スーメイ・ツェの個展「スーメイ・ツエ – Moony Tunes」が、アートフロントギャラリーで開催される。

スーメイ・ツェは円熟期を迎えたルクセンブルグ出身のアーティストである。彼女は日常の中から個人的な記憶を抜き出し、シンボルやメタファーを使って誰もが経験し得る普遍的な体験へと変えてみせる。その表現形式は多様で、立体作品からビデオ、写真、インスタレ－ションまで与えられた場の状況にあわせて空間をつくっていく。

本展では、自然石を使って瀬戸内国際芸術祭での作品に呼応する作品を展示する。こちらは深い色合いの大理石を使って「三次元的絵画」の連作に挑む。月の満ち欠けを楽譜にみたて、リズミカルな円、光や色彩によって満たされた空間で、遠い海からの波の音を演出してみせる。ギャラリーではさらに、「Chinese Scholar Stones」にヒントを得た「Nested」が展示される予定である。古来中国で自然の造り出した奇形として愛でられたこれらの奇石は、室内に置かれた自然として特に宋時代以降文人らの文学や絵画の発想の源となってきた。ツェはカラフルな球体を自然石の中に埋め込むが、その様態は洋の東西を問わず世界中で親しまれている、ビー玉を使ったこどものゲームを思い起こさせる。

生まれながらにして複数の文化の根っこを持ち、美術と音楽の境界を行き来しながら五感と感情を表出してきたスーメイ・ツェ。2006年の妻有滞在中には陶でジャガイモをつくり、ジャガイモにだって個性はある、と主張した。個性と同時に自然や宇宙に関係性を求めるツェが、遥かな、しかし近しい国日本でどのような展開を見せるかご高覧いただきたい。

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●レセプション
日時：10月14日（金）　18:00～20:00