デザイン・建築で生きていくための「武器」を身につける、ICSの学びのスタイル

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デザイン・建築で生きていくための「武器」を身につける、ICSの学びのスタイル

日本で最初のインテリアデザイン専門校として、1963年に開校したICSカレッジオブアーツ(以下、ICS)。インテリア、建築、家具のデザインを、実践的な学びを通して身に付けることができる同校は、日本で最も歴史のあるインテリア・建築・家具のデザイン学校ならではの業界との強い繋がりを活かした、長期間のインターンシップや就職指導などのキャリアサポートも充実しており、デザイン・建築の道に本格的に進みたい学生から、高い信頼と支持を得ている。

また、さまざまなバックグラウンドを持つ学生たちが通うのもICSの特徴のひとつだ。高校卒業後の進路として学びにきている学生だけではなく、一般大学卒業後に通いはじめた学生や、就職を経てデザイン・建築を学ぶひとも多く、例年海外からの留学生も増えている。

多様化する社会の中で、デザイナーや建築家として生きていく上で、ICSが実践する学びの特徴と魅力について、それぞれICSの卒業生であり、講師として教壇に立つ建築家の田辺雄之さん、株式会社アラキ+ササキアーキテクツの岡美里さん、今年から講師を務める株式会社I IN代表のインテリアデザイナー湯山皓さんの3人に話を聞いた。

制作課題とプレゼンテーションを通して、即戦力を身につける

––それぞれ卒業学科と、これまでの経歴をお教えください。

田辺雄之さん(以下、田辺):僕は2000年にインテリアを中心に家具から建築のデザインを幅広く学ぶインテリアデザイン科(現インテリア・アーキテクチュアデザイン科)を卒業後、ICSで教鞭を執られていた井坂幸恵さんがベネチアビエンナーレに出展される際にお手伝いしたことをきっかけに、井坂さんの事務所であるビルディング・エンバイロメント・ワークショップに入社しました。2002年からは働きながら芝浦工業大学大学院に社会人学生として通い、その後、2006年からロンドンのForeign Office Architectsで2年間働きました。帰国後、生まれ育った鎌倉で建築設計事務所を立ち上げ、いまに至ります。

田辺雄之<br /> 1975年神奈川県生まれ。2000〜2006年bews勤務。2006〜2007年文化庁新進芸術家海外研修としてFOAに在籍。2007〜2008年FOA勤務。2008年田辺雄之建築設計事務所設立。グッドデザイン賞や住宅建築賞など受賞多数。

田辺雄之
1975年神奈川県生まれ。1998年明治学院大学文学部フランス文学科卒業。2000年ICSカレッジオブアーツインテリアデザイン科卒業。2004年芝浦工業大学大学院工学研究科建設工学専攻修了。2000〜2006年bews勤務。2006〜2007年文化庁新進芸術家海外研修としてFOAに在籍。2007〜2008年FOA勤務。2008年田辺雄之建築設計事務所設立。グッドデザイン賞や住宅建築賞など受賞多数。

田辺さんが手がけたベーカリー&レストラン「沢村 旧軽井沢」

田辺さんが手がけたベーカリー&レストラン「沢村 旧軽井沢」

岡美里さん(以下、岡):私は2009年に家具製作や空間施工などのものづくりの技術を学ぶインテリアマイスター科を卒業しました。在学中に、非常勤講師をしていたアラキ+ササキアーキテクツ代表の佐々木のもとで、現場のアルバイトしていたのがきっかけで、卒業後に入社させていただきました。家具の企画制作や施工提案のほか、いまはオリジナル部材の「モクタンカン」を担当していて、建築業界や施主さんだけじゃなく、まちづくりをしている方たちや地域コミュニティと関わることが多いです。

岡美里
1984年東京都生まれ。2010年ICSカレッジオブアーツ インテリアマイスター科卒業。2010年株式会社アラキ+ササキアーキテクツ入社。建築設計事務所内で制作施工を担当。2017年よりICSカレッジオブアーツ非常勤講師。

