2022年のグッドデザイン大賞が、子どもたちを地域みんなで支える取り組み「まほうのだがしやチロル堂」に決定

まほうのだがしやチロル堂(2022年度グッドデザイン大賞) まほうのだがしやチロル堂(2022年度グッドデザイン大賞)

公益財団法人日本デザイン振興会が主催する、2022年度グッドデザイン賞の大賞が発表された。受賞したのはアトリエe.f.t.、合同会社オフィスキャンプ、一般社団法人無限による「まほうのだがしやチロル堂」。

「グッドデザイン大賞」は、その年に受賞したすべてのグッドデザイン賞受賞対象の中で、最も優れたデザインと認められるものに贈られる最高賞。2022年度は、分野や領域を超えて⼈々の「意志」を互いに交わし、影響を与え合うことで新たな可能性を⾒出していく「交意と交響」をテーマに掲げて募集がおこなわれた。審査委員長に安次富隆、副審査委員長はパノラマティクスの齋藤精一が務めた。過去最多となる5,715件の審査対象の中から1,560件の受賞が決定。その中からファイナリスト5件が選ばれ、一般投票および最終審査により大賞1点が選出された。

大賞の「まほうのだがしやチロル堂」は、奈良県生駒市にあり、アトリエe.f.t.、合同会社オフィスキャンプ、一般社団法人無限による活動。貧困や孤独などの環境にある子どもたちを地域みんなで支える仕組みで、福祉活動の多くが「貧困」「ひとり親」など対象者を分類するなか、自分ごととして受け止めてもらうため誰もが来店しやすいよう「駄菓子屋」として場を開いている。

チロル堂では18歳以下の子どもたちは、1枚100円の店内通貨「チロル」を使って通常500円のカレーや軽食を食べられたり、駄菓子を購入することが可能。資金となる地域からの寄付は、大人の飲食代や少額のサブスクなど日常の延長で受け付けており、「支援対象を限定しない」と発想を転換することで、支援が必要な子どもたちにアプローチする機会と、大人が日常生活の延長で寄附をする機会の増加を同時に実現している。

受賞したアトリエe.f.t.の吉田田タカシは、「飛び上がりたいくらい嬉しい。チロル堂は後ろ盾のない地域のプレイヤーが集まってつくられている取り組み。審査員がしっかり見て評価してくれたことに感謝したい。チロル堂はサブスクなどの寄付のかたちで『魔法』をかけ続けてくれる全国の方々によって続いており、そういったみなさんの力で賞をとらせていただいた」と、コメント。チロル堂のポイントについて「デザインされていると意識せず、自然に入ってきてたまり場のように集まる場にしたいという思いでつくった」と説明した。

審査委員長の安次富は、「世の中にはよい取り組みはたくさんあるが、本作の画期的な点は店内通貨『チロル』だ」と語る。「子どもは1枚100円で『チロル』1~3枚の入ったガチャガチャを買い、『チロル』1枚でカレーが食べられる。従来の福祉は助ける側と助けられる側に二分されるが、『チロル堂』はその区別をなくす取り組みで、この新たな仕組みを高く評価した。今回票を投じてくださった人たちも、デザインの評価点をよく理解してくださっていたのではないかと思う」と、本作を講評した。

副審査委員長の齋藤は「うちの地元にもこれがあれば良いのに、と思われた方が多く、投票行動に現れたのではないか。こういう試みが全国に伝播していけば良いと思う」と述べた。

なおグッドデザイン大賞のほか、グッドデザイン金賞やグッドフォーカス賞など、グッドデザイン賞受賞作全点を紹介する「GOOD DESIGN EXHIBITION 2022」が、東京・六本木の東京ミッドタウン・デザインハブにて11月6日まで開催されている。

https://www.g-mark.org/award/