- デザインコンセプト
- 担当:SUMA/須磨一清+なわけんジム
敷地は静岡県伊豆高原の丘陵地で、20m級のケヤキが林立している。以前に建てられた家の尾根の頂部は削り取られていた。ケヤキたちと呼応し、尾根の頂部を彷彿とさせるような建物の設計を試みた。
施主は50代と60代の女性2人。2人は料理家・介護士、パティシエとして東京杉並区の福祉作業所でともに20年働いた後、夫も子供も手が離れ、新しい家族と生活のかたちを模索するかのように、ここに2人で住むことを決めた。
2人はこの場所を、地域の、そして遠方から来る人にとっての実家になれればという思いから「jikka(ジッカ)」と名付けた。地域の高齢者のための配膳サービスと、地域の食堂として、敷地内でとれた野菜や地域の食材を使った世界の家庭料理を大皿形式でふるまっている。
大きさの異なる5つの棟からなる構成で、2人の居住スペースは西棟、食堂は中央棟、そして続く東棟は、介護入浴用のスロープ風呂を完備した高齢・障害者のための宿泊施設となっており、短期滞在、長期滞在、終身滞在も受け入れる。各棟にプログラムを振り分け、各々が周辺環境を呼び込むように配置した。
小さな寝室は3m角、2人の寝室としての最小限のサイズだ。寝そべると、1.3m高の開口部外の草花たちと呼応するスケールとなっている。大きな食堂は5.5m角、最高天井高は8m。寝室から仕切りがなく、職場・作業場であるこの場所に日々移動する際、家は自分の手の届く範囲から完全に逸脱する。高さ3mの開口部からは、南の先には海が臨め、北は大室山、8mトップライトのその先にはケヤキの枝葉が見える。いまだ2人が出会っていない人たちを呼び込むような公共性をあたえた。
外壁、屋根は檜の板張りで、時とともに変化していく。20年後には2人は東の棟に移る。西の棟には次世代を受け入れ、介護する側からされる側とまわり、そしてここで看取られ、そして次世代が引き継ぐ。時とともに循環し移り変わる空間を目指した。
設計 | 須磨一清/SUMA |
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構造 | 名和研二、三崎洋輔/なわけんジム |
所在地 | 静岡県伊東市池字原890-1 |
主要用途 | 店舗+住宅 |
構造 | 木造 |
階数 | 地上階1階(平屋) |
軒高 | 400~3,020mm(最高の高さ8,660mm) |
敷地面積 | 1,900m2 |
建築面積 | 95m2 |
撮影 | 太田拓実 |