湯山皓さん(以下、湯山):僕は岡さんと同じ2009年にインテリアデザインに特化して学ぶインテリアデコレーション科を卒業しました。大学は教育学部に通っていたんですが、同級生のほとんどが教師の道を進むことを決めていく中で、自分が教師になることに違和感を感じていたんです。そのときに、自分がこの先50年、60年生きていく上で、とにかくなにかのプロフェッショナルになりたいと思い、小学生の頃から模様替えするのが好きだったことに気がついたんです。同じ空間の中で、ものの配置を変えるだけで違う空間にすることができるプロセスがおもしろいなと思い、インテリアデザインを学ぶことにしました。

湯山皓
1985年東京都生まれ。2007年東京学芸大学教育学部、2009年ICSカレッジオブアーツ、インテリアデコレーション科を卒業。卒業後は株式会社ILYAで経験を積み、2012年〜2017年の間株式会社CURIOSITYに在籍。2018年I IN設立。

学校を選ぶ際に建築家の父に相談していたのですが、ICSで教えている講師陣の名前を見て「ここならおもしろい授業が受けられるんじゃないか」と助言をもらい、入学を決めました。卒業後は「ILYA」に入社しました。その後ICSの同級生と事務所をはじめたのですが、デザイン以外に時間を割かれることが多く、もっとデザインをする時間が欲しいと思い、グエナエル・ニコラさんが代表を務める「CURIOSITY」に入社しました。そこに6年在籍し、CURIOSITYの同僚と一緒に、2018年に現在の会社「I IN」を立ち上げ、商空間のデザインの仕事をしています。

湯山さんが手がけた、中国発の高級テーラーブランド「Genttio」の旗艦店

湯山さんが手がけた、中国発の高級テーラーブランド「Genttio」の旗艦店

––卒業後の仕事を通して、ICSの学びが活かされた場面などを教えてください。

田辺:卒業後に入社した最初の事務所では、入社してからしばらくはイベントの会場構成やリフォームなど、建築以外の案件を担当していて、自分たちでもものをつくる機会が多かったのですが、ICSを通してものづくりの技術が身についていたことがとても活かされましたね。

岡:私は、授業を通して工具や機械を一通り触ったことがあるという経験が、何より現場で生かされているなと感じています。どんな道具でもとりあえず動かし方はわかるので、即戦力につながる経験としてとても助かりましたね。

あと、現場で職人さんたちに「こういうものがつくりたい」と伝えたときに、職人さんからできないことについて指摘された場合に別の提案をすることがあるのですが、それは自分で考えたデザインをかたちにする課題を通じて、かたちとものの成り立ちについてわかる感覚を学べていたことが活きているのかなと思っています。

岡さんが手がけている、好きなかたちに組み立てる木の単管「モクタンカン」

岡さんが手がけている、好きなかたちに組み立てる木の単管「モクタンカン」

田辺:職人さんも仕事する相手が、知識があるとわかると「お、知ってるじゃん」という信頼につながりますよね。

湯山:ICSはインプットとアウトプットの機会がとてもあるのが特徴だと思うんですね。ILYA時代の同期は僕以外全員美大出身だったのですが、そのひとたちとも自然にデザインの話ができていたので、改めてICSで大量にインプットできたことが活きているんだと思います。身の回りにあるなんてことないものを真剣にみる機会もあれば、安藤忠雄さんなど名だたる建築家の特別講義を聞く機会も多くありました。

図面やスケッチ、CG、模型など、どんな手段でもそれをアウトプットするちからが2年間を通して身についたことは、仕事をはじめてからすぐに発揮できるなと感じました。デザインは、考えているものがあったとしてもなにかしらの形でアウトプットしないと生まれたことにならないので。

あと、インテリアデコレーション科は課題が具体的かつ実践的なことが特徴だと思います。ある意味、クラスの30人相手にコンペするような環境なので、プレゼンテーション力が磨かれましたし、卒業後の仕事に活きていると思います。また、他学科の先生方からも講評をいただく公開プレゼンテーションという機会が前期と後期に1回ずつと、卒業制作の発表の際にありますが、学科の先生によってさまざまな価値観の意見をもらえるのもとてもおもしろかったですね。

