見たい、知りたい!今月のイベント―2022年1月

見たい、知りたい!今月のイベント―2022年1月

少し時期が遅くなりましたが、JDN読者のみなさま、2022年もどうぞよろしくお願いいたします!

編集部がおすすめのイベントや展覧会をご紹介する本連載もスタートから3年が過ぎました。2021年は全部で374件のイベント情報をご紹介しましたが、毎日何かしら記事を更新しているので、数の多さから埋もれてしまうことも……。この連載では今年も変わらず、直近で開催しているイベントをまとめて紹介していきたいと思います。

今回は、日本にもファンが多いフィンランドデザインにフォーカスした展示や、100歳を超えてなお精力的に活動されている染色家の個展などのイベントを中心におすすめします!

建築のなかの文学、文学のなかの建築

2021年10月に早稲田大学早稲田キャンパス内にオープンした、村上春樹ライブラリー。もともと旧4号館だった同館の設計を手がけたのは、早稲田大学特命教授でもある建築家の隈研吾さんです。象徴的な流線形をした外観トンネルや階段本棚、家具や館内サインのひとつひとつにいたるまで、何度も話し合いが重ねられ、その都度、方向転換をしながら設計が進められてきました。

施設ができ上がっていく過程における「コミュニケーション」を探り、数々の製作者たちの作業の痕/製作者一人ひとりの存在を示すことを目指したという本展。展示は「イメージの源泉」「使い手の視点、館の在り方」「細部に宿る執念」「空間を構成する諸要素」と大きく4つのテーマに分けて紹介されます。

また、展示室には建築と文学にまつわる書籍も展示。文学の中の印象的な建築を巡ってみるのも楽しい企画展です。

会期:2021年10月1日(金)~2022年2月2日(水)
場所:早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)
https://www.waseda.jp/culture/wihl/other/415

ザ・フィンランドデザイン展 ― 自然が宿るライフスタイル

Bunkamura ザ・ミュージアムで1月30日まで開催されている本展は、豊かな自然と美しいデザインの宝庫として知られるフィンランドにフォーカスした展覧会です。

「大いなる自然を忘れない」という思想に裏付けられているという、フィンランドで長く使い続けられるプロダクトの数々。そのようなデザインに囲まれたフィンランドの人々は、大地からの恩恵を生活に取り入れるライフスタイルを愛してきました。

1930年代から70年代にかけて、今も広く知られるデザイナーや建築家、アーティストが登場し、彼らの活躍によって今日まで続くフィンランドデザインが確立されましたが、彼らのインスピレーションの源は、この国に広がる豊かな自然でした。

本展ビジュアル (オイヴァ・トイッカ《「ポムポム」花瓶》、セッポ・サヴェス《アンニカ・リマラ「リンヤヴィーッタ」ドレス、ヴオッコ・ヌルメスニエミ「ガッレリア」テキスタイルデザイン》、アルヴァ・アアルト《「サヴォイ」花瓶》)

本展では、ヘルシンキ市立美術館(HAM)監修のもと、マリメッコやフィンレイソンのテキスタイル、カイ・フランクのガラス工芸のほか、陶磁器や家具など、同時代にデザイン・制作されたプロダクトとともに、同時代の絵画などもあわせて展示。約250点の作品と約80点におよぶ関係資料のもと、時代を超えて愛される名品が生み出されたフィンランドデザインの歩みを紹介します。自然とともに生きる暮らしのなかで生まれた、フィンランドの人々の豊かな発想力と彩りにあふれる世界をお楽しみください。

会期:2021年12月7日(火)~2022年1月30日(日)
場所:Bunkamura ザ・ミュージアム
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/21_Finland/

企画展示「柚木沙弥郎 life・LIFE」

2022年でなんと100歳を迎える、染色家でアーティストの柚木沙弥郎さん。型染めで布に模様を大胆に染めた染色作品をはじめ、版画や絵画、立体、絵本など、70年を超す創作活動は今日も続いています。近年ではIDÉEや京都のACE HOTELとのコラボレーションを行うなど、世代を超えてその活動に注目が集まっています。

