Vectorworks(ベクターワークス)ユーザー活用事例レポート 株式会社 丹青社

Vectorworks(ベクターワークス)ユーザー活用事例レポート 株式会社 丹青社

2015/07/01 UPDATE

渋谷ヒカリエの商業施設「ShinQs(シンクス)」に登場した「Switch Room」は、大人の女性が気持ちをリフレッシュするための空間。レストルームの新たなスタンダードが生み出されたこのプロジェクトに活用されたツールがVectorworksです。Switch Roomの誕生にまつわるエピソードと、Vectorworksを活用したデザイナーたちの仕事術に迫ります。

VOL.1 無駄のないワークフローと、効率的なレイアウトのために

東中川華子(ひがしなかがわ・はなこ)
東中川華子(ひがしなかがわ・はなこ)
株式会社丹青社クリエイティブマネジメント室プランナー。1983年佐賀県生まれ。東京大学文学部歴史文化学科卒業後、丹青社に入社。イベントや展示会の営業を経験後、プランナーに転向し、商業空間のアメニティをはじめ、展示空間、エンターテイメント空間などの企画を手掛ける。代表作は「渋谷ヒカリエ ShinQs Switch Room」企画、「宇宙ミュージアムTeNQ(テンキュー)」展示企画など

渋谷に大人の女性を呼び戻す、という命題を受けて

クライアントである東急百貨店様から命題として上がってきたこと。それは「これまでにない女性のためのサービス空間をつくり、渋谷に大人の女性を呼び戻す」ということでした。そのときにまず感じたのは、多くの女性は「新宿ならあそこ、銀座ならここ」と普段から利用するレストルームを決めているものですが、渋谷には女性が落ち着けるレストルームが不足しているという現実です。同時に世の中のレストルームの質が向上しはじめている動向にも気がついていました。

買いものをしなくとも立ち寄りたくなるレストルームがあれば来店のきっかけになります。レストルームがきれいで充実していることは「お客さまを大切にしている」というメッセージにもなるでしょう。それに「あそこのレストルームは良かった」「使いやすかった」という女性の口コミには強い伝播力がありますよね。そして、ショッピングをすることは結構疲れるので、どこかで一休みして気分を切り替えることができると、お店に長く滞在してもらえます。すると売り上げにつながることもありますよね。

これら四つの理由から「いかにレストルームが商業施設にとって大切か」をクライアントに説くにあたり、私たちは「Switch Room」というコンセプトを掲げました。オンとオフのスイッチ、日常と非日常のスイッチ。単なるレストルームにとどまらず、いろんな気持ちをスイッチできる場所をつくる。このアイデアはクライアントにも受け入れられました。当初は1フロアだけを手がける予定でしたが、最終的にはShinQs内にある、六つすべてのレストルームを担当させてもらえることになりました(プランナー、東中川華子氏)。

Switch Room 4F(撮影 / ピップス)
Switch Room 4F(撮影 / ピップス)
フロアの個性をあらわすキャラクター
フロアの個性をあらわすキャラクター
町田怜子(まちだ・さとこ)
町田怜子(まちだ・さとこ)
株式会社丹青社CS事業部デザイン統括部チーフデザイナー。1981年東京都生まれ。明治大学大学院理工学研究科建築学専攻修了後、丹青社に入社。物販店や飲食店などの専門店の他、企業ショールームや女性ターゲットのホスピタリティ空間を手掛ける。代表作は「銀座文明堂東銀座店」「有楽町献血ルーム」「渋谷ヒカリエ ShinQs Switch Room」「Konica MINOLTA浜松町ショールーム」など

