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デザインのチカラ : デザインの現場に取材し、ディレクションの考え方、製品デザイン等に迫る


INTERVIEW 07


INTERVIEW 07:LG Electronics Japan Lab.株式会社 日本デザイン研究所 森憲朗氏


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ARTICLE 3

日本でのブランディング活動、プロ意識を鍛える最良の機会がデザインコンペ


LG Electronics 日本デザイン研究所への移籍時から、ブランチオフィスとしての業務の全てを担ってきた森憲朗氏。日本人デザイナーとして初めてLGに入社して以来、製品開発に携わるとともに、LGの認知度を高めるために様々な活動を展開させてきた。
この9月下旬に最終審査を迎えた「LG Mobile Design Competition」もその活動のひとつだ。



森氏

森氏(以降全て) 「コンペに応募してくる若い人たちが世に出る足がかりになり、場合によってはLGのファンになってくれれば、という思いがあります。著名なデザイナーにもブログやツイッターを介して情報を拡散してもらえるチャンスも増えているので、自然と知られてくるようになりました。
 また、大学では授業の一環としてコンペに取り組んでくださる先生方もいらっしゃいますし、こちらが出向いて講演する機会もあります。会場となっている大学以外からも参加者が多く、近年では、応募数にも反映されていますね。
 LGのデザイナーには即戦力を求めるので、いまのところ新卒での採用は行っていませんが、このコンペの結果をポートフォリオに入れてその実力も含め他メーカーに入社するという学生もいました。こちらとしては、未来のライバルを増やすことになりかねませんが(笑)、日本のデザイナーの層が厚くなるのは喜ばしいことです。こうしたフィードバックを受けて、継続するやりがいは実感しています」

2008年の創設時は、学生限定のコンペであった。しかし、良いアイデアがあれば商品に盛り込みたいという強い姿勢から、一般へと募集枠を広げている。

 「携帯電話は技術的な問題を伴うので、提案のハードルは高くなります。また、商品化は常に意識していますが、ビジネス的な視点でも吟味する必要がありますので、こちらのハードルも数が多い。
 折しも、昨年の中頃からスマートフォン市場が急激に膨らんできたこともあり、今年はコンペのアイテムを『スマートフォンの周辺機器』としました。提案のハードルは下がっていると思いますよ。周辺機器には限られた機能が集約されていることが多いし、そのために形状も小さく収まるので、デザインで実現できることも多いでしょう」

ARTICLE 3

中小企業が持つ技術を、異業種に応用するためにこそデザインを


 「今年は、プロダクトデザイナーだけでなく、アパレル系や中小企業で機械技術に携わっている方々などの応募も見受けられます。我々としても応募の門戸を広げるために、地方行政にも声をかけ、地域単位で中小企業の人たちが集まる場で告知して頂ける機会も得ています。ウェブなどから情報を発信する一方で、私自身は『デザイン営業』と名乗りたいくらいですが(笑)、会社案内のパンフレットを持って訪ね歩き、コンペの広報にも力をいれています」

東日本大震災の影響は少なからず影を落とし、LGに限らずあらゆるコンペの応募者が減っているという。しかし一方では、震災を体験したからこそスマートフォンの可能性や周辺機器を含めて今後の必要性をデザインでの解決方法を目指す応募者もいる。

 「応募者には、20代後半〜30代前半の男性が多数を占めます。いまも学生の応募が半数近いのですが、一般の応募数も増えて欲しいと考えています。特に、中小企業の方々などには、そのメーカーだけがもっている技術を異業種に応用するために活用して頂きたい」


2010年のモックアップと共に

ARTICLE 1

コンペにはクライアントに向かい合う気持ちで望んで欲しい


 審査は、LGが掲げるデザインコンセプトでもある4つのキーワード(Stand out/Sophisticated/Pleasurable/Inspiring lifestyle)が基軸となる。学生や若手デザイナーには、クライアントと向かい合うような気持ちをもってコンペに挑んでほしい、と森氏は語る。



 「コンペを開催する我々は、参加するデザイナーから見ると『クライアント』という立場でもあります。コンペの応募要項にはクライアントの考えが反映されています。クライアントの意図を汲み取るところから仕事は始まっている、と意識してほしいですね。そうするとコンペを、デザイナーとして訓練を積む重要な機会の一つとして捉えられると思います」

 昨年は、残念ながらグランプリ受賞該当作品なし。
しかし、授賞式では審査員の奥山清行氏が熱く講評を述べ、その後の懇談会では受賞者だけでなく参加者も、審査員と直接デザインについて意見を交わせる貴重なチャンスに恵まれた。こうした刺激を経て成長できる面も大きいだろう。
毎年、最終審査へ進むことになる10作品程度は、LGがモックアップを制作する。


 「モックアップ制作でも、作り手の意図をなるべく反映するために、直接やり取りを重ねる場合もあります。それもまた、プロ意識を突きつけるような厳しい場面になるかもしれません。しかし、真剣に取り組んで欲しいという、我々の気持ちの表れでもあるのです。
 最終審査に進む応募者の中には、色見本や自身で制作した模型をお送りいただく方も少なくありませんね。そういった場面でも、デザイナーとクライアントの関係性を理解して臨む応募者は、モックアップの完成度にも差が出るでしょう。

 世の中を反映した結果なのか、最近の作品には保守的、無難なものが多い印象があります。もちろん『商品化』と言われると、現実的なまとまりは必要なのですが、現実的にまとめるのは我々メーカーが得意なので(笑)、参加する方にはメーカーが現実的にまとめたくなるような魅力溢れる提案を求めたいですね。

 全世界のデザインにおいて、日本の重要度はこれからも増していくと感じています。特にプロダクトの分野はUD(ユニバーサルデザイン)やUX(ユーザーエクスペリエンス)などと細分化していますが、インハウスデザイナーにはそういった専門性を持った優れたデザイナーが大勢います。日本デザイン研究所としては、そういった人材を生かして、日本の家電メーカーさんの開発部門とは異なる発想からの、商品開発を目指していきたいと考えています。

LG Mobile Design Competitionには、そんな我々を刺激し続けてくれるような提案を求めたいですね」

□関連リンク
LG Electronics Japan
LG Mobile Design Competition
産学共同特集/LG Electronics Japan
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