2つの展覧会

「素材と対話するアートとデザイン」にて、エマニュエル・ムホーさんの作品「COLOR OF TIME」 「素材と対話するアートとデザイン」にて、エマニュエル・ムホーさんの作品「COLOR OF TIME」

富山県美術館開館記念展Part2「素材と対話するアートとデザイン Art and Design, dialogue with materials」と、国際北陸工芸サミット「ワールド工芸100選」展は、11月16日に初日を迎えることができた。

「ワールド工芸100選」展 会場風景

「ワールド工芸100選」展 会場風景

2つの展覧会を担当し、1年前からキュレーションやそのほかの付帯事項やイベントなど、細やかな仕事を日々重ねてきた。この重圧は重く、擦り切れそうなくらいタイトな日々だった。

「素材と対話するアートとデザイン」インスタレーションコーナー

「素材と対話するアートとデザイン」インスタレーションコーナー

デザインも工芸も向き合うのは「素材」である。一見異なる展覧会のように映るが、素材を軸に観賞でき、それぞれが深いので見所は満載である。たとえば、新素材や異素材とのコンビネーション、3Dプリンターなどの加工技術、資源環境、デザイン・工芸の技の真髄などなど。幸いにして、デザイン、工芸界の有識者たちもこれまで数多く来館いただき、SNSや直接お褒めの言葉をたくさんいただき、安堵している。

首都圏や地方の美術館でもテーマやコンセプトが大切で、その切り方と切れ味が鋭いものでなくてはならない。また、美術館の意味合いが大きく変化していることも認識しなくてはならない。これまでの観賞型美術館から対話(参加)型美術館へ大きく潮流が変化している。学芸員には大変な時代が到来しているといえる。

吉泉聡さんと秋山かおりさんをゲストに迎え、日本橋とやま館でミュージアムナイトも開催

吉泉聡さんと秋山かおりさんをゲストに迎え、日本橋とやま館でミュージアムナイトも開催

国際北陸工芸サミットでは、諸外国から多くの有識者に来県いただいた。それぞれが同時代を生きる仲間たちなので、審査は大変だったが達成感は共有できた。北陸の地方都市で国際的にも意味ある議論が持てたことが嬉しい。そして、何より地方創生の一つの指針を示せたのではないかと思う。

富山県美術館オノマトペの屋上で各国の選考委員、コーディネーターと

富山県美術館オノマトペの屋上で各国の選考委員、コーディネーターと

ウイング・ウイング高岡にて開催された、「国際北陸工芸サミット」シンポジウム

ウイング・ウイング高岡にて開催された、「国際北陸工芸サミット」シンポジウム

展覧会の会期は翌年の1月8日まで、一人でも多くの方に富山に足を運んでいただきたい。私は次のテーマに向けて、さらなる新しい機会を創出するために邁進したい。

富山県美術館
http://tad-toyama.jp

写真:大木大輔

デザインディレクター桐山登士樹

桐山登士樹(デザインディレクター)

株式会社TRUNKディレクター、富山県総合デザインセンター所長、富山県美術館副館長。

30年に渡ってデザインの可能性を探り、さまざまな基盤や領域の活動を実践。特に1993年から今日まで「富山県総合デザインセンター」で地域のデザイン振興に携わり、商品化を前提とした「とやまデザインコンペティション」を企画・実施。地域の資産を生かした「幸のこわけ」の企画・商品化で成果を創出。

これまで、YCSデザインライブラリーや富山県総合デザインセンターなどのインフラ整備に参画。展覧会では「ニューヨーク近代美術館巡回 現代デザインに見る素材の変容(1996)」「イタリアデザインの巨匠/アキッレ・カスティリオーニ展(1988)」「日蘭交流 400周年記念 DROOG & DUTCH DESIGN展(2000)」「イタリアと日本 生活のデザイン展(2001)」「80歳現役デザイナー長大作展(2001)」他多数。ミラノデザインウィークでは2005年よりレクサス、キヤノン(エリータデザインアワード2011グランプリ受賞)、アイシン精機(Milano Design Award 2016 Best Engagement by IED受賞)、セイコーウオッチ「THE FLOW OF TIME」を総合プロデュース(2018)。メゾン・エ・オブシェでは、JETRO広報ブース「Japan Style」、伝産協会の海外販路プロデューサーを担う。「2015年ミラノ国際博覧会」日本館広報・行催事プロデューサー(金賞受賞)。共書「ニッポンのデザイナー100人」(朝日新聞社)。経済産業省「世界が驚く日本2016」研究会座長ほか。

http://www.trunk-design.jp/