ラジオ局が本気でつくった、新しい体験を生む『Hint(=気配)』という名前のラジオ

ラジオ局が本気でつくった、新しい体験を生む『Hint(=気配)』という名前のラジオ

まだ発売前だが、これから新しい体験をつくっていくかも知れない製品を紹介したい。

クラウンドファンディングサイト『CAMPFIRE』で、目標金額を大きく上回る3045万円以上の資金を集め、234%の達成率を記録するプロジェクトとなった「ラジオ局が作る本気のラジオ 『Hint(ヒント)』」。1000人をゆうに超える人たちから支援されたプロジェクトは“ラジオ”だった、この事実はけっこう驚くべきことではないだろうか?『radiko』の普及以降、また少し身近になったラジオというメディア。しかし、ただそれだけではこの支持の熱量は説明できない。大きな期待を集める『Hint』はどのようにして生まれたのか?開発に携わった、Cerevoのプロダクトマネージャー・柴田健士さんにお話をうかがった。

「とにかくカッコいいラジオをつくろう!」
熱いラジオ愛からスタート

「カッコいいラジオが欲しい」 。ニッポン放送アナウンサー吉田尚記さんがつぶやいたこの一言から『Hint』はスタートした。 ニッポン放送、成長著しい家電ベンチャー企業のCerevo、フィギュア業界をリードするグッドスマイルカンパニー。分野の異なる3社が、改めてラジオというメディアを1から見つめ直し開発を重ねていった。

柴田健士さん(以下、柴田):吉田さんがとにかくラジオ愛が強い方で、彼の「カッコいいラジオが欲しい」という思いが原点にあるわけですが、「かっこいいラジオ」を目指していく前に、まず「ラジオってなんだろう?」というところから考えていく必要がありました。話し合いを重ねていくなかで、ラジオのラジオらしさ、それは“気配”なんじゃないかという話になりました。すごく身近な存在なんだけども、ラジオ側からガツガツいってこなくて、そこにあっても煩わしくない。それは、ちょっとした“気配”なんじゃないかと考えました。その気配を英訳した、「Hint(ヒント)」、という言葉から新しいラジオ考えるきっかけになりそうだなと感じました。

本体デザインおよび音響面を担当したのは、グッドスマイルカンパニーの変形ヘッドフォン『THP-01』のデザインを手がけたメチクロさんです。サイズ感は生活の中で扱いやすい、ワインボトルと同じくらいの大きさにしようということになりました。これぐらいの大きさにしたときに、あまり重すぎるのも問題だし、あまり軽すぎて安っぽく見えるのもかっこわるい。安っぽくならない素材を使い、かつ重すぎもせず軽すぎもしない、ちょうどいいところに最初から落とし込めていった感じですね。その点はすごく上手くに進んだなと感じます。

『Hint』はニッポン放送技術部監修の元、人の声が心地よく聴こえるように設計しています。無指向性スピーカーを内蔵しているので、360°どこに居ても同じ音が飛んでくるんですね。近くで聴いても遠くで聴いてもクリアに響きます。『Hint』の“気配”の部分でいうと、生活のなかで馴染むような光の演出もしました。ちょっとした照明のような、かといってこれ自体が主張しない、ラジオのときは緑に光り、Bluetoothスピーカーのときは青に光って、インジケータとしてわかるようにしています。

DTMF音でさまざまな情報が届く
新しいラジオとのコミュニケーション

『Hint』のおもしろさは、そのコンセプトとデザインだけではない。ラジオとのつきあい方を大きく変えるような、革新的な機能「BLEビーコン」が搭載されている。放送局がDTMF音(電話のダイヤル音)を発信すると、自動的に情報を『Hint』がキャッチ。受信情報はBLEビーコンを通してスマートフォンへ自動転送される。(※現時点ではニッポン放送からのデータ情報は発信していないが、将来的に同機能を活用した放送展開を予定、検討している)

