柏崎桜さんによる、“愛しさ”を感じる3つの「買い物」

柏崎桜さんによる、“愛しさ”を感じる3つの「買い物」
こんなにモノが溢れる時代に、それでも私たちが「モノを買う」のはなぜだろう?物欲…?はたまた必要に駆られて…?「買う」という行為から、その人らしさや考え方が見えてくるような気がします。

本企画はいわゆる「私の定番アイテム」紹介ではありません。さまざまな職種の方に「さいきん、買ったもの」をうかがい、改めて「買う」ことについて考える…そんな大げさな話ではなく、審美眼のある方々に「買う」にまつわるお話をうかがう、ちょっと軽めの読み物です。

今回は、JDN編集部のコラムのタイトルデザインを手がけてもらった、グラフィックデザイナーの柏崎桜さんにお話を聞きました。心から“良い”と思ったもの買うようにしているという柏崎さんが紹介してくれた、3つのアイテムとは?

ハーブティーと茶さじ

少し前に「Roundabout」という雑貨屋さんで購入した、ハーブティーの茶葉と茶さじです。私の仕事のお供はもっぱらお茶ですが、軽い飲み物がほしいときにはハーブティーを選んでいます。

これはミントとネトルのお茶で、リトアニアでつくられている「My Cup of Tea」というメーカーのものです。ミントベースだけどスースーしすぎず、おだやかな味わいが気に入っています。茶葉づくりは収穫からブレンドまですべて手作業で行われていて、ティーバッグは糸と布で包まれた佇まいが素朴でとても美しいので、ぜひ見てみてほしいです。

茶さじは牛の角でできているもので、黒・白・茶色の割合や混ざり方、透明感などが一つひとつ違っていて、かなり迷って選びました。茶葉もそうですが、人の手や思考の跡が感じられるものや、仕上がりが均質でないものに惹かれるんだと思います。

仕事でも機会があったら、ぜひお茶のパッケージやお店のロゴやディレクションなどをやってみたいですね。

プラスチックの木彫りの熊と綿

これは、残念ながら少し前に閉店してしまった「antique?(アンティーク・クエスチョン)」という古道具のお店で見つけた、木彫りの熊の形をしたプラスチックの置物と、医療用の綿です。

プラスチック製の「木彫りの熊」と、医療用の綿

木彫りの熊って木を使って手彫りされているのが特徴なのに、それを量産できるようにプラスチックでつくっちゃうんだっていうところが面白くて…。真ん中に溶接したような跡があって少し顔がずれているのもいいですね。茶目っ気があって憎めない感じです。

どういう経緯でこんなに小さい置物(熊の体長は約30mm)をつくったのかとか、素人から見ると目的や用途がわからないんですが、古道具屋さんで売っているものってそういう謎を楽しめるものが多いなと思います。

熊が乗っているのは、一緒に買った医療用の綿です。最近のものは小さくて使いやすいかたちに統一されているけど、これはランダムなサイズのものをぐるぐるっと一束にしてまとめているだけなんですよね。自宅では、熊の置物を綿の上に乗せて飾っています。

“気の抜けたデザイン”の梱包材

買い物と言っていいのか微妙だけど、ネットで買い物をした際の梱包材が気になることが多いです。これは、両面テープを買ったあとに結局必要がなくなってしまい、そのまま開けていないものなんですが、形が気に入ってそのまま取っておいてます。ダンボールのフチのウェーブや、文字の詰まり方、ちょっとレトロで妙に上手なんだけど何が言いたいのかいまいちよくわからないイラストが可愛いです。

両面テープ1個で仰々しい包装なのは考えものですが、好きなんですよね。宅配便に貼られるシールにもたまにぐっとくるデザインがあって、前にアイスクリームを届けてもらったときのシールはスマホに貼っています(笑)。

アイスクリーム専用シール

柏崎さんがスマホに貼っているというアイスクリームのシール

青い色面が「アイスクリーム」の「リー」にかかってるけど、ここを強調したかったわけではないよね?とか、微妙に線の太さが均等じゃない所があるけどもしかして手書きなのかな?とか、人間味があって見飽きないですね。

自分はデザインをする時に肩に力が入ってしまいがちなので、こういう良い意味で気の抜けたデザインには憧れます。

ほかにもいろいろ集めていて、オクラが入っていたネットとかピンク色のプチプチとか。包装材という見方を取り払って、その物自体の形や色や質感に着目すると、魅力を感じるものが多いです。

柏崎さんが思わず取っておいてしまうという包装材シリーズ

海外の荷物も伝票シールのフォーマットがかっこよかったり。たまに本などを買いますが、「これでよく届いたな…!」みたいな梱包で来ますよね(苦笑)。むき出しで袋に入ってるから、ベコべコになってたりするんですけど、もはや愛嬌を感じます。

買い物について

ものを買うのは好きなほうだと思います。心からいいと思わないものにお金を出したくないから、実用的な意味で困る状況があったとしても、デザインや機能(そして予算)などトータルで気に入るものに出会えなかったら買うことができず、結果的に生活が不便なまま…みたいなことはけっこうあります。

旅行先ではスーパーマーケットに行くのが好きですね。国内でも知らない土地のスーパーに行くだけですごいテンション上がります(笑)。その土地ならではの商品を見つけたり、お店ごとの考え方やお客さんの傾向を商品から読み取ったりするのも楽しいですし、たくさんある商品の中から自分が何を買おうかと想像するとワクワクします。

柏崎桜

柏崎桜

グラフィックデザイナー。1990年栃木県出身。東京近郊在住。尾道市立大学 美術学科を中退、金沢美術工芸大学 視覚デザイン専攻を卒業後、広告制作会社勤務を経て、2019年よりフリーランス。

https://s-kashiwazaki.com/