ミラノサローネ国際家具見本市での日本の家具4社、2017年の戦い方

市内からサローネへと会場を移したKARIMOKU NEW STANDARD photo: Takumi Ota市内からサローネへと会場を移したKARIMOKU NEW STANDARD photo: Takumi Ota

2017年4月4日から9日までの6日間で開催されたSalone del Mobile.Milano 2017(第56回ミラノサローネ国際家具見本市、以降サローネ)。今回は165カ国から343,602人の来場者を集めました。前回のエウロルーチェ、Workplace3.0開催年と比較して10%増加とのことです。

会期前に数多く届くインビテーションから、今年もその盛り上がりに疑いはありませんでした。一方、会期が例年より1週早いこと、サローネの社長が再びクラウディオ・ルーティさんに変わったこと、イタリアを代表する家具ブランドであるカッシーナがサローネに出ず、新製品発表と70周年の展示を市内で行うことがあり「こういった要素が何らかの変化につながるのだろうか?」という思いはありました。

サローネ主催会社の社長に再就任したクラウディオ・ルーティさん、吉岡徳仁さんやnendoとも共同するイタリアの家具メーカーKartellの社長でもある

サローネの社長に再就任したクラウディオ・ルーティさん、吉岡徳仁さんやnendoとも共同するイタリアの家具メーカーKartellの社長でもある


初日に訪問したサローネ会場の印象はというと、カッシーナ不在は確かに寂しくはあるのですが、例年通りだったと思います。そして「請われたので戻ってきたんだよ」というルーティ社長とのインタビューは、圧倒的に力強いサローネ、ミラノが世界のデザインの中心であることを印象づけるもので、これはズナイデロ前社長からの既定路線。たとえば、今年は市内にIKEAが出展していたのですが、そのようなサローネに当ててくる様々なイベントを許容しながら、軸としてのサローネは確たる存在であり続けている、そんな自負を改めて感じました。

巨大な見本市なので、切り取り方によって様々に見えるサローネですが、この記事では日本の家具メーカー4社を、昨年までと比較しながら紹介しましょう。

飛騨産業

飛騨産業のブース

飛騨産業のブース


昨年までは日本家具産業振興会の合同ブースでの参加。5年目のサローネは独立ブースとなり、ソロとして再デビューといったところです。ブースには、大きな曲げ木が強い印象を与える柳宗理の椅子、エンツォ・マーリさんやアトリエ・オイ、セバスチャン・コンランさんによる椅子、杉圧縮柾目材を使った川上元美さんの「KISARAGI」などが並びました。木工技術とデザインを掛け合わせた数多くのバリエーションで、木の椅子の多様性を訴求しています。見せ方は先日オープンした東京ミッドタウンの直営店「HIDA」と近い印象です。飛騨の陶器である渋草焼を用いたコーディネートや、日本写真印刷の室内用情報端末「miu」とのコラボレーションも見ることができました。

飛騨産業
https://kitutuki.co.jp/

KARIMOKU NEW STANDARD

KARIMOKU NEW STANDARDのブース photo: Takumi Ota

KARIMOKU NEW STANDARDのブース photo: Takumi Ota


ミラノデザインウィークは8年目となる、カリモク家具によるKARIMOKU NEW STANDARDですがサローネでの展示は初めて。これまでは市内で、実際の生活や仕事の空気感がある場所を会場にしてきました。今回、展示の方法論をどのように変えてくるか注目していました。現れたブースは壁の断面を見せて演劇の舞台のような雰囲気。いくつかのシーンを同時並行で見る、覗き見る映画のような面白さも感じました。新アイテムはソファとダイニングチェア、ハイスツール。国産材の小径木を使った環境への配慮もブランドの特徴の一つです。

KARIMOKU NEW STANDARD
http://www.karimoku-newstandard.jp/

Ritzwell

右手前が『ARCHITONIC』に表彰されたRitzwellの新製品、Photo:  Alberto Strada

右手前が『ARCHITONIC』に表彰されたRitzwellの新製品、Photo: Alberto Strada


9年目のサローネ。昨年からアルフレックス、フレックスフォルムやカールハンセンという著名ブランドが並ぶホール5に移りました。今年はそのホール5をキープするだけでなく、さらに人通りが多い場所に移動しました。面積も1.5倍とのこと。ブースの雰囲気は、昨年までは黒と白の明快なコントラストだったのですが、今年はウォールナットが映える温かみのある色調を中心に構成。新製品の安楽椅子は、見本市巡りの友として関係者が重宝しているフリーペーパー『ARCHITONIC』のお眼鏡に叶い表彰されたようで、その楯が飾ってありました。

Ritzwell
http://www.ritzwell.com/

MARUNI COLLECTION 2017 JASPER MORRISON, NAOTO FUKASAWA

MARUNI COLLECTION 2017のブース

MARUNI COLLECTION 2017のブース


こちらも9年目のサローネとなるマルニ木工によるMARUNI COLLECTION。昨年、世界の名だたるスターブランドが揃うホール16での展開となり、さらに大きく注目を集めました。そして今年、ホール16をキープし場所もより中央へと移動し二面開口に。訪問時は、コラボするデザイナーのジャスパー・モリソンさんや深澤直人さんがいらしたこともあり、とりわけ大勢の来場者を集めていました。ブースの考え方は昨年と同じ。天井をあえて低くして、視線を低く家具へ誘導し椅子の背中を見せています。アイテム数は決して多い訳ではありませんが、昨年よりも世界観が広がったように感じました。追加された黒いバージョンが空間を引き締め、一方でオレンジのファブリックと無垢の木、そしてクロムのスチールロッドというスタッキング椅子が活動的な雰囲気をもたらしたのが理由でしょうか。

MARUNI COLLECTION 2017 JASPER MORRISON, NAOTO FUKASAWA
http://www.maruni.com/

今年の4社を大きく振り返ると、サローネでの実質的なデビューとも言える飛騨産業と、勝負の場所を変えたKARIMOKU NEW STANDARD、熟成のRitzwellとマルニ木工というところ。広大なサローネ会場において日本ブランドとして奮闘しているのは、これら4社のみです。しかも国内に木工の工場を持ち技術を継承しものづくりを行なっている飛騨産業、KARIMOKU NEW STANDARD、マルニ木工という存在は、世界の中で見てもとても珍しい存在です。

それぞれ東京をはじめ全国にショールームやショップがあります。まだ接したことがないならば、ぜひ実物をご覧になって触って座ってみてはいかがでしょうか。日本のものづくり、日本の美意識、それらを海外にどのように伝えているのか、そんな気づきも得られるのではないかと思います。

山崎 泰(株式会社JDN 取締役 ブランドディレクター)

山崎 泰 Yasushi Yamazaki

株式会社JDN 取締役/ブランドディレクター

1969年、北海道室蘭生まれ、札幌育ち。北海道大学卒業、心理学専攻。デザインが好きで、空間デザイン最大手の丹青社に入社。1997年に社内ベンチャーとして「JDN」を始める。ゼロから顧客開発し事業成立の中心的な役割を担う。2011年より株式会社JDNの取締役。現在はブランドディレクターとして、コンテストのコンサルティング、取材・執筆、講演なども行う。JAPAN BRAND FESTIVALボードメンバー。趣味はサックス演奏。