2015/12/24 UPDATE
24時間、365日、片時も休まず気象情報を提供し続ける株式会社ウェザーニューズ。同社が始めた社内保育園「WNIレインキッズハウス」は、オフィスがあるビル内で運営される、異なる年齢を対象とした保育施設です。このプロジェクトの企画・設計を担当した乃村工藝社の3名に制作コンセプトや、Vectorworksを活用した効率的な仕事術について語っていただきました。
作業効率アップのために、Vectorworksだけで完結する
金子:もちろん、このWNIレインキッズハウスのプロジェクトにも、使い慣れたVectorworksを手に臨みました。図面だけではなく、パースや企画書に添えたビジュアルすべてを内製しました。図面を描くと、それをそのままプレゼン用データに生かせるのがVectorworksです。だからこそ大幅な効率化をはかることができます。
- WNIレインキッズハウス 平面図
金子:もしパースを外注するとしたら、自分ですべてを仕上げるよりも早めに図面を完成させて、外注先に渡さなければいけません。その段階では十分に図面を煮詰め切れていない場合もあるかもしれないし、納品されたパースへの修正がかさんで時間をロスする可能性だってあります。だとしたらギリギリまで自分の手元で図面をアップデートし、自分でパースをレンダリングしながら最短で進めたい。
もっと言うと、かつてはパースが上がった後に他のグラフィックソフト上で影を付けたり、文字要素を添えるといった作業を経てプレゼン資料を完成させていましたが、今ではこれもVectorworksだけでカバーできます。色んなソフトを行き来せず、ひとつで完結できるからスピーディ。そのあたりも私がVectorworksを好んで手にする理由です。
- 金子睦氏
思いのままに描けて、他のソフトからの乗り換えも簡単
松本:以前は異なるCADソフトを使っていたのですが、社内の標準CADソフトがVectorworksに変わったときに初めて触れて「何て描きやすいんだ!」と感動したことを覚えています。この「思いのままに描ける」という感覚は、意匠を突き詰めていく私のようなデザイナーにはぴったり。曲線だろうと壁だろうと何でもスラスラ描けます。おそらく他のCADソフトでCADをある程度知っていれば正味1カ月くらいで使いこなせるでしょう。金子の話にも通じますが、クライアントに「どんな空間なのか」を説明する資料を容易に作れるのも強みですよね。この「クライアントにわかりやすい」というプレゼンテーションの考え方は昔から一貫しているのですが、Vectorworksによってさらに加速された感じがします。
- 松本麻里氏
- シンボルとなった傘の図面
デザイン主担当でも家族のために残業はしない。Vectorworksのおかげです
金子:前述の通り、私がVectorworksを手にひとつの図面であらゆる提出物をまかなうワークスタイルにシフトしたのは、育休より復帰後、働き方の効率をあげて残業をしないようになってからです。限られた時間で、いかにデザインの主担当を任せてもらうか。この目標を達成するにはVectorworksをフル活用しながら、ギリギリまで生産性を高めるしか手はありませんでした。
私のVectorworksの作業画面を見ると、多くのデザイナーは驚きます。いつも平面図の四方に、東西南北4つの立面図を配置している他、古いバージョンの図面もその周囲にズラリ。一見すごく描き散らされているように映ります。しかし図面はシートレイヤ(※1)でまとめているので、しっかり整理されている。いうなれば「複雑に整理」されている状態ですので(笑)、引き継ぎも問題なく行えます。そもそも小さな子どもがいる私のようなデザイナーにとっては、いざというときに引き継ぎしやすいことは絶対条件です。常に「自分にしかできない仕事をなくす」を心がけていなければ、急遽休まざるを得ないピンチのときに同僚の手を借りられませんからね。
- 金子氏の作業画面(キャプチャー画像)

保育園づくりは、すてきな未来を創る仕事
磯﨑:世の中では、まだまだ待機児童の問題すら解決しておらず、多くの保護者は保育園に入れられたら御の字。気に入った保育園を選ぶというレベルには達していません。「この保育園の教育理念が好きだから、ここに通わせたい」という話には至っていないわけです。しかし今回のプロジェクトでは、私たちなりに「こういう保育園があったらいいのに」を生み出すことに携わることができました。また、クライアントから「社内でさまざまなテーマやコンセプトを議論したが、その過程を含めうまく形にしてくれた」と、言っていただけたことは嬉しかったですね。

金子:世の中としても保育園を整備していく方向に向かっている現在は変革に向けたチャンスです。魅力あふれる保育園が増えることで、豊かな子どもたちがもっと増えてくれたら素敵ですよね。保育園を選べる社会が次なるステップだとしたら、今回のプロジェクトはそれに向けたファーストステップ。私たちとしてもかけがえのない経験になりました。

※1…各レイヤに描いた平面図や立面図、断面図、詳細図などの図面情報を、一枚のシートにレイアウトするためのレイヤ。写真やロゴ、文章と組み合わせて、Vectorworks上でプレゼンボードを容易に作成可能。また、ビューポートの機能により、図面を修正した場合には変更内容が反映されるため、作業効率の向上がはかれる。
Vectorworksの2D/3D基本作図機能を搭載したベーシック汎用CAD「Vectorworks Fundamentals」、建築・BIM支援CAD「Vectorworks Architect」、造園や緑地計画用の「Vectorworks Landmark」、舞台計画やステージ&ライティング計画などに適した「Vectorworks Spotlight」、全ての機能を搭載した最上位版「Vectorworks Designer」シリーズが用意されており、利用用途に合わせてお選びいただけます。
http://www.aanda.co.jp/Vectorworks/
エーアンドエー株式会社(A&A Co.,Ltd.)
TEL:03-3518-0131(営業部)
FAX:03-3518-0122
http://www.aanda.co.jp/