野島良太は1987年生まれ。2012年に武蔵野美術大学の油絵学科を卒業後、東京で制作を続けている。近年は「TWS-Emerging」(トーキョーワンダーサイト渋谷）や、アーティストランスペースでの展示に参加するなど、徐々に発表の場を広げている注目の作家だ。

ペインティングやドローイングを媒体として制作をする野島は、人物や風景、動物などを淡い色調とラフなタッチで描く一方、白く塗られたパターンが配置された抽象度の高い作品を手がけるなど、形式に囚われない独自の表現世界を追求している。

物語絵画と抽象絵画の要素を併せ持つ作品は、一見しただけでは内容を捉えきることはできないが、作品が持つイメージや形、色、筆致といった要素の数々が鑑賞者の感性に呼応し、そこから現れる物語や世界を想起させる。

野島自身も具体的な対象を描いているのではなく、キャンバスに絵の具を置いた際の色や偶然できた形、筆致など物質的な存在から、自身の記憶の中の体験や感覚の断片が引き出され、それらが結合して作品になると話す。絵画を通じて世界や他者と繋がるという根源的で確固たる信念と、創作への衝動が、表現力の幅広さにも揺らがない緊張感と開放感が併存する画面を作り出す。この機会にぜひご覧いただきたい。