湯山さん

田辺:四年制大学の建築学科などでは、クラス内の数名の優秀者だけが発表するスタイルの授業だと思いますが、ICSでは毎回全員が発表する機会があるので、プレゼン力はつきますし、生徒たちの間でもライバル意識を持つことができるのが良いのではないかと思いますね。

また、多くの大学では一般教養過程があるため設計課題などの演習の授業が週1回で、半年間かけて1つか2つの課題を仕上げるのですが、ICSは週2回のDT(Design Tutorial)と呼ばれる講師による直接指導と、週1〜2回のスタジオと呼ばれるそれら課題に自主的に取り組める時間があり、半年で3つのデザイン課題を仕上げます。なので、経験値が多く積めるため、2〜3年の就学でもまじめに取り組めば、大学と比べても遜色ない実力を身につけることができるんですよね。課題ごとに評価する機会があるので、何がだめで何がよかったのかをその都度伝えることで、学生には自分の強みを見つけてもらいたいなと思っています。

湯山:僕が在籍していたときは半分くらいは海外からの留学生で、同級生から刺激を受けたことも印象に残っています。台湾や韓国の建築事務所の実務経験があった上で学びに来ているひとは、最初の課題からいきなり模型に照明を仕込んで光る模型を提出してきて、もうプロの仕事なんですよね(笑)。そういった刺激もいまの仕事に活きていますね。

田辺:僕たちの頃は一学年に留学生が数人くらいでしたが、いまは学生の半分ほどが留学生なので、この20年で環境も様変わりしたなと思います。留学生のなかには本当によく日本語を勉強し、デザイン力も高く優秀な学生もいます。そして彼らはハングリーでとことんやろうという精神がありますね。学生時代から幅広い国の人々と勉強している今の学生たちの成長が楽しみです。

業界で戦っていくための「武器」を見つける

––田辺さんと岡さんは現在ICSで講師をされていますが、どのような授業を実践していますか?

田辺:いま僕は1年生から3年生まで、それぞれの学年で授業を見ているのですが、1年生の最初の造形の授業で、生徒が自分にとっての「武器」を見つけるため、まずは他のひとと違う要素を探すように指導しています。たとえば、自分がどんな国のどんな家に住み、どんな環境で育ったのかを地図やスケッチで描いてみたりとか。すると、当たり前だと思っていた物事や空間認識、スケール感などについても気づくことができたり、「わたしとあなたの違い」が見えてきます。

学生たちには、いろんな答えがあるんだということをまずはわかってもらいたいんです。高校生までは、正解を習う教育を受けてきていると思うので、正解がないということに戸惑う学生も多いのですが、武器を見つけられないとこの業界では戦えません。武器を見つけるのを手伝うことが、僕たち講師の役割だと思っています。3年間を通して学生の成長をみることができるのは、僕たちもおもしろいですよ。

田辺さんが受け持つ1年生の造形課題「ルーツの翻訳」授業風景。 身の回りにあるものを使って頭部、あるいは身体の一部を覆う空間を作成し、自分の精神的なルーツを具体的な空間に翻訳することで、他者にも体験してもらう授業。

田辺さんが受け持つ1年生の造形課題「ルーツの翻訳」授業風景。身の回りにあるものを使って頭部、あるいは身体の一部を覆う空間を作成し、自分のルーツを具体的な空間に翻訳することで、他者も体験できるものをつくる授業。

岡:私は非常勤講師として教えはじめてから3年目です。卒業制作と素材研究の授業を担当しています。ある年では、「なにをやりたいのか」や「なぜそのデザインにしたのか」などを、毎回クラスで全員に話してもらっていました。クラスには、考えることは得意でもかたちにできない学生や、逆にアイデアを出すのは苦手なんだけどかたちにしていく作業が得意な学生がいて、それぞれが制作過程で誰かに「いいね」と褒めもらえたりすることで、制作への自信を身につけることができるんですよね。モックアップや試作をつくって、すぐにみんなから意見をもらえる環境はICSならではだと思います。

