House KJ 輪郭と線

変形旗竿地を活かし、隣地の関係性を模索した建築

変形地に対して、まっすぐ伸びた建物。愛知県にある「House KJ 輪郭と線」は、宅地開発によって生まれた変形旗竿地に設計された住宅です。

設計を担当したのは、1-1 Architects 一級建築士事務所の神谷勇机さん。設計が難しいケースが多い変形旗竿地にどのように建物をつくり上げたのか、神谷さんにコメントをいただきました。

■背景

愛媛県の郊外に位置する大きな田園を宅地開発した区画の1つに計画した住宅。区画全体は、新しく造成された土地であるが、もともとの田園とそれを囲む細い既存道路が高低差を含むいびつな形状であったことから、対象敷地は一連の区画整理の中で最後に生まれた変形旗竿形状であると考えられた。

そのため、さまざまな角度を持った敷地境界線と建物に囲まれることになり、敷地のどこに立っても拠り所のない隣地との距離感と希薄な関係性を感じた。

House KJ  輪郭と線 上空写真

上空から見た変形旗竿の土地

本計画では、いびつな輪郭を持った変形旗竿地における建物と敷地境界線との距離を設計することで、隣地を含んだ外部との新たな関係性の構築を試みたプロジェクトである。

■手法、特徴

具体的には、変形旗竿地の旗部分と竿部分を貫くように、幅1間の細長いボリュームの建物を挿入するように配置した。そうすることで、変形敷地の中で拠り所となる強固な軸を持った内部空間がつくられる。内部の各スペースすべてが、東西両側に手を伸ばせば届きそうな距離の外壁面を持ち、そこに、外部へとつながる開口と溜まりの場となる軸から少し膨らんだ場所を、隣地との関係を調整しながら配置していく。

House KJ  輪郭と線 上空写真

隣地との距離を調整しながら設計された建物

House KJ  輪郭と線 外観写真

内部からつながる外部空間

住まい手は、南北に延びた軸を行き来しながら生活することになるが、その中で逐一見え隠れする隣地は、高低差を含む変形した境界やさまざまな設えとその距離の取り方によって、動的に変化する。断面計画は、細長いワンルーム空間にスキップフロア状に各スペースが点在することで、家族との距離を適度に感じながら、隣地と立体的な関わりが生まれるように配慮した。

House KJ 輪郭と線 内観写真

スキップフロア状に配されたスペース

House KJ 輪郭と線 断面図

断面図

高い隣地の擁壁がすぐそばにそびえ立ち、柔らかい光の入る小さな場所に腰かけたり、低い隣地のフェンスが遠くに見える開放的な場所で食事をしたりと、区画整理で生まれたばらばらと乱立する設えといびつな隣地境界線との関係を設計することで、それらすべてを肯定し、住まい手の暮らしの一部になるような建ち方が、この場所にふさわしいと考えた。

House KJ 輪郭と線 内観写真

所在地 愛媛県伊予市
設計 神谷勇机/1-1 Architects 一級建築士事務所
構造 小松宏年構造設計事務所
施工 株式会社川下建設
主要用途 住宅
構造 木造
敷地面積 252.50m2
建築面積 62.53m2
延床面積 100.90m2
撮影 1-1 Architects