リー・キット「僕らはもっと繊細だった。」

現在は台北を活動拠点にするリー・キットは、中国への返還(1997年)を経て変貌していく故郷・香港でアーティスト活動をスタートした。初期作品のうち、布に絵具で格子柄などを描いた絵画シリーズは、色と柄のある“抽象”絵画でもあれば、日用品としての機能をもった布(=テーブルクロスやカーテンなど)という姿・形を備えた“具象”であるとも言え、絵画の概念を広げる革新的な作品群だった。そして2013年、ヴェネチアビエンナーレ香港館の屋内外に展開した自在なインスタレーションは、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が「必見の展示ベスト5」に挙げるなど、国際的な注目を集めていく。近年は、絵画やドローイング、プロジェクターの光や映像、さらには家具や日用品などを配置し、展示空間全体を淡い色調の絵画のように仕上げたインスタレーションに力を入れ、欧米アジア各地で発表を続けている。
独特の歴史的背景を持って揺れ動く街・香港を出自とするリー・キットは、アートという開かれた表現を通して自身のあり方を問い、自分が今を生きる世界と向かい合おうとしている。そして、展覧会を開催する場合、その街、その場所の空気や感情に静かに寄り添い、サイトスペシフィックな作品(=特定の場所に存在するために制作すること)をつくり上げるのも大きな特徴である。近年の東京での個展で発表した作品も、東京の空気や人々から感じ取ったものが根底にある。したがって、元は原家の私邸であり、第二次世界大戦を乗り越え、GHQから返還された後に美術館として40年の時を経ようとしている原美術館は、そのようなリーにとって、これ以上ない時空間であると考えている。リーが原美術館で何を感じ、どのような“絵画”を描くのか、本展はリーの魅力が遺憾なく発揮される機会となる。
【関連イベント】
●原美術館学芸員によるギャラリーガイド
日時:日曜・祝日 14:30~(30分強)
開催期間 |
2018/09/16(日)~2018/12/24(月) ※イベント会期は終了しました
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時間 | 11:00~17:00(水曜日〈祝日を除く〉のみ20:00まで/いずれも入館は閉館30分前まで) |
休館日 | 月曜日(12/24は開館) |
入場料 | 一般1,100円/大高生700円/小中生500円/原美術館メンバーと70歳以上の方は無料/学期中の土曜日は小中高生の入館無料 |
参加アーティスト | リー・キット |
会場 |
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会場電話番号 | 03-3445-0651 |
会場URL | https://www.haramuseum.or.jp/jp/hara/ |
詳細URL | https://www.haramuseum.or.jp/jp/hara/exhibition/243/ |