トイット Tiny Bakery

屋根を45度ずらすことで、多用途な半屋外スペースが誕生

新興住宅地の一角にある大きな屋根が印象的な「トイット Tiny Bakery」。店舗の経営は、個人のオーナーや飲食系の法人ではなく、千葉を中心に宅地開発を本業とするデベロッパーの株式会社拓匠開発が行っています。

「2020年度グッドデザイン賞」を受賞したこの建物について、株式会社拓匠開発の長谷部茜さんに、背景やコンセプトなどを伺いました。

■背景

「トイット」は千葉県野田市に位置するパン屋です。アクセスは少し不便な場所にありますが、新しい分譲地の入口で、緑地や広場と同じように住民の毎日の生活に溶け込み、街のインフラとして活躍するように計画しました。

■コンセプト

「トイット」とはフランス語で屋根を意味する「toit(トワ)」から発想した造語です。その大きな屋根の軒下には、可動式のコーヒーショップや花屋など、季節や時間によって街のニーズを反映した業態の店舗も集うことができるようになっています。小さなパン屋を中心とした、いわば世界で一番小さな複合商業施設とも言えるような店鋪であることをコンセプトにしました。

トイット

大きな屋根の下で開催されたマルシェの風景

■手法や特徴

外壁に大きく「トイット」の文字を配したり、圧迫感を抑えるべく平屋とし、街の顔として遜色ない外観となるよう工夫しました。また、店内の売場スペースを最小限にすることによって生じた広い軒下スペースを活用し、いろいろな業態のお店が集まったり、気持ちのいい半屋外で飲食ができるスペースを確保(売場が約9.5m2、厨房20m2に対して、軒下は75m2)。

そして、屋根と壁の角度を45度ずらすことにより、いろいろな滞留空間が生まれました。軒下は以下の4つの空間に分かれます。

(1)南側:店舗入り口前のウッドデッキスペース
(2)西側:店舗内への出入り口の動線から外れた落ち着けるイートインスペース。敷地外道路にも接しており、街の外にも賑わいがあふれる
(3)東側:前面道路との段差がなく、キッチンカーなどもアクセスしやすい位置。屋外から使えるトイレも併設
(4)北側:裏動線スペースとして搬入口や備品置場、スタッフ休憩スペースとなる

トイット外観

角度を45度ずらすことによって生まれた空間

トイット

東側のキッチンカーのアクセスしやすいスペース

現在「トイット」は計画通り、パンだけでなくいろいろな食べ物や花、雑貨などの商品がテイクアウトできる街のインフラとして活躍しています。

所在地 千葉県野田市みずき4-19-4
施工 株式会社拓匠開発+寺島敏貴/株式会社シロアナ+上領大祐建築設計事務所+今城瞬建築設計事務所
構造 木造
敷地面積 181.13m2
延床面積 29.33m2
階数 1階
竣工日 2018年6月20日