1月30日まで東京・立川のPLAY! MUSEUMで開催されている本展のテーマは、展覧会タイトルの「life・LIFE」からもわかるように、「くらし」と「人生」です。

「柚⽊沙弥郎 life・LIFE」展覧会ビジュアル

会場では、1990年代から手がける愉快な絵本作品の原画約80点と、紙粘土と布でつくられたユーモラスな約20点の人形たち、そして約50点の色とりどりの大きな布が織りなすダイナミックなインスタレーションが並びます。

長年精力的に活動されている柚木さんの作品から、「くらし」と「人生」を全身で感じ取れそうな本展。巡回展の予定はないそうなので、ぜひ早めに足を運んでみてください!

会期:2021年11月20日(土)~2022年1月30日(日)
場所:PLAY! MUSEUM
https://play2020.jp/article/yunokisamiro/

Sae Honda “Anthropophyta / 人工植物門”

オランダ・アムステルダムでコンテンポラリージュエリーを学び、コンセプチュアルでありながら、美しいジュエリー作品を発表している本多沙映さん。

彼女が、プラスティグロメレート(Plastiglomerate)という新種の石にインスピレーションを得て、街中に落ちているプラスチックゴミなどを材料とするアートプロジェクト「EVERYBODY NEEDS A ROCK」(2016~)で生み出した、唯一無二の色柄を纏った人工石の作品は、アムステルダム市立美術館に永久所蔵されるなど、国内外で評価が高まっています。

一方、もうひとつ彼女が興味を持った「造花」は、部屋の片隅や街角で水も光も求めず静かに佇み、天然植物のように科学的な研究や観察をされることなく、密やかに、そして確実に我々の日常の中で繁殖し続けています。そんな未開の植物群について彼女は、独自に身の周りの造花の採集・観察を始め、造花の工場が集まる中国・広州へと渡りました。

その後「造花が植物学上で正式に植物と認められた」という、架空のストーリーから始まるセミフィクションの植物図鑑『Anthropophyta / 人工植物門』を、2020年にtorch pressより刊行。

本展では、同書の世界観をさらに発展させ、突き詰めて造花の観察を記した写真作品や、造花を材料として扱い、立体作品に昇華させた最新作のオブジェクトシリーズのほか、アーカイブコレクションやジュエリー作品を展示・販売します。

プラスチックという現代社会における環境問題の観点からは忌避される素材に対しても、美意識を持って向き合う姿勢と豊かな想像力は、私たちに新たな視座を与えてくれるかもしれません。

会期:2022年1月14日(金)~2022年1月29日(土)
場所:(PLACE) by method
https://placebymethod.com/pages/anthropophyta

第14回 恵比寿映像祭「スペクタクル後」

映像領域と芸術領域を横断する国際フェスティバルとして、2009年より開催し、今回で14回目を迎える「恵比寿映像祭」。

映像分野における創造活動の活性化と、映像表現やメディアの発展を育み、継承していくことなどを広く共有する場となることを目指しています。

第14回となる今回は「スペクタクル後」をテーマに、19~20世紀にかけての博覧会や映画の歴史から現代にいたるイメージおよび映像表現について考察。現代作家による展示や上映、イベントに加え、映像作家でありキュレーターの小原真史さんをゲスト・キュレーターに迎えた博覧会関連資料と当館コレクションによる企画、気鋭の映像作家・遠藤麻衣子さんによるオンライン映画プロジェクト、さまざまな作品との出会いをひろげる教育普及プログラムなどが開催されます。

会期:2022年2月4日(金)~2月20日(日)
場所:東京都写真美術館、恵比寿ガーデンプレイス センター広場、地域連携各所 他
https://www.yebizo.com/

国内の新型コロナウィルスの感染者数が過去最多を記録するなど、また予断を許さない状況が戻ってきてしまいましたが、JDN編集部も基本の手洗い・うがいなど感染症対策を怠らず、イベントや展覧会に足を運びたいと思っています。来月もどうぞお楽しみに!

タイトルデザイン:いえだゆきな 構成:石田織座(JDN)