北海道・旭川市に隣接する鷹栖(たかす)町に2018年秋に竣工した「鷹栖地区住民センター」は、「みんなが集うまちの交流拠点」をメインテーマに、多くの町民に親しまれる複合施設として生まれ変わった施設です。
設計を手がけたのは、北海道を拠点に建築設計を行う株式会社アトリエブンク。同社に、制作背景や手法などについてうかがいました。
■背景
北海道内陸の旭川市に隣接する人口約7,000人の鷹栖町は、旭川のベッドタウンとして2つの地区が市街地を形成し、3つの地区が農村部に点在しています。本計画は、中心市街地にある鷹栖地区の住民センターの建て替えプロジェクトです。
地区単位の公民館機能を保持しつつ、すべての鷹栖町民が利用できる図書館機能を新たに兼ね備え、多世代が交流できる新しいまちづくりの拠点となる施設が求められました。
■手法、特徴
ボリュームの大きなホールを中央に囲んだコンパクトな平屋建てで、周囲の住宅スケールに合わせた配置計画としました。四方に回した深い庇(ひさし)が雪から来館者を守り、どの方向からも迎え入れてくれます。堆雪と滑雪、採光を考慮して決定した勾配屋根は隣り合う住宅地に溶け込み、金属板が季節や時間の変化を映し出します。
シンプルな矩計平面に大きな中庭をくり貫き、公民館機能と図書館機能が中庭を介して一体的につながる計画としました。自然光が回り込む中庭周囲に居場所を散在させたので、町民は自由に過ごすことができます。
構造は、鉄筋コンクリート造のホールを間に挟むことで全体面積の2/3を木造で実現。大空間で遮音性が求められるホール、異なる活動に対応する会議室や多目的活動室、天井が高いワンルームの図書室といった機能に応じて、それぞれ異なる架構形式を採用しました。

ホール

多目的活動室

図書室
道内産カラマツ材による架構と、カラマツ合板を使った内装で全体を統一し、ガラススクリーンによって空間を連続させています。
厚い外皮に覆われた矩形平面の中で、木造架構と自然光が奥行のある空間をつくり、内部全体で町民の活動が展開する建築を目指しました。
地域住民交流の場にふさわしい構造架構として、小中断面の道内産カラマツ材(一般流通製材・集成材)と在来軸組工法でつくり上げる構造計画としました。
所在地 | 北海道上川郡鷹栖町北1条3丁目 |
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建築設計 | 株式会社アトリエブンク |
構造設計 | 山脇克彦建築構造設計 |
設備設計 | 株式会社アトリエブンク+総合設備計画 |
構造 | 鉄筋コンクリート造、木造 |
敷地面積 | 9,280.44m2 |
延床面積 | 2,059.88m2 |
竣工日 | 2018年9月 |
撮影 | 佐藤文昭 |