2012/12/05 UPDATE
窪田茂氏は、建築設計以外にもカフェをはじめとする飲食、インテリア、アパレルなど幅広いインテリア設計で実績を持つ建築家。特に店舗設計では、いまの時代を映し出し、さらに一歩先の未来を予感させるデザインで常に話題を集めてきました。今回は、「メルセデス・ベンツ コネクション」と「今治タオル 南青山店」を具体例に、Vectorworksでの仕事術を探ります。
ドイツ本社を納得させた設計プラン
六本木に期間限定でオープンした「メルセデス・ベンツ コネクション」では、コンペを経て、建物の設計から内装まですべてを担当しました。
テーマは「興味を創造する」。メルセデス・ベンツという車の素晴らしさを改めて若い世代に伝えるための空間であること、つまり、メルセデス・ベンツに興味のない人たちが、抵抗なくこの空間に足を踏み入れてくれるきっかけにしたいと考えました。光る柱やギャラリースペースでの迫力ある映像など、すべてが「興味を創造する」ためにあります。
中でも、最初の受け口はカフェにしたかったんですね。クライアントの意向でもありますが、通りに面したカフェを利用してもらえれば、まずは第一段階がクリア。
その向こうに実車が置いてあるのですが、普通のショールームだとちょっとでも車を見ていると話しかけられて買わされてしまうんじゃないか、と誰もが少なからず警戒心を持っていますよね。でも、ここではそういったことはしない。『人がいても声をかけられなさそう』と思ってもらえればそれでいいんです。
窪田茂(くぼたしげる)
1969年、東京生まれ。1999年、設計事務所などを経て独立。2003年、窪田建築都市研究所(有)を設立。インテリア、建築、都市計画などのデザインや設計など、幅広くデザインを行う。代表作に、渋谷SUS、TSUTAYA TOKYO ROPPONGI、UT STORE HARAJUKU.、SUIT SELECT、GEORGE’S、リゾートホテルTRIF、Royal Garden Cafe、Mercedes-Benz Connectionなどがある。http://www.ka-a.co.jp/
映像の流れているスクリーンもあるので、何となく近づいて車を見始める、そこで第二段階がクリア。あとは自然に車を見ることになるので、メルセデス・ベンツの格好良さに気づいてくれるだろう、と考えました。
全体的に、コンペ案がほぼそのまま採用されています。それまでのショールームは、ドイツ本社が定めた基準内での計画が要求されていましたが、今回はクライアント自身が、日本独自の空間で運営したいと強く希望されていたので、ドイツ本社側をデザインで説得しなければなりませんでした。日本のメルセデス・ベンツがドイツの本社を口説いて、日本独自で始めたプロジェクトだったんですよ。だから、カフェ等を中心としたメルセデス・ベンツブランドの情報発信拠点は世界中で、ここが初となります。
最初のプレゼンテーションから模型は作っていたので、ドイツ本社を説得するために、その模型を持って行ってもらい、許諾を得ることができました。
複雑な柱のデザインが個性になる
当初から、カフェの他にレストラン、ラウンジ、テラスの空間を設けるアイデアを提案していました。僕の事務所ではスタッフも全員、Vectorworksを使っているので、最初から全てVectorworksの図面で提出します。家具の配置など細かい点は修正していきましたが、当初のイメージは大きく変更せずに進める事ができました。
著名な照明デザイナーである、ワークテクトの金田篤士さんに照明のデザインを依頼しオリジナルの照明を製作しました。光る柱は、柱で1日の陽の動きに合わせて色を変えるイメージだったので、朝は白っぽく、昼はオレンジ、夜は赤。夜空が赤くなる訳ではないけれど、街の灯りで妖艶になる印象の赤さです。
1階の壁面に映し出される映像はWOWに、2階のレストランとバーエリアの椅子はドリルデザインに依頼し、それぞれプロフェッショナルな力作でメルセデス・ベンツの世界を作り上げてくれました。すべてにおいて、“いかにもメルセデス”ではなくて、どこかに“メルセデスっぽさ”が感じられるようなさりげなさを残した、居心地の良い場所を目指しました。
六本木の店舗は、2013年1月14日までの期間限定ですが、1月18日からはすぐ近くで移転・新装オープンします。そちらはデザイン監修を担当しています。
http://www.mercedes-benz-connection.com/info/
vol.2:「今治タオル 南青山店」
空間を扱うデザイナー、設計者にはお馴染みのVectorworks。Vectorworks2012は、Designer(デザイナー)、Architect(アーキテクト)、Fundamentals(ファンダメンタルズ)の3種。全てレンダリング用のRenderworksを伴ったシリーズがあり、仕事の領域によって選択できるようになっている。
http://www.aanda.co.jp/Vectorworks2012/
エーアンドエー株式会社(A&A Co.,Ltd.)
TEL:03-3518-0131(営業部)
FAX:03-3518-0122
http://www.aanda.co.jp/