Vectorworks(ベクターワークス)ユーザー活用事例レポート Koizumi Studio・小泉誠

Vectorworks(ベクターワークス)ユーザー活用事例レポート Koizumi Studio・小泉誠

2014/04/16 UPDATE

住宅の建築設計から、展覧会場構成、店舗設計、家具、テーブルウェアや生活に関わる身の回りのプロダクトまで、小泉誠氏が手がけるデザインは多岐にわたります。常に人を中心とした心地よい空間のための構想が生まれるのは、小泉氏のスタジオであり、デザインを伝えるショップ「こいずみ道具店」(JCDアワード2013金賞受賞)。工房が併設された“ものづくりの現場”で、デザインとVectorworksについて話を伺いました。

VOL.1 南部鉄鍋のデザイン

小泉誠(こいずみまこと)
小泉誠(こいずみまこと)
1960年東京生まれ。デザイナーの原兆英・原成光両氏に師事した後、1990年Koizumi Studio設立。箸置きから建築まで生活に関わる全てのデザインを手掛ける。2003年にはデザインを伝える場として東京の国立市に「こいずみ道具店」を開きリアルなデザイン活動を展開。2005年より武蔵野美術大学空間演出デザイン学科教授。
http://www.koizumi-studio.jp/

製造現場を見て、工程を知る

ちょうどいま、岩手県の鋳造工房と南部鉄鍋の開発を進めています。鉄器といえば鉄瓶が定番ですが、そこから脱却した鉄器をデザインしたい、と取り組み始めたのは7年ほど前のことでした。鉄の特徴である“重さ”を機能に活かした商品を作ろう、と考えた「tetu」シリーズ。テープカッターやブックエンド、ペーパーウェイトなどが商品化されています。その後、改めて鉄瓶の文化に立ち戻り、現代の生活空間にふさわしい鉄瓶を発売しました。そして今回は新しいラインナップとして、3サイズの鉄鍋をデザインしています。

新しいデザイン、特にプロダクトデザインに取りかかる時には、必ず製造現場を見学し、製造工程をきちんと知ることから始めます。ただ単にきれいな形を作るのは、デザイナーなら誰でもできること。不合理な形になってしまえばコストが上がるので、そこで無理してもしょうがありません。製造工程をきちんと知り、良いところと不要なところを見極めていくことが、かなり重要ですね。そこから必然的な形も見えてくるし、ルールができてくる。逃げることなく、仕事がしやすい形を目指しています。

「tetu」シリーズ、鉄瓶、テープカッター、ブックエンド、ペーパーウェイト
「tetu」シリーズ、鉄瓶、テープカッター、ブックエンド、ペーパーウェイト

磨きの工程を活かすことが機能性にも結び付く

鉄鍋は多くの鋳物と同様、砂型に溶かした鉄を流し込んで固めて製造します。鉄を流し込む部分を湯口と呼び、その湯口からあふれた鉄を削り落として、滑らかに研磨するわけです。この工程を無駄なく、しかも見た目良く仕上げられるようにデザインしたのが、現在検討中の鉄鍋3種類です。

これらの鉄鍋では、鍋の縁を折り曲げて、そこを湯口にしました。グラインダーを縁にぐるりとあてるだけで、バリの削り落としと研磨ができます。また、折り曲げた縁と取っ手を同じ面にすることで、取っ手部もこの一つの工程で仕上げることができます。鍋の外周と取っ手の境目は、グラインダーが入りやすいRにデザインしてあります。この折り曲げは、料理を皿へ移すときの液だれを防ぐ役割も担っています。鋳物は厚いと重くなり取り扱いが難しくなりますし、原料も多く必要になります。今回は、湯が通って(注:液体の鉄が流し込めて)強度が保てる3.5ミリに設計しました。こうした工夫の積み重ねで「デザインしたから高くなった」と言われることも防げますし、鉄器ならではの磨き仕上げを活かす形を見つけることができたのではないかと考えています。

空間の仕事も多いので、Vectorworksは日常的に使っています。今回のようなプロダクトでも同じようにVectorworksで仕事を進めます。試行錯誤の過程で、ラフな図面を書く段階から登場することが多いですね。当たり前かもしれませんが、Vectorworksで作図することで寸法が明らかになります。アバウトだった数字が正確になることで、図面を見て頭に描く完成形の精度も上がるように思います。

Vectorworksの図面
Vectorworksの図面
この小さな縁の折り曲げが、デザインの鍵となった
この小さな縁の折り曲げが、デザインの鍵となった

A&A いいものは使おう。無いものは創ろう。

INDEX

南部鉄鍋のデザイン

VOL.1

南部鉄鍋のデザイン

3Dプリンタによる実寸モデル

VOL.2

3Dプリンタによる実寸モデル

商品情報

Vectorworksの2D/3D基本作図機能を搭載したベーシック汎用CAD「Vectorworks Fundamentals」、建築・BIM支援CAD「Vectorworks Architect」、造園や緑地計画用の「Vectorworks Landmark」、舞台計画やステージ&ライティング計画などに適した「Vectorworks Spotlight」、全ての機能を搭載した最上位版「Vectorworks Designer」、さらに各シリーズには、高品位レンダリングと関連するビジュアライズ機能を搭載した「with Renderworks」シリーズが用意されており、利用用途に合わせてお選びいただけます。
http://www.aanda.co.jp/Vectorworks2014/

企業情報

エーアンドエー株式会社(A&A Co.,Ltd.)

TEL:03-3518-0131(営業部)
FAX:03-3518-0122
http://www.aanda.co.jp/