OPPOSITE CELLAR

空中に浮かぶワインセラーを実現させた空間

デザインコンセプト
担当:勝田規央/STUDIO+0601

北京・三里屯地区、インターコンチネンタルホテル 北京の3階に入る、バーの設計プロジェクト。オーナーの要望は、「昼間はワインを売り、夜はバーとして運営するため、店中を豊富なワインで満たす。バーとしてできるだけたくさん集客し、さらにはホテルにふさわしい高級感を持たせた空間にしてほしい」とのこと。一見矛盾したこの要求をできるだけ整理しながら現場を見回った。

高さ4.8mの空間は鉄骨の大梁4本の圧倒的な存在感と、梁下に縦横無尽に張り巡らされた消防設備や排水設備の配管などが、空間本来のポテンシャルを失わせている印象を受けた。天井を塞いでしまうと、せっかくの高さの開放感が損なわれてしまうため、空間の問題点とオーナーからの要望をうまく噛み合わせて昇華させた空間が実現できないものかと熟考した。「空中に浮かぶワインセラー」という概念が頭によぎった瞬間、矛盾を解消し、空間を美しく解けると確信した。

存在感の強い鉄骨梁を覆うように鉄角パイプで組んだスペースフレームにワインラックを吊るし、梁の存在を弱めた。ラックと木パネルの連続でつくられた立面全体は、美しいプロポーションを形成すると同時に、吊り式を採用したことでバーとしての十分な客席面積を実現。

内装はレンガタイル、古材、ワインの木箱といった建材を用いた、よく連想されがちな「小洒落たワインセラーのノスタルジックな情景」を意図的に演出している。ワインセラーにおけるワインラックとは、美しい風景の中によくある「中心的要素」だが、実はそこに最も必要なワインラックは配置されておらず、暗く静かな場所に整然と吊られ、別世界をつくり出している。床に置かれて整然と並ぶワインラックとワインボトルによる情景が、人々に重厚感のある落ち着いた印象を与えるのに対し、それを反転させて上部から吊り上げたことや従来のワインセラー的世界から取り出して、別世界をその上部につくり出したことで、訪れた人々にこれまでの経験にはない不思議な感覚を与えることができる。

所在地 北京朝阳区三里屯南路1号通盈中心洲际酒店三层3-9
設計 勝田規央/STUDIO+0601
面積 86m2
開業日 年中無休
電話番号 +86(010)5614-5959
撮影 広松美佐江/宋昱明(北京鋭景)