第305回 井手健一郎 (rhythmdesign Ltd./建築家)

[高橋美礼の推薦文]

人が暮らす土地や地域それぞれの文化をふまえ、対話をするように、井手健一郎さんのデザイン設計は息づいていく。

福岡で10年間主催した「DESIGNING?|デザイニング展」では街を行き交う人々にも問いかけ、その一方で、専門性だけに固執しない手法をさまざまなプロジェクトのなかで共有しながら実践し、新しい空間と場のありかたを提示してきた。今年、リズムデザインの活動20周年を節目におこなわれた展覧会「With Others」はまさに、関わってきたすべての他者への深い眼差しを感じさせるものだった。

多角的な視野と鋭い思考をもちながら、寛容な存在へと結実する。井手さんの“対話力”から生みだされるそうした事象を、さらに目撃していきたい。

高橋美礼(デザインジャーナリスト)

ミラノ・ドムスアカデミーにてマスターデザインコース修了後、フリーランスとして多領域のデザインにかかわりながら国内外のデザインを考察し、書籍や雑誌、ウェブ媒体での執筆、編集をおこなう。多摩美術大学芸術学科非常勤講師、法政大学デザイン工学部兼任講師。

https://www.instagram.com/mireissue/

編集部からの推薦文
福岡を拠点に、私邸から公共建築、伝統的建造物のリノベーションなどさまざまなプロジェクトに積極的に取り組む井手健一郎さん。

最近の事例「みとろの丘」は、既存の風景を最大限に活かしつつも、どこか新しいコミュニケーションや体験づくりを柔らかく促してくれるような施設になっている。そんな施設自体のコンセプトは「つくる、つながる、みんなの居場所」。対話を大事にするリズムデザインが、新しい居場所を増やしていくことを見守っていきたい。
井手健一郎(rhythmdesign Ltd./建築家)

井手健一郎(rhythmdesign Ltd./建築家)

1978年福岡市生まれ。2000年福岡大学工学部建築学科卒業後、渡欧。帰国後、2004年リズムデザイン設立(2016年改組、法人化)。私邸から公共建築、伝統的建造物のリノベーション、10年間継続したデザインイベントまで多岐にわたり手がける。デザインとは寛容な眼差しを持った働きだと捉え、常に他者と対話し、生み出すべき状況をあぶり出していく。その他者とは発注者や利用者であり、すべての生活者であり、歴史的文脈であり、地域文化、風習、地形、場の痕跡でもある。そのような対話から「あるものを活かして、ないものを最小限でつくる」姿勢は、常に一貫している。

https://rhythmdesign.org/

2024/11/27 20:00