- デザインコンセプト
- 担当:TENHACHI ARCHITECT & INTERIOR DESIGN
調布駅前の賑わいから一歩離れた静かな住宅地に、木造3階建ての建物がひっそりとたたずんでいます。「IDUMI」はこの1階に位置し、2・3階はオーナー家族の住居です。オーナーの直井雄太さんは、代官山のハンドドリップコーヒー店で修行を積み、2018年に自分の店を開店しました。この場所は代々家族が店を経営して来た歴史があり、彼にとって特別な場所です。“キッチン泉”や“泉荘”など、代々“泉”という名前が引き継がれ、グラフィックデザイナー山本和久さんの提案で、カフェは「IDUMI/いづみ」と命名されました。店のロゴサインには、“泉の湧き出るような場所”という意味が込められています。

IDUMIのロゴサイン
店のコンセプトは、「日常の暮らしを少しだけ豊かにするその手伝いをする場所」。「コーヒー1杯を味わう時間が、その人の1日をより豊かにするように、ささやかに生活に寄り添う場所をつくりたい」という思いから、商業的な匂いができるだけしないよう、外観はシンプルに過度な主張はせず、ファサードにはロゴサインを一つだけ設けました。

外観
コーヒーの抽出方法は一杯ずつハンドドリップ。豆へのこだわり、抽出時間、抽出温度など、オーナーに話を聞くと、お客様やコーヒーへの想いや情熱が伝わってきます。オーナーと我々設計事務所の空間づくりにおける素材へのこだわりは、共感する部分が多くありました。使い込むほど味が出る真鍮の照明器具や、白いテラゾーのカウンター、木組みのシェルフ、土の素材を活かした手づくりの陶器のコーヒーカップなど。職人の技や素材本来の味が生きる素材や照明器具でカフェの空間を構成しました。

カフェ店内
店の内部は、お客様を温かく迎えるために、木に包まれた空間としました。木質ラーメン構造の構造部である柱、梁、斜材で空間をフレーミングし、節のないシナ合板の壁にすることで、温くしっとりたインテリアとしました。店舗の奥にあるラウンジエリアは、400mmほど床が下がっており、さらに包まれたような落ち着きある空間です。
厨房は、オープンなスタンスでお客様を迎え入れたいというオーナーの要望から、カウンターの高さを940mmと低く設定し、収納やゴミ箱、冷蔵庫が見えても良いしつらえとしました。片付けの行き届く、所作を大切にする精神が現れています。
住居部分は、3世代にわたる家族が暮らし、性格も趣味もさまざま。家族だけれど、一人になりたい時間があり、それぞれの生活がある。そして、いつしか変わりゆく家族構成。そんな“それぞれ”に対応するために小さな個室が5つと、共有のリビングを3つしつらえました。可変性を考えた余白のある住居空間を目指しました。

リビング
3つのリビングはそれぞれの特徴を持ち、時間とサイズでシェアできます。家で一番大きなリビングは、一日の大半の時間を室内で過ごすお祖母さまのためにバリアフリーかつ、料理好きなカフェのオーナーのための大きなキッチンがあります。最上階には、一人でテレビを楽しめるリビングと、明るいバルコニーがある日当たりの良いリビングの2室。2世帯住宅から多世帯住宅へ。「家を家族でシェアする」がテーマです。

最上階のリビング
所在地 | 東京都調布市布田2-32-32 |
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建物規模 | 新築、一戸建て、地上3階 |
主要構造 | 木造 |
敷地面積 | 105.04m2 |
建築面積 | 69.56m2 |
設計 | 佐々木倫子、佐藤圭/TENHACHI ARCHITECT & INTERIOR DESIGN |
施工 | 高木雄一/小川建設株式会社 |
店舗照明 | モデュレックス |
店舗ロゴデザイン | 山本和久/Donny Grafiks |
撮影 | 千葉顕弥 |