包む ― 日本の伝統パッケージ

包む ― 日本の伝統パッケージ

日本のデザイン黎明期に、わが国の伝統的なパッケージの収集と研究を続け、「TSUTSUMU(包む)」という言葉とともに大きな足跡を残したデザイナー、岡秀行。木・竹・藁・土・紙―自然素材のパッケージに向けた岡の眼差しから見えてくる、「包む」ことに日本人が込めた想いや手わざの美を、目黒区美術館所蔵の岡のコレクションによりご紹介します。

1972年に出版された写真集『包』(毎日新聞社刊)は、すでに絶版となっているものの、愛蔵書として今なお読み継がれています。この本の著者は岡秀行。岡は、戦前からアー トディレクターとして活躍する一方で、木、竹、藁など自然の素材が生かされたパッケージに魅了され、 収集・研究を始め、藁の苞(つと)の素朴な美しさや、すし桶、菓子箱の職人技による伝統美に、日本人ならではの「美意識」と「心」を見いだし、「伝統パッケージ」と呼称を与え、書籍の出版や展覧会を通じて、高度経済成長期の日本において消えつつある技術や美があることの啓蒙につとめました。

1970年代半ばには、岡のコレクションは世界巡回展へと発展し、「TSUTSUMU」(包む)という言葉とともに大きな反響を呼びます。そして、このコレクションを日本の美術館で初めて本格的に紹介したのは、1988年に目黒区美術館が開催した「5つの卵はいかにして包まれたか―日本の伝統パッケージ展」でした。これを機に目黒区美術館は出品されたパッケージ群を岡より譲り受け、「〈包む〉コレクション」として収蔵しています。本展は、2011年にその全容を紹介する展覧会を開催して以来、10年ぶりの展覧です。

「包むことについて考えるのは、人間の生活のすべてについて考えることに他ならない」。岡は前掲書の中でこのように述べています。そして、「私たちにとって、人間とは何か、生活とは何か、社会とは何かを考えることは、つまりは私たちのこの生をどう包むかという問題だとさえいえるだろう」と。

2021年の今、私たちは新型コロナウイルスの渦中にいます。 新しい生活様式で暮らす中、身近なものへの関心や大切な人への想いなどが変化したように感じている方は多いのではないでしょうか。本展で展示するパッケージは、製造されてから30年以上が経ち、自然素材ゆえの色褪せや割れといった経年変化が見られます。しかし、展示でパッケージに向けられた岡のまなざしと、「包む」ことに込められた日本人の心や手わざの美しさを見つめることは、岡が言うように、私たちの生を考える良い機会と言えるのかもしれません。

《本文は公式サイト紹介文より抜粋/一部編集》

開催期間 2021/07/13(火)~2021/09/05(日)
※イベント会期は終了しました
時間 10:00~18:00(入館は閉館30分前まで)
休館日 月曜日(8/9は開館)、8/10
入場料 一般800円/大高生・65歳以上600円/中学生以下無料
会場
  • 目黒区美術館
  • 東京都目黒区目黒2-4-36
会場電話番号 03-3714-1201
会場URL https://mmat.jp/
詳細URL https://mmat.jp/exhibition/archive/2021/20210713-358.html