プレゼンするのに最適なアングルを、Vectorworksで探る

実際にデザインを進めるにあたり、各方面から「面白い」と言っていただいたのが、それぞれのSwitch Roomを利用するキャラクターを定めたこと。また、それによってバラバラに存在する六つのSwitch Roomを、一つのストーリーで束ねたことです。各フロアのマーチャンダイジングから導いたキャラクターなので各Switch Roomの機能やデザインは、彼女たちに一番ふさわしいシーンを想像しながら固めていきました。36歳のヨガインストラクター、31歳のグラフィックデザイナー、27歳のスタイリスト、34歳の料理教室を開く育児ママ、29歳のフランス語翻訳家。彼女たち「toocute(トーキュート)」と名づけられたキャラの個性をクライアントとともにしっかり固めておいたおかげで、デザイン検討は最後までブレることがなかったですね。「あの子のフロアだから、こうだな」という指針になるというか。そこをスタートラインに家具やサイン、装飾品はもちろん、アロマの香りやBGMまで選んでいきました。

初期段階では、参考写真とスケッチを使って空間のイメージを提案したのですが、このスケッチはVectorworksのワイヤーフレームをベースにして描きました。レストルームは閉じた狭い空間ですので、やっぱり何となくの感覚だけで描いてしまうと、実際よりも広く見えてしまうこともあります。それを避けるためにもVectorworksを活用し、正確な広さを表現できて一番よく見える角度を探すべきだと思うのです。パース画についてもどんなアングルが最適か、Vectorworksでシミュレーションを徹底して探りました(デザイナー、町田怜子氏)。

吉田麻紀(よしだ・まき)
吉田麻紀(よしだ・まき)
株式会社丹青社CS事業部デザイン統括部デザイナー。1982年神奈川県生まれ。多摩美術大学環境デザイン学科卒業後、丹青社に入社。百貨店やショッピングセンターなどの大型店から物販店などの商業空間の他、ショールームや、レストルームなどのパブリック空間を手掛ける。代表作は「銀座東急ハンズ」「渋谷ヒカリエ ShinQs Switch Room」「CERA TRADINGショールーム」「渋谷ちかみちラウンジ」「ルピシア各店」など

Vectorworksのシンボル集で、レイアウト検証をペースアップ

このプロジェクトでは、すでに決まっていた配管計画をベースにレイアウトすることになりました。どう配置すれば効果的なのかを、Vectorworks上で何カ月にも渡って検証することになり、その際に活用したのがVectorworksのシンボル集です。

レストルームで使用する衛生機器のパーツは基本的に同じですので、一つを変更すると同一のパーツすべてが自動変更されると効率的ですよね。「器具を違うものに替えたら、もう少し広く空間を使えるかもしれない」と、一つひとつ手で替えて検証していたら、どれだけ時間があっても足りません。実際のところ「替えてみたら、こっちは良くなったけど、こっちはダメ」といったことが頻発しました。「よし、うまく並べ替えられた!」と思っていても、クライアントをはじめ各方面からNGをもらうこともあり、最終的なOKが出るまでに6カ月かかりました。それでもVectorworksがあって良かった。シンボル集を使っていなければ、間違いなく6カ月では終わってなかったでしょうからね(デザイナー、吉田麻紀氏)。

ワイヤーフレーム 5F検証アングル1
ワイヤーフレーム 5F検証アングル1
ワイヤーフレーム 5F検証アングル2
ワイヤーフレーム 5F検証アングル2

A&A いいものは使おう。無いものは創ろう。

INDEX

無駄のないワークフローと、効率的なレイアウトのために

VOL.1

無駄のないワークフローと、効率的なレイアウトのために

クライアントとの協業を円滑化するソフト

VOL.2

クライアントとの協業を円滑化するソフト

商品情報

Vectorworksの2D/3D基本作図機能を搭載したベーシック汎用CAD「Vectorworks Fundamentals」、建築・BIM支援CAD「Vectorworks Architect」、造園や緑地計画用の「Vectorworks Landmark」、舞台計画やステージ&ライティング計画などに適した「Vectorworks Spotlight」、全ての機能を搭載した最上位版「Vectorworks Designer」、さらに各シリーズには、高品位レンダリングと関連するビジュアライズ機能を搭載した「with Renderworks」シリーズが用意されており、利用用途に合わせてお選びいただけます。
http://www.aanda.co.jp/Vectorworks2015/

企業情報

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