2021年度グッドデザイン賞大賞がオリィ研究所「遠隔勤務来店が可能な『分身ロボットカフェDAWN ver.β』と分身ロボットOriHime」に決定

2021年度グッドデザイン賞大賞がオリィ研究所「遠隔勤務来店が可能な『分身ロボットカフェDAWN ver.β』と分身ロボットOriHime」に決定

公益財団法人日本デザイン振興会が主催する2021年度グッドデザイン賞の大賞が発表された。受賞したのは、株式会社オリィ研究所の「遠隔勤務来店が可能な『分身ロボットカフェDAWN ver.β』と分身ロボットOriHime」。

その年に受賞したすべてのグッドデザイン賞受賞対象の中で、最も優れたデザインと認められるものに贈られる「グッドデザイン大賞」。2021年度は「希求と交動」をテーマに、審査委員長を安次富隆、副審査委員長をパノラマティクスの齋藤精一が務め、過去最多となる審査対象数5,835件の中から本年度のグッドデザイン賞として1,608件が選出された。

大賞の選出にあたっては、受賞候補として選ばれたファイナリスト5件の中から、審査委員とグッドデザイン賞受賞者、一般による投票が実施され、「遠隔就労・来店が可能な分身ロボットカフェ」が最多票数を得て決定した。

株式会社オリィ研究所の「遠隔勤務来店が可能な分身ロボットカフェ」は、「すべての人に社会とつながり続ける選択肢を」をテーマに、ALSなどの難病や重度障害などで外出困難な人々が分身ロボット「OriHime」を遠隔操作して働く常設実験カフェ。社会課題をテクノロジーによって克服し、外出困難な方の雇用の場をつくり、のちに他の企業へ就職するケースも生んでいる。2018年に協賛やクラウドファンディングによる大きな支援のもと初開催され、後に3回の出展を経て2021年6月に東京・日本橋にて常設実験店がオープンした。

受賞に際して、株式会社オリィ研究所代表の吉藤オリィさんは以下の通りコメントした。

「Orihimeは人工知能のロボットではなくて、SMA(脊髄性筋萎縮症)という難病で寝たきりの仲間が遠隔操作で会場に参加しています。私自身、昔病気をしていて学校に通えなかった経験から、もう一つの身体はないものかと思っていました。学校も職場も街も、世の中のほとんどが身体が動くことを前提にデザインされています。いずれ我々も健康寿命である70歳を迎え、平均寿命の80歳までの“健康ではない10年”をどう生きていくかということを、我々だからこそ考えることができるのではないかと、70人の“寝たきりの先輩”と分身ロボットカフェという実験を展開しています。

いまはメタバースやSNSといったオンラインでのコミュニケーション方法もありますが、たとえば遠足といった仲間と一緒に行きたい場所がリアルにある限り、そういった場所に参加していく選択肢をつくり続けなくてはならないと考えています。テクノロジーが進化していく中でさまざまな技術を使いながら、我々が自分らしく生きる選択肢や、寝たきりの先に憧れを持つことができる社会をつくる活動を続けていきたいと思っています」

また、安次富隆審査員長は今年のテーマである「希求と交動」と大賞について、「希求は、欲求や要求といった強い気持ちではなくて、請い願う気持ち、かすかな声というものです。コロナ禍で半ば強制的に行動が制限されていく中で、そういった小さな声を拾い上げていくことがとても大事なんじゃないかなと考え、このテーマにしました。OriHimeの試みは、まさに小さな声で社会で働きたいと希求してきた人たちの気持ちを叶えたところが優れており、それが共感を生んだのではないかと思います」と話した。

続けて齋藤精一副審査員長は、「ファイナリストのみなさんが、いろんな人を巻き込みながら社会実装する『交動』への取り組みをされていると思いました。イノベーションは目的ではなく手段であって、最終的にどういう人たちが喜び、どのように生活が変わるのかといった実装がされているかどうかが大事です。大賞を受賞されたオリィさんの取り組みによって、少子高齢化においても高齢者が働くことができる社会になっていく気がしていますし、10年後に振り返った時に、2021年を象徴する取り組みだったのではないかと感じると思います」とコメントした。

尚、大賞のほかにもグッドデザイン金賞として19件、グッドフォーカス賞として12件が選出されており、受賞デザインは10月20日から11月21日まで東京ミッドタウンにて開催中の「GOOD DESIGN EXHIBITION 2021」にて展示されている。

https://www.g-mark.org/activity/2021/results.html