––湯山さんはこれから講師としての仕事がはじまります。

湯山:2019年11月から担当するデザイン課題がはじまりますが、講師と生徒がきちんとコミュニケーションをとることで、学生たちが自分たちのアイデアを自由に出せるような環境をつくれたらいいなと考えています。自分のアイデアに自信が持てなかったり、いろんな理由で世に出ないものがあるのはもったいないなと思うので。既成の考え方とかを取っ払えるような機会がつくれたらいいなと思っています。

田辺さん

田辺:僕は今年で教えはじめて5年になるのですが、授業で話していると自分がフィルターのようになっているんだなって思うんですよね。つまり、自分が学生のときに教わっていたことをそのまま話しているというか。しゃべり出したら口が勝手に動いていて、次から次へと教わったことばが出てくるんですよ。それは社会に出てから大事だなと感じたことだからこそだと思いますが、ICSの学びがきちんと伝えられてきたということだと思うんですよね。僕も講師という仕事を通して、ICSの学びを伝える役割になれているのかなと思っています。

昨年度の卒業式の際に、ICSの創立者である柄澤立子先生が、55年前の創立時、インテリアデザインの学校に建築家の講師をそろえたのは、上辺だけの様式ではなく、自分で空間をつくることができるインテリアデザイナーを育てるためなんです、というような内容のお話をされていました。それを聞いて、いま自分が建築家として取り組んでいる仕事に対してすごく納得したんですね。創立時からずっと続いているICS独自の学びのスタイルは、この学校の強みなんだと思います。

これからの時代、デザイン・建築の仕事に必要なこと

––これからデザイン・建築を仕事にしていくために、ICSで学んで欲しいことはなんでしょうか。

田辺:AIの影響は建築業界にもおよんでいて、合理性や効率に重きをおいた建築設計をするためにAIが導入されはじめています。今後そうした建物の設計には人が不要になったときに、自分のアイデンティティや武器がさらに重要になっていきます。それを見つけるには、社会の中で当たり前に出回っているものや、美しいとされるものを疑う視点が必要だと思います。

岡:ものを見ずに写真だけで判断するひとが増えているのを感じていて、ものづくりに携わろうとするなら、きちんとその先に踏み込むということや、正しくものを判断する目、ちからを養ってほしいと思っています。デザインにどんな理由があるかを知ってほしいし、興味を持つことが強みになります。そして、いまの時代は自分の情熱や好きなものをきちんと発信できることが強みになるので、伝えるためのことばも同時に学んでほしいなと思っています。

湯山:デザインに関する情報があふれている中でも、いままで見たことがないものをつくろうという気概を持ってほしいと思いますね。そのためには、いろんな人と話したり、デザイン業界以外のひととコラボレーションすることで世界を広げたりすることもひとつの手だと思います。ICSで、学生のうちからコラボレーションすることの楽しさや可能性の広がりを体感して、その感覚を持ち続けて欲しいなと思っています。

湯山さん、岡さん、田辺さん

文:木村早苗 写真:木澤淳一郎 取材・編集:堀合俊博(JDN)

■IFFT/interior lifestyle living出展

ICSでは毎年、学生のデザイン・製作によるブースで出展しており、昨年のブースデザインは日本インテリアデザイナー協会が主催するJID AWARD 2019にて、NEXTAGE部門の部門賞を受賞。2019年のブースデザインは提携している台湾の大葉大学 空間デザイン学科の学生との共同デザイン。

2018年のブースデザイン

2018年のブースデザイン

日時:2019年11月20日(水)~ 11月22日(金)
場所:東京ビッグサイト 南展示ホール 1F-04

ICS カレッジオブアーツ
〒152-0022 東京都目黒区柿の木坂1-5-6
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