Vectorworks(ベクターワークス)ユーザー活用事例レポート 株式会社 乃村工藝社

Vectorworks(ベクターワークス)ユーザー活用事例レポート 株式会社 乃村工藝社

2015/12/24 UPDATE

24時間、365日、片時も休まず気象情報を提供し続ける株式会社ウェザーニューズ。同社が始めた社内保育園「WNI RAIN KIDS HOUSE(呼称 WNIレインキッズハウス)」は、オフィスがあるビル内で運営される、異なる年齢を対象とした保育施設です。このプロジェクトの企画・設計を担当した乃村工藝社の3名に制作コンセプトや、Vectorworksを活用した効率的な仕事術について語っていただきました。

VOL.1 ワーキングマザーの気づきを散りばめた保育園

WNIレインキッズハウス

ウェザーニューズらしく、ポジティブに「雨」を扱う

磯﨑隆司氏(以下、磯﨑):雨を楽しもう。これが「WNIレインキッズハウス」の制作コンセプトです。風雨・雲・雪といった気象を引き起こす元となる「雨」をシンボルに据えたのは、天気に関わるウェザーニューズだからこそ。

今回の施設の企画・設計に際してはウェザーニューズより「WNIレインキッズハウス」の名称とともに、雨をネガティブなものと捉えるのではなく「雨の日に傘を差し出すような優しい子どもが育ってほしい」というポジティブな願いが込められていることも伺いました。ほかにもWNIレインキッズハウスの「RAIN」のアルファベットには、「Respectful(感謝の気持ち)」「Adventurous(冒険心)」「INdependent(たくましさ)」という意味も含まれています。

磯﨑隆司(いそざき・たかし)
磯崎隆司(いそざき・たかし):株式会社乃村工藝社 CC第二事業本部 アカウント第二事業部企画開発2部 企画プロデュースルーム、プランナー。子供や家族を対象としたコミュニケーション課題に対して、施設づくりやイベント、ワークショップなど、手段に囚われないニュートラルなスタンスで企画、提案を行っている。

金子睦氏(以下、金子):このコンセプトから生まれたのが「傘」をシンボルに用いたロゴマークです。同じく保育園の広場の真ん中にはシンボルとなる「傘」を配しました。子どもたちにとって傘は雨を受けとめる楽しいアイテム。ウェザーニューズの傘の下、つまり園児もこの会社の一員であるというメッセージでもあります。「傘の下に集まって」と呼びかける際の目印にもなるし、何より子どもたちが「僕たちの保育園には背丈よりも高い傘があった」と思い出せるような楽しいシンボルを用意したかったんです。

金子睦(かねこ・むつみ)
金子睦(かねこ・むつみ):株式会社乃村工藝社 CC第一事業本部 クリエイティブ局 デザイン1部 第2ルーム、デザイナー。エンターテインメント業界やIT企業の展示会ブース、イベントの空間デザインをおよそ10年間担当。育休より復帰後、暮らしや子供に関わる案件の企画とデザインを多数手掛けている。
WNIレインキッズハウスのロゴ
WNIレインキッズハウスのロゴ

ウェザーニューズの仕事への理解を促す、というミッション

磯﨑:今回は「ウェザーニューズにある保育園」を体現することも大切なミッションでした。「社内にある」ということは保護者にとっては送り迎えがしやすいという利便性につながります。「近くにいるから安心」という意味でも圧倒的なアドバンテージ。しかしそれ以外で、いかに社内にある意義を示せるか。そこで、両親が天気に関する仕事に携わっていることを感じられる保育園にすることにしました。床に天気図のデザインを採り入れたのは、そのためです。内装のモチーフには雨や傘も使っています。子どもが親の仕事を理解し、親の仕事に対する憧れを感じてくれたら、親も子どもを保育園に預けるときにあまり後ろめたさを感じずに済むかもしれません。そこまで達成できたら、企業内に保育園を設ける意味はグッと高まりますよね。

