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デザインのチカラ : デザインの現場に取材し、ディレクションの考え方、製品デザイン等に迫る


INTERVIEW 08


INTERVIEW 08:株式会社キングジム 開発本部 商品企画部 デザイン課長 戸田直利氏



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ARTICLE 2

手本がないプロダクト、「ポメラ」の成功


 「ポメラ」の開発にあたり重視されたのが「現代のワープロ」という新しい概念。
 キングジムのデジタル文具を代表する「テプラ」とは全く異なる新規商品であり、既存には似たものがない。そうした状況で「ポメラ」の市場投入を考えたとき、形や大きさなどを理由に、売り場では電子辞書と同じように扱われるのではないか、との懸念があった。



戸田氏
 「ビジネス周辺機器や電子辞書を比較対象にあげながら『これになってはいけない』と思いました。電子辞書の横に並んでしまうならば、なおのこと機能的な先入観を与えてはならない。そこが最も心を砕いた点ですね。
 さらに、他のデジタル家電とは違う趣を目指しました。我々はあくまでも『ポメラ』を文具という思想でデザインしています」

 デザイン開発は、大まかな外観と機構、液晶の大きさなど技術的な要素は概ね固まっていたところからスタートした。工夫を重ねたのは「新しいデジタル文具」だと認識してもらうための細やかな配慮だ。

 「新しいデジタル文具としてアイコン化したいという考えから、わざとキーボードをはみ出させることを考えました。もちろん、キーボードの角のような華奢な部分は落下などで壊れやすいのですが、開発側の努力でクリアしています。
 カラーリングに関しても、決してメタリックは使うまい、と決めました。家電製品はメタリックカラー中心の展開なので、メタリックにした途端に、文具というカテゴリーを逸脱してしまいますから。
 天板の色を黒と白、そこにアイデンティティとして加えたのがオレンジ色です。高級輸入文具を意識していた背景もありますが、黒と合わせたときに馴染む、少しダルなオレンジを設定しました」




ARTICLE 2

文具がもつ情緒をデザインで特徴づける


 「ポメラ」には、塗装の仕上げ方や素材選びなどでも、デジタル文具の新しい概念を体現するデザインが感じられる。



 「たとえば、天板以外はラバー塗装してあることも特徴のひとつです。キーボードは打ち心地、ボディは触り心地。それは、文具ならではの発想でしょう。同様に、天板はUV塗装で高級万年筆のようなつややかな仕上がりを求めました。質感にもコントラストをもたせたことで、情緒的な面で目や手触りに訴える存在になっています」

 また、強度を上げるために金具を多用しているが、金属の質感が目立つことで家電に近づいてしまうと考え、外観からは消し去った。

 「もし私が典型的なプロダクトデザイナーならばきっと、天板にはポメラのロゴをエンブレムで入れたくなったはずですが(笑)、艶やかな表情だけを見せるために、あえて天板からエンブレムを排除し、天板からはみ出した狭いスペースにロゴを表記しました。ファイルではよく使う手法なんです。私自身、背見出しの細い部分にどうやってロゴを入れるか、というような仕事を経てきた経験があったからこそ、文具らしさを表現できたのだと思います。逆に、キーボードの配列などはデザインの格好良さではなく、優れた文具のように、使いやすさを優先させています。必要以上のハイスペック感を求めるのではなく、文具らしい佇まいを残しておきたいと考えてきました」



 「ポメラ」以降、「マメモ」「ショットノート」など、書くというベーシックな行為に関連づけた商品を展開してきた。筆記具やノートをTPOに応じて選びとっていくように、デジタル文具の可能性はさらに広がりをみせている。

キングジム
http://www.kingjim.co.jp/




プロフィール

株式会社キングジム 開発本部 商品企画部 デザイン課長
戸田直利 TODA Naotoshi

1993年 拓殖大学 工学部 工業デザイン学科卒業
1993年 株式会社キングジム 入社
(以下キングジム内経歴)
・商品開発部 デザイン管理グループ配属
 VI変更作業をしながらキングジムのデザインアイデンティティーを学ぶ
・開発本部 一般文具開発部 デザイン設計課
 ステーショナリー製品全般のデザイン開発に携わる
・開発本部 商品企画部 デザイン課長
 ステーショナリー製品だけではなく、「ポメラ」を筆頭とするデジタル文具デザイン開発に携わる
 又、製品デザインだけではなく製品プロモーションにも携わり一気通貫したディレクションを行う

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