桐山登士樹+西中川 京 : Milano Slone 2007 傾向分析編
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— マテリアル1 : Metal flood —

今年会場で最も目についたのが、ステンレス、アルミ、コパーなどのメタルをマテリアルとして使用したデザインである。メタルを得意としているアリアスやイカミはもちろん、多くのメーカーがメタルをメインのマテリアルとして使用したチェア、テーブルを発表した。アリアスのように用途を屋外での使用に限ったデザインの提案を行うメーカーもあったが、他のほとんどのメーカーがメタルのチープな表情を打ち消し、より高級感を引き出したデザインを提案した。もちろんメタルにはプラスチックほどの可塑性を期待することはできないし、種類によっては非常に重たいものになってしまうが、それはフォルムを工夫することでうまくクリアされている。またそこには、歴史の中で誕生した素晴らしいメタル家具への尊敬とオマージュが込められているようにも思われた。ここ数年の「暖房の利きすぎた部屋」のようなウォームネスいっぱいのデザインから一転、メタル特有の「冷たさ」が新鮮な空気のようである。
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Déjà-vu chair by 深澤直人, Magis
ほぼ全体をアルミのダイキャストで作られた椅子。一昨年発表されたスツールのシリーズ。他に同シリーズのテーブルを発表。
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Fold by Carlo Colombo, Ycami
アルミ素材に細かい葉っぱのような模様が散らしてあるフィニッシュ
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Itomaki by Dan Sunaga, Karl Andersson & Söner
予想に反して木製の脚部。一見すると金属のような印象
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Plein Air by Alfredo Häberli, Alias
金属を得意とするアリアスから発表されたアウトドア用の家具。骨格を作る細い金属のラインが今年らしい
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Blow by Christophe Pillet, Ycami
こちらも金属を得意とするイカミのアームチェア。シェルの形をした座面と細い金属の脚が洗練されている
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Breeze by Monica Fërster, Swedese
一見する金属のような波模様が付けられた木製の天板。メタルの脚で軽さも演出
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Ceccotti
チェコッティのブースで見かけたブックシェルフ。ラグジュアリーブランドだけあり、カジュアルなデザインにも関わらず金属のチープさが全く見られない
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— フォルム —

フォルムに関しては、二つ以上のエレメンツを組み合わせて作り出されるものが目立つ。特に1枚のシート(面)、1本のストリップ(細長い片)、1本のワイヤ(線)を使ったフレームや脚部とクッション素材やその他の天然素材を使った天板、座面とのコンポジションが多く見られる。ゆえにフォルム自体はどちらかというと機械的な印象を受けるが、コンポジション次第でユニークにも知的にもなり、飽きさせない。
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Wavy by Ron Arad, Moroso
プラスチックのシートを熱で溶かしたような単純な大胆なデザイン
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A Sheet
一枚の大きなシートをフレームの上に被せたり、曲げたり、折ったりして立体を作り出すデザイン。
A Strip
一本の長いストリップをくるくると巻き上げて立体にしたり、ストリップをフレームにぐるぐると巻きつけていくデザイン。
A Wire
一本の細いワイヤをジグザグに折って立体を作ったり、数本のワイヤそれぞれで長方形や三角形を作り、それらを組み合わせて脚部にするデザイン。
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Entronauta by Riccardo Blumer with Matteo Borghi, Desalto
1枚のファブリッックをかぶせているように見えるが、あらかじめ椅子の形に縫ってある袋にポリウレタンを流し込む事によって形成されている椅子。
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Bent by Christophe de la Fontaine and Stefan Diez, Moroso
紙のような印象と実際のマテリアルのギャップを楽しめる、アウトドア家具のシリーズ
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種別に見ると、チェアやテーブル等は、上述の方法で、金属や布の特性を活かした構造を作り、それを活かしたフォルムを持つ作品が多い。ソファでも面が広めで比較的薄めのクッションにメタルや木製の細めの脚部を併せて、軽さと高級感の両方を追求したものが登場。シェルフに関しては、箱の形自体の変化は乏しいものの、比較的小さなケースを重ね、違い棚を設ける等「繰り返し」と「外し」のリズムが多様な表情を作り出している。全般的に機械的な印象を受けるフォルムが多いとはいうものの有機的なフォルムを持つ作品もまだまだ多く、特に照明器具や装飾雑貨などにその傾向は強く残されていた。
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Ribbon by nendo, Cappellini
リボンを巻き上げたような形がキュート。軽さと情緒性を同時に持つ魅力的な作品
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Fracture Furniture by Ineke Hans, Cappellini
骨折した家具という名前のシリーズ。包帯のストリップで本体をぐるぐる巻き
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Small wire by Alik Levy, Zanotta
名前についているようにワイヤの脚部に特徴のあるテーブル。写真はスモールテーブルとコーヒーテーブル。サイズの大きなビッグワイヤテーブルもある
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Isis by Jake Phipps, Thönet
面と線と点ででき1920-1930年代のゲルマン系のデザインを彷彿とさせる
美しさと機能性を持ち合わせたクレバーな椅子
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Pilotta by Rodolfo Dordoni, Cassina
椅子の骨格に緩やかにたわむ座面が美しい
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Coupè GT by Piero Lissoni, Cappellini
クッションを薄くする事で空間がコンパクトな印象に
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Ronan & Erwan Bouroullec, Vitra
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Alone by Monica Förster, Poltrona Frau
コージーで清潔な雰囲気のソファ。
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Sveva by Ludovica & Roberto Palomba, Sawaya & Moroni
金属工芸作品のような本棚。背面を付ける部分と付けない部分の対比が美しい
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Droplet by Ross Lovegrove, Artemide
水滴にゆれる波の表現が絶妙。個人的には水滴が豆に見えるのだが
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Acrylic Bowl by Zaha Hadid, Sawaya & Moroni
長さが60センチくらいはある大型のオブジェ。たっぷりとして女性的な形状はザハそのもの
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