アプリや端末機器の出現以降、デジタルデータ配信が高度かつハイスピードに発展を遂げているいま、本というアナログメディアの概念はこれまでも、間接的にも直接的にも翻案されてきた。

同時代を生きる多くのデザイナー、クリエイターたちは、造本理念やエディトリアルをさらに展開し、本のあり方や読書という営みをより多元的なものへと変容させている。ブックデザインの意義がより厚みを増し、その概念も重層的性格をもたざるを得なくなった。“本たるモノ”は、文化と知識を伝えるための器にとどまらず、作品・商品・デザイン製品・アートといったさまざまな形式や身分を横断しながら、デジタル時代において求められる姿かたちで新たに立ち現れてきている。

台湾と日本で活躍するグラフィックデザイナー、ブックアーティストの聶永真（アーロン・ニエ）、林小乙（リン・シャオイー）、太田泰友、矢崎花の4名による本展は、特殊なマテリアルを応用したものから、巧みな伝統印刷技術を駆使したもの、彫刻品のような芸術品まで、作家それぞれが異なる文化的テクストや解釈を本に付与しているだけでなく、様式や創作プロセスといった条件も大きく異なる。書物がもちうる計り知れないポテンシャルと多様性を見出しつつ、観覧者が抱く既存のイメージを新鮮なビジョンで覆し、デフィニションを拡張していく。