見たい、知りたい!今月のイベント―2020年11月

見たい、知りたい!今月のイベント―2020年11月

11月も半ばになり、冬の訪れを感じる季節になってきました。クリスマスを通り越しておせちなどのワードを見かけると気持ちが焦る時期ですね……。

今月は、アートブックからテキスタイル、グラフィック、写真、プロダクトなど多様なテーマのイベントをご紹介します。

VIRTUAL ART BOOK FAIR

東京都現代美術館の建物をインスピレーション源とした、バーチャル空間でのアートブックフェア「VIRTUAL ART BOOK FAIR(VABF)」が11月23日までオンライン上で開催されています。本イベントは、もともと東京都現代美術館で開催が予定されていた「TOKYO ART BOOK FAIR (TABF)」が、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から見送られ、“実験の時代”と捉えてDIY精神とユーモアあふれるオンラインフェアのかたちでの開催となったもの。

VIRTUAL ART BOOK FAIR メインビジュアル

同イベントでは、世界各国から集まったアーティストや印刷会社、ギャラリーなど約230組の出展者ブースが並び、レクチャーやトークショー、サイン会なども行われます。

また、今年のゲストカントリーであるオランダの出版文化を紐解く企画として、毎年同国の優れたデザインの本が選出されるアワード「Best Dutch Book Design」の2019年の受賞作品を紹介する展示や、オランダのアートブックシーンを牽引するデザイナーやアーティストらのインタビューとともに、彼らが影響を受けた本と手がけた印刷物を展示する「Dutch Artists’ Books: Then and Now」なども開催されます。

会期:2020年11月16日(月)~11月23日(月)
場所:オンライン
https://virtualartbookfair.com/

風景の色 景色の風 / feel to see

ファッションブランド「ミナ ペルホネン」のテキスタイルにフォーカスした展覧会が、東京・表参道のスパイラルで開催されています。

風景の色 景色の風 メインビジュアル

ファッションデザイナーの皆川明さんにより、1995年に設立された同ブランド。オリジナルの図案によるファブリックから服づくりをおこない、国内外の生地産地と連携し、素材や技術開発にも精力的に取り組んでいます。

本展は、同ブランドのテキスタイルの魅力とその可能性、デザインに込めたストーリーや背景をこれまでとは違うかたちで伝える展覧会です。展覧会特設Webページでは、皆川さんとスパイラル館長である小林裕幸さんによるクロストーク動画も公開。動画では、本展に向けてのそれぞれの想いや、コロナ禍という今の社会状況で感じていることなどが語られています。

会期:2020年11月7日~12月1日
場所:スパイラル
https://www.mina-perhonen.jp/exhibition/feeltosee/

食のグラフィックデザイン

生物の根幹をなす活動であり、自分という存在をつくり上げる基盤となる「食事」にまつわるグラフィックデザインにフォーカスした展示が、京都dddギャラリーで開催されています。

本展は、デザイナーたちが食の力を伝えるべく思い思いに腕をふるったポスターや雑誌などが展示され、そこに見られる表現を通して現代の食と人間との関係性を探るというものです。

食のグラフィックデザイン ポスター画像

ポスターをはじめとするグラフィックデザインには、時代を反映した多くの食の表象を見ることができます。戦後間もないころのチョコレートのポスターからは、甘いお菓子に対するあこがれや喜びが感じられ、野菜や果物そのものが美しく表現された作品には、大地への感謝や畏敬の念が含まれているかのようです。また、食をモチーフとして社会への問題提起をおこなうポスターからは、身近なものだからこそ心に刺さる表現が生まれます。

田中一光さんや永井一正さんなど錚々たるデザイナーの作品が並ぶ本展。「食」という生活に密接したテーマのため、グラフィックデザインに興味がないという方にも敷居が低く鑑賞することができそうです。

会期:2020年10月17日(土)~12月19日(土)
場所:京都dddギャラリー
https://www.dnpfcp.jp/CGI/gallery/schedule/detail.cgi?l=1&t=2&seq=00000769

本城直季 (un)real utopia

大判カメラのアオリを利用して、都市の姿をジオラマのように撮影する独特の表現で知られる写真家・本城直季さん。自身初の大規模個展が市原湖畔美術館で来年1月24日まで開催されています。

まるでミニチュアの世界のような感覚を想起させる本城さんの作品。この世界の実在と虚構を問いかけると同時に、“まち”や“ひと”を被写体とした作品からは、人間の営みへの作家の温かく愛おしげな眼差しを感じることもできます。

本城直季 small planet Tokyo, Japan 2005 © Naoki Honjo

small planet Tokyo, Japan 2005 © Naoki Honjo

本展は、2006年に第32回木村伊兵衛写真賞を受賞した「small planet」シリーズをはじめ、アフリカのサバンナを切り取った初公開シリーズ「kenya」や、住宅街の路地裏で長時間露光によって撮影された「LIGHT HOUSE」など約150点の作品を紹介。

さらに、開催美術館の“まち”を被写体とした本展のための特別な撮り下ろし作品も展示。写真家・本城直季の目を通して見る自らの“まち”の不思議を堪能できる展覧会です。

会期:2020年11月7日(土)~2021年1月24日(日)
場所:市原湖畔美術館
※20名以上の場合は事前予約が必要
https://honjonaoki.exhibit.jp/

現代日本のパッケージ 2020

社会と強く結びつきながら、日々試行が繰り広げられ、デザインや機能が進化している「パッケージ」。例えば、あらゆる人が使いやすいユニバーサルデザイン、地球環境に優しいエコロジーなど、一般にも馴染みのある社会的テーマはパッケージ制作の課題とも重なっているとも言えます。

印刷博物館のP&Pギャラリーにて開催されている「現代日本のパッケージ 2020」では、こうした時代のニーズや今後想定される解決すべき課題に対し、パッケージの現場で重ねられた取り組みの成果を知る機会の一つとして、日本で開催されている大規模なパッケージコンクールの受賞作を中心に紹介するものです。

消費者が直接手にするものから、普段はあまり目にすることのない輸送梱包など、展示されたさまざまな種類のパッケージを通じて、身近な存在でありながら、普段はなかなか深く知る機会の少ないパッケージのおもしろさに触れることのできる展覧会です。

会期:2020年10月10日(土)~12月6日(日)
場所:印刷博物館 P&Pギャラリー
※入館は事前予約制
https://www.printing-museum.org/collection/exhibition/g20201010.php

今月は5つのイベントをご紹介しましたが、施設によっては事前予約制のところもあるため、来館の前には必ず公式サイトのチェックをお忘れなく。

寒さに限らず空気の乾燥も手伝って体調を崩しやすい季節なので、気を引き締めていきたいですね。来月も編集部おすすめのイベントをご紹介するので、お楽しみに!

タイトルデザイン:石井嗣也 構成:石田織座(JDN)