庵柔 An ju

重くて硬い建築から、柔らかく軽い建築の提案

デザインコンセプト
担当:香取慎吾+小嶋伸也、小嶋綾香/kooo architects

1つ1つは弱くて柔らかくて小さくて軽い物質たちが、集まり結束することで強い空間を生み出す。今までの硬い建築は、一度つくるとなかなか変えられないという“重さ”があった。ライフスタイルは日々変わるのに、その生活を支える器に柔軟性が全くなかった。

これからの未来の建築には、大きさも形も状況に応じて、自分たちの手によって手軽に変えられるような身近さがあると良いと思う。建築をつくるパーツも重く大きいものではなく、持ち運べる小さく柔らかいもので、洋服のように優しく包み込ように人を環境から守る強さを求めたい。

「庵柔 An ju」は、“柔らかい布で守る”という同じコンセプトの防災頭巾から着想した。透過性のある特注の防災頭巾を336個繋ぎ合わせることで、直径5.15m、高さ3.2mの大きさの“軽量材の組積造”、“柔らかいシェル構造”という一見矛盾のあるような構造形式を試みた。構造は高度な施工技術を必要としない施工性と、頭巾の柔らかな曲線美を保ったドームを目指すため、硬くて重い構造体フレームは頭巾に用いずに、頭巾内部の高反発性のあるクッション材を用いて、ジッパーと結束バンドで繋ぎ合わせていく簡易なものとしている。

重くて硬い建築が人々を守ると信じられてきた建築技術発展の歴史が、大地震の前で脆くも簡単に崩れ、それらの重い部材が地震による落下などの2次災害として人々の命を奪うという、本来安全をつくる建物が危険物に変わる危険性に対して問題定義し、柔らかく、軽い、特殊な施工技術もいらない、より人にとって身体的に身近な建築の提案だ。

また、アーティスト・香取慎吾の絵画を頭巾に転写することで、内部空間はアーティストの世界観で包まれる空間となる。独特の色彩を身にまとったその姿は、建築であり斬新な立体アートでもある。

設計 小嶋伸也、小嶋綾香/kooo architects
絵画 香取慎吾
会期 2018年5月24日~6月24日
場所 期間限定ギャラリー「NAKAMA de ART」(帝国ホテルプラザ1F)
Executive Producer 赤石賢/Nouvelle Vague
設計協力 金子宗一郎、斎藤しおり/Nouvelle Vague、磯野千紘(3Dモデリング)
構造設計 江尻建築構造設計事務所
照明演出計画 金子宗一郎/Nouvelle Vague
施工 Nouvelle Vague
撮影 堀越圭晋/エスエス