床に描かれた天気図は、ウェザーニューズの創業日の天気図だという
床に描かれた天気図は、ウェザーニューズの創業日の天気図だという

限られたスペースを、什器をつかって有効活用する

金子:ウェザーニューズのあるビル内に作られる保育園とあって、「園庭を設けられない」という制約があったことが今回の課題でした。同じく課題になったのは、0歳児の保育から、小学校6年生の学童保育にまで対応すること。ここまで幅広い年齢をひとつの施設でケアするのは珍しく、これだけの異なる年齢が一緒になるからには子どもたちの衝突を避け、それぞれの生活リズムが乱されないように空間を仕切る必要があります。そこで時間帯によってエリアのパーティションとなる什器を動かせるよう、ほとんどの什器を固定ではなく可動式にしました。

タイムシミュレーション図
タイムシミュレーション図

金子:こうして異なる年齢の子ども、異なる遊びをする子どもが安全に同居できるように設計したわけですが、これならパーティションとなっている什器を移動すれば、ビル内であっても広い空間がとれます。園庭がなくても少しくらいは運動もできます。

安全のためには区切ることも大事ですが、「等圧線の丘」(下写真参照)には異なる高さの段差を設けることで、自然と行動にブレーキがかかるようにしました。最初の段が45センチ、次が35センチ、次が30センチ。段差と奥行きが一定ではないため、普通の階段とは違い、のぼっていてリズムが生まれず、勢いが抑制される仕掛けです。単に「場を区切る」「角を丸める」「怖いものをなくす」といった安全策だけではなく、こういった工夫もしたかったんです。

左端の青い階段状のものが「等圧線の丘」
左端の青い階段状のものが「等圧線の丘」

ワーキングマザーたちの知見を、隅々に散りばめる

松本麻里氏(以下、松本):乃村工藝社には、育休を経て復職したワーキングマザーからなる「チームM」という組織があります。このチームのミッションのひとつは子どもにとって安心・安全・快適な空間を作ること。今回のようなプロジェクトでは、メンバーの知見を集めて提供しました。チームメンバーはいろいろな地域の保育園を利用しています。そのため、いろいろな保育園で多くの良い事例、悪い事例を見ています。メンバーの子どもには、さまざまな年齢の子どもがいることも強みです。

WNIレインキッズハウスは普通の保育園とは違い、幅広い年齢の子どもが集いますが、そこではどんな問題が生じる可能性があるのか。保護者は何を不安に思い、何に抵抗を感じるのか。そういったことをさまざまな角度から探求することができました。ちなみに異なる年齢を離ればなれにするばかりではなく、交流させることにも大いに意義を感じています。いずれのケースでも、異なる年齢の子どもたちが快適に同居できる場にすることが第一です。そうして保護者にとっての「目には見えないホスピタリティ」を生み出すことに注力しました。

松本麻里(まつもと・まり)
松本麻里(まつもと・まり):株式会社乃村工藝社 営業開発本部 企画開発部 開発ルーム、デザイナー。「チームM」のリーダーとして育児経験を活かした「子どものための安心安全快適」など、空間づくりをミッションに、施設ジャンルを問わず「子どものための空間プランニング」を担当。
WNIレインキッズハウス イメージレンダー図
WNIレインキッズハウス イメージレンダー図

A&A いいものは使おう。無いものは創ろう。

INDEX

ワーキングマザーの気づきを散りばめた保育園

VOL.1

ワーキングマザーの気づきを散りばめた保育園

時間的なロスを省き、仕事をスピーディに運ぶために

VOL.2

時間的なロスを省き、仕事をスピーディに運ぶために

商品情報

Vectorworksの2D/3D基本作図機能を搭載したベーシック汎用CAD「Vectorworks Fundamentals」、建築・BIM支援CAD「Vectorworks Architect」、造園や緑地計画用の「Vectorworks Landmark」、舞台計画やステージ&ライティング計画などに適した「Vectorworks Spotlight」、全ての機能を搭載した最上位版「Vectorworks Designer」シリーズが用意されており、利用用途に合わせてお選びいただけます。
http://www.aanda.co.jp/Vectorworks/

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