本展は、従来の額に入った絵を眺めるような浮世絵展ではない。世界に誇る絵師が描いた浮世絵、約2万点を高精細デジタルデータ化。その中から選りすぐりの作品たちを最新の映像技術で動かし、巨大化させ、立体空間として表現した。「見る」のではなく「没入する」をコンセプトに、浮世絵本来が持つエンターテイメント性や、メディアとしての面白さを再び蘇らせようとする新しいデジタルアート展だ。

展覧会のはじまりは日本橋、人の往来で賑わう橋を渡れば、広がる江戸の街並み。江戸っ子たちの粋なファッションを眺め歩いてみたり、歌舞伎小屋の熱気を肌で感じた後は、波打つ江戸湾でひと休憩。そうこうしている間に日も暮れて、江戸の夜道には、化け物がでるとかでないとか。最後は煌びやかな吉原で、伝説の遊女に恋に落ち…。

世界で最も美しいと言われる門外不出の浮世絵「スポルディング・コレクション」をはじめ、ボストン美術館が所蔵する貴重な作品たちが、浮世絵が描かれた当時の世界を鮮やかに再現する。時間を遡り、江戸の街を歩きながら、隠された“秘密”を読み解き、一枚の絵に込められた文化背景や物語を楽しむ。まるで浮世絵の世界に迷い込んだかのような没入感を体験していただきたい。