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デザインのチカラ : デザインの現場に取材し、ディレクションの考え方、製品デザイン等に迫る


INTERVIEW 08


INTERVIEW 08:ブリヂストンサイクル 技術管理部 デザイン課長 中森和崇氏



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ARTICLE 2

イメージを具現化させる




中森氏  「『HYDEE.B』のイメージは、マウンテンバイクやクルーザーバイクです。雑誌の編集長が熱心で、我々のデザインを見て話し合いながら次第にスタイルが明確になりました。絞り込まれたのが“ハンサムバイク”と呼ばれる、お父さんが乗っても違和感のないクルーザータイプです。読者層がマウンテンバイクを経験した世代なので、太いタイヤにも抵抗がないんですね」

 イメージを具現化させるために、それまでの電動自転車よりもデザイナーの役割が重要となった。大きく見えるが扱いやすいタイヤパターンの選定や、丸いパイプを使いシンプルでスポーティーな形を追求するといった全体の印象づくりに始まり、パーツの細部に至るまでデザインの目を配る必要があった。

 特にチャイルドシートについては、海外製品の流行も無視できなかった。ブリヂストンサイクル推奨のチャイルドシートはあるが、海外製を選ぶユーザーが多かったのも事実だという。そこには、“子どもを乗せてます”と強調する雰囲気を避けたいというユーザーの意識があった。

「日本の基準を満たそうとすると、チャイルドシートにはヘッドガード部分が必要で、高さが出てしまいます。海外製はコンパクトさが人気だったので、子どもの体格に対応しつつ、できるだけ小さく見えるようにデザインしました。こうした工夫の結果、従来のチャイルドシートに比べて軽くすることができて、全体重量の軽量化にも貢献することができました。
また、ハンドルやガード部分、フレーム、荷台にも新規デザインを採用しています。チャイルドシートを取り外した状態でも格好良く見えるように、荷台の形状をタイヤや泥よけガードのカーブに沿わせるなど、徹底してまとめてあります」

 機構や機能がそのまま外観となる自転車本体に対し、体にそった有機的な形のチャイルドシートのデザインには、椅子の考え方が必要だ。チャイルドシート本体は樹脂の一体成型なので、金型設計にも関わるなど、プロダクトデザイナーとして幅広い職能を発揮しなくてはならない。

 また、強い希望だったのが、チャイルドシートのクッションだ。迷彩柄が安っぽくならないように、生地を探すところから着手し、クッション構造も変更。防水や経年変化へ対応するために生地メーカーの協力も仰いだ。


チャイルドシート

「最終的には社内での評価も得られました。チャイルドシートは今後他ブランドにも展開していこうと考えています。一車種のためのチャイルドシート開発は、通常では考えられませんが、コラボということと、編集部の熱意があってこそ成功したプロジェクトです」

ARTICLE 2

絶妙なバランスを模索する




「HYDEE.B(赤)」
「カラーバリエーションについても、何度も組み立てながら検討しました。当初我々は、ハンドルまで全部黒くすることによって、全体が締まって見えるのではと考えました。しかし実際に組み立ててみると、泥よけまで黒いものはアーミー感が強調されすぎてしまったのです。そこで、ツヤの質感で差をつけました。また、赤にはシルバー系を合わせるなど、バリエーションごとに組み合わせも変化させています。ランプだけ見ても赤は黒と違い、メッキ仕様を採用しています」

 ライトは既成部品を流用したが、ポイントになる顔のような存在にするために、前フォークに直接取り付けずステイを長くして前に出した。ストレートタイプのフレームは、その細さを保ちながら肉厚な素材によって強度を満たし、できるだけまっすぐに見えながら跨ぎやすいバランスを追求した。ハンドルは運転しやすさを考慮して、クルーザータイプに落ち着いた。大きめのハンドルをしっかり支えるために、太いステム部分が新しく製造された。 サドルは大きいほうが安定するが、あまり幅広すぎてもスポーティー感が損なわれるため、バランスを重視した選択となっている。


左)サドル、中)ステム、右)ライト

「組み立てて検討する時にも、雑誌編集部の方々から『ここをこうしたら良いのでは』と具体的に指示される訳ではありません。『もっと格好良く』、『もっとおしゃれに』などの抽象的な要望を、デザイナーとして形に反映させる能力が不可欠だと痛感しました」




プロフィール

ブリヂストンサイクル株式会社 技術管理部 デザイン課長
中森 和崇 Nakamori Kazutaka

1993年 千葉大学 工学部 工業意匠学科卒業
同年 ブリヂストンサイクル株式会社入社。
1年間設計課に所属し、自転車についての規格や構造を学ぶ。以降デザイン課に所属。
軽快車/スポーツ車/幼児子ども車/子乗せ車/折畳み車/電動アシスト車、等
自転車製品及び関連商品全般のデザイン開発業務に携わる。
2011年より現職、デザインマネージメントを担当。

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