cohareruya

糀菌が浮遊する洞窟の中の醸成庫

2021年6月に兵庫県姫路市にリニューアルオープンしたばかりの、糀スムージーを販売する「cohareruya(コハレルヤ)」。銅の色味が引き立つ洞窟をイメージしたという店舗は、どこか厳かで神聖な印象を受けます。

銅板のキューブによって菌が浮遊する様子が表現されている店舗について、デザインを担当したarbol一級建築士事務所の堤庸策さんに、コンセプトやデザインの特徴などについてお話を伺いました。

■背景

姫路城近くの閑静な住宅地にリニューアルオープンした、店舗のファサードデザインを担当しました。店舗では定番商品「糀スムージー」をはじめ、糀を使った食品などをおもに手づくりで製造・販売しています(完全予約制)。

「cohareruya」という名前の由来は、「つながる、ともに」を意味する“co”と、「賛美、感謝、心を合わせる」の“ハレルヤ=hareruya”を結びつけ、「ともに、ココロハレルように」という想いが込められています。

■コンセプト

新しい店舗のコンセプトは、「糀菌が浮遊する洞窟の中の醸成庫」としました。

遥か昔より日本の歴史と共にある発酵文化。人類は、一定した温度と湿度の安定した洞窟で保存食を口にしながら暮らしを営んでいました。どっしりとした洞窟の中にあるさまざまなカタチの銅板のキューブは菌が浮遊することを連想させ、この世に存在する目には見えない微生物たちが持つ大きなエネルギーをイメージしました。

■課題となった点、手法、特徴

床・壁・天井のモルタルで覆われた空間に光り輝く銅板キューブが宙に浮いている様は、真っ暗な洞窟と洞窟から放たれる光の塊を彷彿とさせます。

洞窟と捉える空間の開口比率が1:2の近似値だったため、日本の伝統建築に見られるモジュール構成を採用。壁は縦横共に7分割し、どこか懐かしい日本の古き良き建築物の中で感じる佇まいをひっそりと表現しました。

また、モジュールごとに目地を入れた壁の一部は、バックヤードへの隠し扉になるよう配慮しています。

商品の受け渡し口は、銅板の反射を利用して内側から柔らかな光を放つことで、壁に浮かぶ銅板のキューブの中に立つスタッフと、商品へ自然と目がいくようにライティングを工夫しました。日没後には自然光の光とはまた違った表情を浮かび上がらせます。

銅板でできたクラフト感のあるキューブは植栽のカバーやベンチ、ペンダントライトと統一し、発酵のもとになる糀菌をダイナミックに表現しました。

あらゆる銅の仕上げは、工芸品作家や精密機械がつくり出す巧妙さとは違い、熟練の板金職人の手によりクラフト感を出しています。全体的に緊張感のある中にも、どことなく手仕事での優しさと丁寧さは、糀づくりにも通じるものがあり、共に暮らしの中で大切に繋ぎ伝えていきたい文化です。

神代の古(いにしえ)、そしてまだ見ぬ未来へとタイムスリップするように、四季の移ろいや月の満ち欠けを愉しむように、訪れる人々が、宇宙・自然に浮遊する糀菌に想いを馳せ、自然から送られた命の恵みが循環し、人々が健やかな暮らしを送れることを祈っています。

所在地 兵庫県姫路市平野町1 シャトラン白鷹1F
用途 店舗
面積 17.94m2
基本設計 堤庸策/arbol
実施設計・現場監理 堤庸策/arbol、株式会社大喜建設
照明 花井架津彦/大光電機株式会社
施工 株式会社大喜建設
植栽 株式会社安積創庭
撮影 下村康典