Vectorworks(ベクターワークス)ユーザー活用事例レポート 東京舞台照明・岡山貞次

Vectorworks(ベクターワークス)ユーザー活用事例レポート 東京舞台照明・岡山貞次

2014/07/09 UPDATE

「第43回東京モーターショー2013」で、ひときわ注目を集めたトヨタブース。ものづくりの神髄を感じさせる6台のワールドプレミアカーと1台のジャパンプレミアカーを中心に構成された空間は、ランウェイ型のステージが設けられ、コンセプトカーが疾走するライブ感あふれる演出で来場者を魅了しました。この走るコンセプトカーを一層ダイナミックに演出したのが、照明設計の力です。今回は、東京舞台照明の岡山貞次氏の仕事術を切り口に、Vectorworksの活用方法を探ります。

VOL.1 東京モーターショーの照明デザイン

岡山貞次(おかやまていじ)
岡山貞次(おかやまていじ)
1960年 鹿児島生まれ、鹿児島の舞研で演出照明業界に入る。1989年 株式会社東京舞台照明入社、取締役、公益社団法人日本照明家協会理事。演出空間の照明デザインと施工、各種セミナー講師やコンサルタント、公益社団法人日本照明家協会の出版物の執筆や編集も手がける
http://www.tokyobs.co.jp/

10年目の躍進

私は長年、コンサートや演劇の照明デザインに携わってきました。いまでも舞台のライブ感は大好きですが、東京モーターショーにはまた違った手応えを覚えます。いわば、クリエイターとして一緒に作り上げられる空間。それが、モーターショーのブースでしょう。

最初の打ち合わせは、会期の10カ月以上前から始まります。照明設計を考えるにあたりまず大切なのは、当然ながら車そのものを素晴らしく見せること。普段、車は屋外にありますので、太陽光の下で見る印象が第一になります。モーターショーでは舞台に乗せ、ステージで演出しながら、車の特徴を伝えます。そうした環境の違いを越えて、車のデザイナーが目指した表現をそのまま感じ取ってもらえるようにしたい。ですから、車のデザイナー、特にカラーデザイナーと話をしたり、コンセプトのスケッチを見せてもらったり、塗装色の候補が決まった段階の車体用板金見本で色を確認させていただくこともあります。とはいえ、実車ができあがるのは会期間際です。塗装色候補の板金に手持ちのバッテリーライトをあてて見ながら、使用する器具の色温度や照射する角度を検討することもあります。

第43回東京モーターショー2013 トヨタブース
第43回東京モーターショー2013 トヨタブース

東京モーターショーでトヨタブースを担当させていただくようになって、今回が10年目です。
担当を始めた頃に、開発の現場に使用予定のスポットを持参し、ライティングを具体的に提案してみたところ、車のデザイナーの方から「ああ、照明デザイナーがちゃんと照明計画を立ててくれるんだ」と言っていただいたのが印象的でした。クリエイターとして同じ感性を持ち合わせていますから、車の素晴らしさを伝えたい、と思う気持ちは同じです。
かつては海外のモーターショーと日本のモーターショーでは車の見え方が違うと言われることもありましたが、トヨタブースのプロデューサーが照明を重要だと考えて今に至ったという経緯があります。今回のモーターショーの照明はおかげ様で好評をいただいていますが、「10年目にして、ようやくここまで来た」と感慨が深いですね。

バーチャル空間を作る過程(Vectorworksで3D化したセットを照明シミュレーションソフトに取り込み、バーチャル空間上でさまざまな検証と事前プログラムを行う) 1
バーチャル空間を作る過程(Vectorworksで3D化したセットを照明シミュレーションソフトに取り込み、バーチャル空間上でさまざまな検証と事前プログラムを行う) 2
バーチャル空間を作る過程(Vectorworksで3D化したセットを照明シミュレーションソフトに取り込み、バーチャル空間上でさまざまな検証と事前プログラムを行う)

Vectorworksが共通プラットホーム

今回のモーターショーでは、最初にブースの平面図から自分で3D図面を起こしました。照明デザイナーでも簡単に3D図面が作れるのはVectorworksの強みでしょう。
東京モーターショーは、海外と違ってセットや吊り物について厳しいレギュレーションがたくさんあります。特に重量制限。照明機材にしても、数多く吊り下げることができればさまざまな方向からの照射が可能ですが、重量制限が照明計画を立てる上で大きな難関となります。その限られた照明機材をどう動かして、どう光をあてるか、シミュレーションソフトを利用して検討していきます。照明計画ができたら配灯図を作成し、それをセットデザイナーに渡して音響デザイナーとも擦り合わせます。たとえば、音響機材を吊ることによって新たに影が出てしまうこともあるので、互いの調整が必須です。

照明デザインは施工デザインと同じくらい早い時期から現場に関わります。ただ、演出で使用する映像や音響はセットデザインが完成し、照明計画が決まってから加わることが多く、“音響機材をここに吊りたいけど、照明機材と重なるから不可能”という場合と、“演出が求める音響のためには照明を動かさなければならない”という場合と、どちらの状況も起こり得るんです。それだけでなく、照明・音響・美術で必要な機材をすべて吊るトラス上では、電磁波によりノイズが出てしまうこともしばしば。
そうすると、照明の吊り位置の変更が必要となり、電気コンセント位置などを描き込んだ施工図面も変更が必要となります。

施工図面は照明・音響・映像などそれぞれが独立したレイヤを使用し、シートレイヤで情報を集約します。これにより、たとえば照明器具の吊り位置変更に伴う電気コンセント位置の変更も同時に反映されます。一つのファイルをみんなが共有することで情報も一元化されます。照明計画や舞台美術など、いくつもの要素が重なるモーターショーの場合、それぞれの分野の図面をレイヤとして重ね合わせて見ることができるVectorworksは不可欠なツールです。
それぞれの役割において必要な情報を描き込み、レイヤとして重ね合わせることで全体像がはっきりする。Vectorworksという共通のプラットホームが厳しいせめぎ合いの重なる現場での仕事をスムーズにしてくれます。

レイヤ分けした図面を共有することで、現場に入る前に他のセクションとの調整を細かく行うことができ、スムーズな施工が可能となる
音響担当者から送られてきたスピーカー位置を3Dシミュレーション検証した結果、ムービングスポットライトの照射範囲に入っていることが判明したために音響担当者へスピーカー位置の変更を依頼した。レイヤ分けした図面を共有することで、現場に入る前に他のセクションとの調整を細かく行うことができ、スムーズな施工が可能となる

A&A いいものは使おう。無いものは創ろう。

INDEX

東京モーターショーの照明デザイン

VOL.1

東京モーターショーの照明デザイン

状況の変化にいち早く対応するためのシミュレーション

VOL.2

状況の変化にいち早く対応するためのシミュレーション

商品情報

Vectorworksの2D/3D基本作図機能を搭載したベーシック汎用CAD「Vectorworks Fundamentals」、建築・BIM支援CAD「Vectorworks Architect」、造園や緑地計画用の「Vectorworks Landmark」、舞台計画やステージ&ライティング計画などに適した「Vectorworks Spotlight」、全ての機能を搭載した最上位版「Vectorworks Designer」、さらに各シリーズには、高品位レンダリングと関連するビジュアライズ機能を搭載した「with Renderworks」シリーズが用意されており、利用用途に合わせてお選びいただけます。
http://www.aanda.co.jp/Vectorworks2014/

企業情報

エーアンドエー株式会社(A&A Co.,Ltd.)

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