CULVERT PARK

土木の技術力や魅力を発信する施設

普段は地中に埋まっている土木資材「ボックスカルバート」のスケール感に圧倒される本施設は、建設会社が提供する地域コミュニケーションの場「CULVERT PARK(カルバートパーク)」。

愛知・名古屋に拠点を置く建築事務所、タイプ・エービーが設計を担当しました。施設のシンボルに「ボックスカルバート」を使用した背景や施設の特徴などについてコメントをいただきました。

■背景

クライアントは、愛知県蟹江町に本社をおく建設会社である。建築・土木工事に加え、ビオトープや環境学習をおこなうなど、積極的に地域へと働きかける活動を進めている。創業110周年を記念して、創業地に土木の技術力や魅力を伝え、地域に親しまれる建築をつくりたいという依頼があった。

愛知県蟹江町の「CULVERT PARK」周辺 画像

愛知県蟹江町「CULVERT PARK」周辺 撮影:ToLoLo studio

そこで、子育て世代の主婦層を中心にワークショップをおこない、地域に求められている機能を整理した。子どもたちに思う存分、砂場や芝生など身体を使って遊ばさせたいという要望に加え、集うことができるカフェのような空間、家事の一助となるランドリーやパンの販売などの機能が望まれた。それらの要望の実現に加え、多目的スペースや建設会社のサテライトオフィスとしての役割も担う施設の設計が求められた。

■コンセプト

生物が生息する場「ECO-STACK(エコスタック)」に着目し、多様な生物の一つに人間の行為と営みを見立てることで、「多中心がある建築」を目指した。

CULVERT PARK

撮影:吉村昌也/コピスト

通常は地中に埋まっている土木資材「ボックスカルバート(おもに地中に埋没される、水路や通信線などの収容に使われる箱型のコンクリート構造物)」を顕在化させることで、土木がもつ圧倒的なスケール感と建築スケールの「ズレ」を生み出している。

「ズレ」によって生じた隙間には、子ども連れのママや高齢者の集い、働く人と休息に来る人、それぞれが主人公となれる居場所が介在する。with/afterコロナで望まれる、店舗(民地)の賑わいが軒先から歩道や公園(公地)に滲み出す、まちづくりの空間(ウォーカブル推進)のように、土木環境を建築空間に転化する試みである。

CULVERT PARK

撮影:吉村昌也/コピスト

■課題となった点、手法、特徴

「土木の魅力を伝えるオフィス」として、クライアント(兼施工会社)が保有する土木技術であるパワーブレンダー工法(高品質で低コストの地盤改良技術)を用い、内部空間の一部床を液状化しない堅固な大地として位置づけた。液状化対策のみを施した床は周辺地盤の動きに合わせて沈下することを許容している。

また、建築の各構成要素毎に屋外と屋内をつなぐ仕掛けを施している。例えば、均一に配置したトップライトと東面全面の大開口による自然採光、各エリアに配置した土木資材のヒューム管に植えた樹木などで自然の要素を取り入れた環境をつくっている。

CULVERT PARK 撮影:吉村昌也/コピスト

撮影:吉村昌也/コピスト

蟹江町は、観光協会が推進している「パンのまち蟹江」であり、複数の有名パン屋を軸にパンのまちとして地域を盛り上げ、広報活動を行っている。地域を盛り上げる取り組みとして、CULVERT PARKの一部を、若手パン職人の開業支援の場として提供している。

所在地 愛知県海部郡蟹江町蟹江新田下芝切183
設計 伊藤孝紀、高橋里佳、福島巧也/タイプ・エービー
施工 加藤建設
構造 小松宏年構造設計事務所
敷地面積 598.47㎡
延床面積 443.51㎡
竣工日 2021年11月
撮影 吉村昌也/コピスト、ToLoLo studio