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デザインのチカラ : デザインの現場に取材し、ディレクションの考え方、製品デザイン等に迫る


INTERVIEW 08


INTERVIEW 08:株式会社キングジム 開発本部 商品企画部 デザイン課長 戸田直利氏



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ARTICLE 2

キングジムのデザイン・アイデンティティ


 入社後はまず、大幅に変更されたばかりのVIを切り替える仕事に携わっていた戸田氏。
当時は、デザイン系の組織がまだ確立されておらず、付き合いの深かった外部デザイナーと恊働して、製品に表示するロゴマークの変更を担当していた。



戸田氏
 「『デザインをやらせてくれ』と言っても2〜3年はやらせてもらえませんでした。自分はデザイナーなのかな、と疑問に思うこともありましたね。
 当時の上司が言うには、社内にデザイン組織がないのに新米のデザイナーがいると“ただの便利屋さん”になってしまう、と。『VIを差し換えながらキングジムのマザーデザインを学べ』と教えられたのは今でも記憶に残っています。アイデンティティを理解し、デザインの標準化を身につけてから発展していきなさい、という意味なんですね。
 社内デザイナーは小間使いではなく、VIを守りつつ、デザインのアイデンティティをふまえながら商品を発展させるんだという視点を身につけることができたと思っています」

 その後、ファイルのデザイン開発担当としてキングジムの顔の一つである「キングファイル」等をデザインしてきた。

 「ポメラ」以前の開発体制では、デジタル文具については外部デザイナーに依頼することが多かったが、「ポメラ」以降はインハウスデザイナーの関与が増えた。2007年には、開発体制が統合され、「ピットレック」「マメモ」「ブギーボード」と、新体勢の下で次々とヒット商品が生まれている。


ARTICLE 2

アナログ的な情緒をデジタルに




 「ファイル関連のデザイン開発で培ったノウハウをデジタル文具に注入していこうと思いました。それが良かったのではないでしょうか。
 たとえば、ファイルを持ったときのめくりやすさや、綴じ具の扱いやすさ、カラーリングの識別のしやすさ、といった経験を活かすことで、デジタル文具にもアナログ的な情緒を盛り込むことができたと思います。
 開発部門の人たちも最初は違和感を覚えたでしょうね。ひとつずつ進めながら、信頼関係を築いてきました」

 質感や色の表情を伝えるためには、革や布地などの実物を見せるなど、アプローチは一般的なプロダクトデザインと同様だ。


 「CADについては、設計を理解している協力会社の設計者に依託することが多いので、三面図を描いて直接やりとりして意図を伝えていきました。思想も含めて、きちんと伝えれば技術の人も理解してくれると思います。
 デザイナーが3DCADでよくわからない完成度の(笑)図面を出すよりも、三面図で『ここだけは守ってほしい』というポイントを主張しながらやりとりする方が、良いものに仕上がるのではないでしょうか」

「デザイナーとしては、画期的な表現を求めたい気持ちもありますが、あくまでも単機能を掘り下げていくのが、キングジムらしさだと考えています」


ARTICLE 2

文具という大きなカテゴリーをデザインする


 戸田氏は、20代の女性を主ターゲットにした総合生活雑貨ブランド「Toffyシリーズ」を展開するキングジム関連会社を兼務し、同シリーズの全開発も管理している。

 「ファイル・デジタル文具・雑貨の3分野のデザインを統括する立場です。
 デジタル文具は個人を対象とした商品なので、店頭にもデザイナーが気を配るべきとの方針から、POP類も管理の対象になりました。商品デザインの段階から、営業と共にプロモーション展開を考えられるので、非常に良い体制です。
 キングジムとして売りたい商品を主張する店頭展開に、弊社の営業経由でインプットされる各店舗のバイヤーが目指す売り場づくり構想を、ダイレクトに反映できます。家電量販店での見せ方や、文具売場でのディスプレイの仕方など、商品開発しながら、頭の中をシフトチェンジして考えるのは楽しいし、やりがいを感じます」



 アナログであれデジタルであれ、キングジムが目指す文具の在り方を商品という形にまとめあげるのが、デザイナーの使命だ。かつて事務用品としてカテゴライズされてきた文具が、個人の志向によって選ばれるようになった今、デザインの重要性も高まっている。


キングジム
http://www.kingjim.co.jp/


プロフィール

株式会社キングジム 開発本部 商品企画部 デザイン課長
戸田直利 TODA Naotoshi

1993年 拓殖大学 工学部 工業デザイン学科卒業
1993年 株式会社キングジム 入社
(以下キングジム内経歴)
・商品開発部 デザイン管理グループ配属
 VI変更作業をしながらキングジムのデザインアイデンティティーを学ぶ
・開発本部 一般文具開発部 デザイン設計課
 ステーショナリー製品全般のデザイン開発に携わる
・開発本部 商品企画部 デザイン課長
 ステーショナリー製品だけではなく、「ポメラ」を筆頭とするデジタル文具デザイン開発に携わる
 又、製品デザインだけではなく製品プロモーションにも携わり一気通貫したディレクションを行う

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