クリエイティブのタテ軸ヨコ軸

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vol.03 山根Yuriko茂樹(イラストレーター・クリエイティブディレクター)

vol.03 山根Yuriko茂樹(イラストレーター・クリエイティブディレクター)

いつまでも、輝くような仕事に呼ばれる存在でありたい

嵐の5人と夏モチーフを融合させたJAL「夏休み先得」、女優上野樹里さんと共演する子天狗を作った京王グループ「樹の里高尾山へ」キャンペーンなど話題の広告を手がける一方、今年オープンした「東急プラザ表参道原宿」ではコミュニケーションロゴを開発したりと、活躍の場を広げるイラストレーターズユニット山根Yuriko茂樹さん。自らの信念を手にした瞬間から現在までの経緯、そして活動の上で常に心に留め置く点などについて、じっくりお聞きしました。

ユニット誕生と「枠を決めず常に新しい表現に挑戦する」信念の確信

まだあまり外には出ていない(?)個人活動時代のお話もたっぷりと
まだあまり外には出ていない(?)個人活動時代のお話もたっぷりと

茂樹(以下S) : 実は20歳頃までイラストレーションには興味がなかったんです。音楽を通してローリング・ストーンズのLPジャケットに出会い、初めて、こういう仕事ができたらいいなと思いました。それですぐ大学を中退してデザインの専門学校に入り直しましたが、そこで彼女と同じクラスになったんです。
Yuriko(以下Y) : 私は美術が大好きでしたけれど、実家の美容院を継ぐ道がありました。それでも高校卒業後の2年間、普通の短大よりも専門学校で好きなことをしようと思って入学しました。
S : だから、卒業後まもなく僕はフリーのイラストレーターに、彼女は美容師と、一度は別々の道に進みました。

Y : ただ、在学中から2人で仕事をしたいという話をしていたので、ユニットを組むまでは私が美容師をして待っていたという感じですね。
S : 僕が1人で仕事をしていた時は、自分が好きな音楽や人との仕事しか興味がありませんでした。『スイングジャーナル』の連載、萩原健一さんのコンサートや前田日明さんのUWFプロレスのパンフレット表紙のイラストレーションを担当したりという仕事ができたけど、意外と簡単に夢が叶ってしまったからか、ずっと「こんなものなのかな?」という気持ちが拭えなかった。その頃、バブル全盛期で、華やかだった広告業界がキラキラと目に入ってきたんです。広告の仕事をしたいと強く思うようになり、どうしたら良いかと考えに考え抜いて辿り着いた結論が、Yurikoとユニットを組んでキャラクターを作ること。新たな自分を見せるなら反対方向に振り切ればいいんだと。男っぽくヘヴィーな過去の作風とは真逆のかわいいキャラクターの立体を作って出したんです。でもこの勝負に出てよかった。得た物は大きかったし、予想外のことをやれば大きな反響がもらえることに気付けましたから。今の「枠を決めず常に新しい表現に挑戦する」という信念は、ここで決まったようなものです。

現場はいつでも真剣勝負。最前線で太く長く制作を続けたい

真剣勝負を挑む侍のようですね…という筆者の言葉に「そう、侍になりたい!」と茂樹さんが笑顔で力を込める場面も
真剣勝負を挑む侍のようですね…という筆者の言葉に「そう、侍になりたい!」と茂樹さんが笑顔で力を込める場面も

S : 仕事の進め方は企画ごとに変わります。企画段階から入る時も企画が通った後で呼ばれる時もあるけれど、後者の場合は、まず企画を大事にします。話を受けてきたADやCDを信頼して進めないと、よい作品はできないですからね。その後は、話を持ち帰ってYurikoと2人でどう表現すべきかを読み解いていきます。
活動の上で常に考えるのは、一流のクリエイターから「一緒にやりたい」と思われるようなユニットであり続けたいということ。そして10年と言わず、死ぬまで最前線で太く長く制作を続けたいということです。社会変化を常に感じ、輝くような仕事に呼ばれる存在でいられなければ、この仕事をやる意味がないとさえ僕は思うようにしている。そう考えると、やっぱり表現方法は今のように固定せずに行くしかないんですね。この心構えでいると、時には自らの表現すら削ぎ落とすことも辞さない、優れたクリエイターに出会えたりする。その判断を見て、自分たちの絵のスタイルにこだわっているようではいい作品は生まれないんだと改めて気づかせられたりして。そんな風に高めあえる現場に参加していたいと思います。渾身の力で生み出していけば、正解や新しいステージは必ず見つかる。
Y : 仕事からどんどん教わっていく感じだよね。
S : そう。だから、つねに人の仕事はよく見ていなければと思います。力を貸してもらうならベテランでも若い人でも刺激を受けられる方たちとやりたい。自分たちが恥をかけない状況に追い込むことが重要なんです。中途半端なことはできないし、怖いけれど、辛辣な意見を交換できる方がずっと嬉しい。だから毎回、現場には真剣勝負の心持ちで向かうんですよ。

「自分はどうすべきか」という問いかけと、支え合う心

柔らかな口調で「泣きながらでも絶対にやりとげる」と熱い心意気を語るYurikoさん
柔らかな口調で「泣きながらでも絶対にやりとげる」と熱い心意気を語るYurikoさん

S : 参加した仕事で、良い形になりそうであれば、自分たちのアイデアを提案することもあります。何パターンものラフを作り込んだり、それを理解してもらうには丁寧な説明も大事です。ただ、きちんと説明しても伝わらない時があれば、対峙することも大切だとは思っています。
Y : 私たちは「楽したら、おしまい」って思っているので、伝えることも作品も後悔しないために最後まで丁寧に向き合います。作品のためなら難しそうな方向に向かっちゃう時もあるんですが、いつも「それでいいの!?」って確認しあえる同士もいますしね。それが2人の強みでもありますね。
S : グラフィックデザイン界では当時異例の2人組でスタートしたタイクーングラフィックスの、チームでの制作の仕方はとても良いお手本でした。彼らのように僕たちも絵のスタイル云々ではなく生き方を考える。従来のイラストレーターとは違う道で新しいやり方を提示する、それが近道だったりするかな。最初は理解してもらえないかもしれないけど、うまく行った時はまったく違う生き方=やり方が開けるはずですよ。

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