東京オペラシティ アートギャラリーで6月25日まで開催中の「片山正通的百科全書 Life is hard. . . Let’s go shopping.」。これまでにINTERSECT BY LEXUS(青山、ドバイ、予定:NY)やPASS THE BATON(丸の内、表参道、京都祇園)など数々のプロジェクトを手がけてきた、インテリアデザイナーの片山正通(Wonderwall代表)さんの膨大なコレクション500点以上を展示するものです。

art direction: Naomi Hirabayashi/photo: Mitsuo Okamoto
タイトルの「Life is hard… Let’s go shopping.」は、片山さんのショッピング遍歴を表わしつつ、“人生は大変、だからちょっと買い物に行こう”というタフな人生をポジティブに楽しむ意味で付けられました。

ワンダーウォール・オフィス・ツアー/会場入口で迎えてくれるのは、Wonderwallのオフィスの緻密な模型。オフィスの壁や棚などいたるところに今回展示されているアート作品や骨董などが並ぶ様子が再現され、オフィスの環境と結びついているのがわかる。
コレクターとしても知られる片山さんのオフィスには、ライアン・ガンダー、サイモン・フジワラ、村上隆などの国内外の現代美術 を中心に、ジャン・プルーヴェやシャルロット・ぺリアンらの家具、骨董、剥 製、多肉植物、書籍、CD、など500点以上が所狭しと展示されています。本展ではデザイナー歴25年の節目に、自身のコレクションを美術館という場にいかにディスプレイするかを通して、片山さんの関心の所在やクリエイションの本質を探ります。

ポスターなどのメインヴィジュアルとして使われたクレート(作品輸送用の箱)も会場に展示されています。実際に展示品が運ばれてきたような臨場感があります。
コレクション展というと一般的には年代や作家別に展示されることが多いように思いますが、本展では下記のテーマに分類して展示。片山さんの編集の視点を通した会場構成になっています。
○ワンダーウォール・オフィス・ツアー
○出版物
○音楽
○多肉植物
○人と動物
○白と黒
○アブストラクト・アート
○ランドスケープ
○山口一郎
○骨董、オブジェ、その他
○ミッドセンチュリー家具
○コンセプチュアル・アート
○剥製
○大竹利絵子
○KAWS
○松江泰治
○ポップアップ・ストア
多彩なテーマを見ただけで少しワクワク、一筋縄ではいかない展覧会だなという気がしませんか?ここでは「出版物」「多肉植物」「骨董、オブジェ、その他」「コンセプチュアル・アート」「剥製」「大竹利絵子」というエリアを抜粋して、フォトレポートします。
出版物

ブックギャラリーのように片山さんの蔵書が並びます。展覧会で書棚があるのはちょっと不思議な気分
多肉植物

広島の植物店・叢-Qusamuraとの出会いで、多肉植物の魅力を知ったそうです
骨董、オブジェ、その他
キリストの像や理科の実験で使われていそうな器具、アンティークの棚や国内外の作家の作品など、世界中のあらゆるところから集まったモノが一緒に展示されています。それぞれのアイテムや作品の年代や種類はバラバラですが、片山さんがどれも同じように大切に手元に置いておきたいという雰囲気が伝わってきます。

初めて見る展示にも関わらず懐かしさを覚える空間。片山さんの興味の幅の広さと共に、配置の妙や、エリアごとに異なる照明など、細部まで考え抜かれた展示が楽しめます。

動物の造形をを表情豊かに表現するアーティスト、ステファニー・クエールの作品。アンティークの家具にも慣じんで元からそこにいたかのようなサルやウサギのポーズが愛らしい
コンセプチュアル・アート
片山さんの現代アートコレクションには、コンセプチュアル・アートやその流れを汲んだ作品が少なくありません。コンセプチュアル・アートの代名詞ともいえる河原温。21世紀の今日にコンセプチュアルな作品を発表する、ライアン・ガンダーやサイモン・フジワラなど、さまざまな作家たちの作品が一堂に会します。

正面の壁の一番上にかかっているのは、川原温の「日付絵画」。そのまわりには村上隆や、ジョージェ・オズボルト、ジョナサン・モンクが日付絵画をオマージュした作品が掛かっています

日本人の父とイギリス人の母を持つアーティスト、サイモン・フジワラの作品
片山さんがコンセプチュアル・アートにはまるきっかけになったという、ライアン・ガンダーの作品は本展でいちばん見てほしいところ。ライアン・ガンダーは、普段の生活で遭遇する物事を素材に、オブジェやインスタレーション、絵画、写真、映像など、さまざまな表現手段を用いて作品を多くつくっている作家です。片山さんの価値観や、既成概念をゆさぶり、刺激を受けた作品を一堂に集め展示しています。

ライアンガンダー「Alchemy Box No.10.2 – Memorandum JB CH AG (Sister desert photo)」(左)、「Alchemy Box No.10.1 – Memorandum JB CH AG (Brother Box)」(右)。日本語で「錬金術の箱」というタイトルの作品(右)。箱の中に入っていると書かれているのは、ホテルの部屋に備え付けられている封筒や便せん、トランプなど日常的なものですが本当に入っているかは不明。また、同じ中身の箱がサンフランシスコ郊外に埋められており、その埋められた場所の写真(左)とセットになっています。そのモノが持つ「価値」は見る人の信じる力にかかっているという作品

説明書通りに組み立てると、リートフェルトの名作椅子(量産品)が出来ますが、何も見せずに子供につくってもらうと、思いもよらないおもしろい作品ができたというもの。ライアン・ガンダーの「Rietveld reconstruction – Ejiro」。 固定概念に縛られない子供の想像力と、物事の可能性を示唆しています。

彫刻家の飯田竜太とグラフィックデザイナーの田中義久によるアーティストユニット・Nerholの写真彫刻作品。写真右端は片山正通さん
剥製
ニューヨークやパリ出張の際には必ず剥製屋さんに行くという片山さん。国内でアンティーク家具を探しにいったときにたまたま見つけたというシロクマの剥製を筆頭に、キツネやアライグマがちょこんと置かれています。「なんでこんな形をしているのだろう?」「不思議な色の組み合わせだな」など、彼らを眺めながら自然の生命の圧倒的な造形と存在感について考えるのだそう。

展示室の角を曲がったところに出現する、シロクマの立像剥製
大竹利絵子
剥製の隣にいるのは、圧倒的な存在感を放つ、大竹利絵子の木彫作品。身長約2mもある少女の瞳や少し不気味な可愛らしさからは目が離せません。

ダイナミックな中にも可憐さを持つ、大竹利絵子の木彫作品。「In or Out」(左)、「Mirror」(右)
本展は、美術館で行われているかしこまった展覧会というよりは、「街でいろいろなモノを扱うお店に入って妙にわくわくした!」というような、ホクホクした気持ちにさせてくれる展覧会。観にきた人は必ず、自分がこれまで知らなかったおもしろい作家やアイテム、作品に出会えるでしょう。
取材・文:石田織座(JDN編集部)
会期:2017年4月8日(土)~2017年6月25日(日)
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
http://www.operacity.jp/ag/exh196/