柴田:ピポパ~♪のDTMF音を送ってURLを飛ばす、それだけでいろんなことに使っていただけます。例えば、気になる音楽が流れたときに、これまではアーティスト名をがんばって覚えたり、検索しないといけないんですけど、そういうことをしなくても関連した情報のURLがBLEビーコンを通してスマートフォンに届きます。それはラジオショッピングでもそうですし、グルメ情報みたいなものでもそうです。いままでは、どうしても能動的に検索しないといけなかったところを、『Hint』があればURLを直接届けられて、タッチするだけで情報にアクセスできる。いままでとは違うラジオとのコミュニケーションが図れるんです。

例えば、パーソナリティーの人がアンケートをつくって、「いまからリスナーにアンケートを実施します!」と言って、リスナーにアンケートを配ることも可能です。あと、防災という意識もあります。「避難地域はこちらです」とDTMF音で位置情報だけ送って、その位置情報をタッチすれば、スマートフォンの地図アプリで位置情報が出るので、そこまでのルートを見てもらうとかの応用も可能ですね。

もちろん『Hint』をラジオとしても普及させたいんですけど、この機能だけでも町おこしみたいな取り組みとか、イベントやセミナー会場で使うとか、そういう利用もできるんじゃないかと思っています。お店の前に『Hint』を置いておいて最新情報のURLを飛ばすとか、セミナーでスピーカーとして使って「これから今回のプログラム配ります」と、みんなのスマートフォンに今日のプログラムが届くとか。そういうさまざまな用途にも使っていただきたいですね。

最後に、クラウドファンディングで目標額を達成した感想、そして『Hint』のこれからの展開についてを教えてもらった。

柴田:目標額を達成したときは、やっぱりテンションは上がりましたね!『CAMPFIRE』は開発費がきちんと集まったら支援されるというものなので、そういう意味では私たちが設定した開発費の1300万円は、クラウドファンディングではかなりの高額でした。それを達成しなかったらそもそも開発費は出ません。クラウドファンディングをマーケティングの一環として使う方もいらっしゃいますが、私たちは本当に必要な制作費としてこの金額で勝負しました。想定以上にどんどん支援の輪が広がっていったのすごく嬉しかったですね。

Cerevo プロダクトマネージャー 柴田健士さん

Cerevo プロダクトマネージャー 柴田健士さん

私たちはこれまでにも10件くらいクラウドファンディングをやってるんですけど、今回大きかったのはプロモーション面ですね。ニッポン放送さんから「情報を出せるなら何でも出してください」と言われていて、最初の1か月間はずーっと情報発信していただいのが響いていって、後半の1か月の伸びに繋がったのかなと思います。

自分たちもでニコ生とかでネット配信の番組をやったりもしました。一時期は毎週金曜日に必ずやってましたね(笑)。開発メンバーがユーザーの意見をお聞きするカタチだったので、「音質の部分でココをもっと良くした方がいい」など、いただいたコメントを開発にも反映していきました。そうやって改良を重ねていくと、インターネット越しでも「ちゃんと音質が良いのがわかった」と言っていただけました。ものづくりをする身としても、こんなにわかりやすくダイレクトにリアクションをいただけるのは素直にありがたいなと思いましたし、そういうユーザーの声の積み重ねがちょっとずつ詰まっているという感じですね。

価格に関してもできるだけ抑えて、多くの人に興味をもってもらえるように設定しました(税込21,500円)。というのも、単にラジオやBluetoothスピーカーをつくったわけではなく、たくさんの人にBLEビーコンが普及してくれないとあまり意味がないんですね。ラジオを聴いたらURLが飛んでくる、そういう新しい体験を多くのユーザーにしていただきたいと思っているので。

ラジオ局が作る本気のラジオ「Hint(ヒント)」
http://www.yoppy.tokyo/hintradio/

構成・文:瀬尾陽(JDN編集部)