑沢〉)でデザインを学び、学生時代は学業も私生活もめいっぱい打ち込んだという。今年、卒業生の中から優れたクリエイターに贈られる「桑沢賞」を受賞した。そんな高橋さんのデザイナーの原点についてはどうはじまったのか、最後にうかがった。

高橋:僕は昔から何でもやりたい性格でした。高校まではずっとサッカーをやっていましたし、プラモデルをつくるのも絵を描くのも好きでした。要は欲張りなんです。デザインは〈桑沢〉ですべて学んだのですが、きっかけは美術教師をしていた父親に勧められたことでした。ずっと父の背中を見て育ってきたので、将来は絵を描いたりものをつくる仕事がやっぱりしたかったんですね。

〈桑沢〉での3年間は、自分がいちばん成績が良かったと思えるくらい(笑)、おもしろくて充実していました。課題もめちゃくちゃ多いことで有名ですが、僕はバイトがあろうとデートがあろうと課題には毎回全力投球していたので、自分の作品を発表できるプレゼンが楽しみでしょうがなかったんです。いかに友達をあっと言わせるものをつくって、どう人と違うプレゼンをするか。それをカッコつけるわけでもなく、自然とやっていた3年間でした。もちろん、今の仕事にも活きています。

高橋俊之さん

今はこうしてガリガリ君がうちの会社のメインになっていますが、キャラクターにこだわっているわけではまったくありません。ただ、キャラクターがもつ価値や強さは実体験として充分理解しているつもりなので、キャラクターの仕事も今後もっと増やしていければ嬉しいですね。その一方で、「なんでもやってみたい」気持ちは今も同じです。おそらく、〈桑沢〉ってそういう考え方だと思うんです。細かく学部分けせずに、やりたいことを総合的にやらせてくれる環境が僕にすごく合っていたし、モチベーションにも繋がっていたのでしょうね。

構成・文:開洋美 撮影:木澤淳一郎

有限会社G
http://gweb.cc/

専門学校 桑沢デザイン研究所
http://www.kds.ac.jp/