こんにちは、佐藤ねじと申します。デザイナー・プランナーとして活動しています。5回目のコラムとなります。ここでは、僕の偏った「変な」発想法をシリーズ化して、ご紹介したいと思います。今回は「そのまんま」発想法。言葉通り素直に表現することで、面白い表現になる手法でして、愛用している考え方の1つです。
慣用句を、そのまんま表現する
この手法でつくったものの事例の1つは、2009年と昔の作品になりますが、「八百一彦」というサイト。「目が回る」「でかい顔をする」など、慣用句をそのままインタラクティブに表現する作品です。
八百一彦
http://yaoichihiko.nezihiko.com/

「顔が広い」
クリックすると、どんどん顔が広くなっていく。今みると、地獄のミサワみたいですね。
「目を丸くする」
クリックすると、黒目が丸くなる。今みると、テラフォーマーズみたいですね。
「目じゃない」
目かと思いきやクリックすると、実は虫で、ブーンと飛んでいく気持ち悪いやつです。
このように、僕の顔をつかって、慣用句の通りの動きをすることで、不思議な体験になるサイトです。2009年で、まだ作品数も少なかった、自分の「顔を売る」という意味も込めた作品でした。
もう古くて、動かなくなってしまったのですが、今でも好きな作品の1つです。
なにかの情報を言葉通りにやると面白くなりやすい
僕らはふだん、比喩やひねった言い回しをすることが多いです。例えば「ヤバイ曲を集めたアルバム」と言った場合、危険な曲ばかり集めたという意味ではなく「すごく良い曲ばかり集めたアルバム」という意味になりますよね。
でも裏をかいて、「ヤバイ曲を集めたアルバム」と題して、その言葉どおり「危険な曲」ばかり入ったアルバムを作ったら、面白いものができるかもしれません。例えば、心霊現象的な音が入ってしまった古今東西の「霊的にやばい曲ばかりのアルバム」とか、めちゃくちゃ音痴な歌ばかり集めた「商品としてヤバイアルバム」とか。欲しくはないですが……。
このように「そのまんま」発想法とは、言葉をまっすぐ文字通りに受け止めて、変わった案が出すという手法です。
この人を探せ
これは、たくさんのフォントの「人」という漢字の中から、たった1種類だけまぎれているフォントの種類の「人」を探すコンテンツです。フォント版、ウォーリーを探せ。
ステージ1は探せば分かりますが、ステージ6までいくと、新ゴファミリーの太さ違いの中から探すという、超難易度の高いゲームになっています。このサイトを見続けていると、ゲシュタルト崩壊が起こり、「人」とは何か分からなくなっていきます。PC限定です。
この人を探せ
http://people.nezihiko.com/


これも「人探し」という言葉を、言葉通りそのまんま表現したものです。
言葉を置いて、そのまんま発想をすると、自分でも想像していない表現が見つかることが多い印象があります。
あたりまえポエム
3つめの事例として、友達の氏くんがつくった「あたりまえポエム 君の前で息を止めると呼吸ができなくなってしまうよ」。これもまさに、そのまんま発想法ですね。
あたりまえポエム
http://amzn.asia/6XEXUjq

真ん中へシュートする
この発想法は、PKに例えるなら「真ん中にシュートする」ような狙い方だと思います。ふつう面白い表現というものはひねる必要があるから、ゴールの右上隅など、奇抜な場所を狙いがちです。それは全然悪いことではないのですが、隅狙いのシュートが続いたあとに、たまに真ん中シュートをすると、効果的なんじゃないかなと。

ポエム業界は、誇張の多い表現が多いから、「あたりまえポエム」の真ん中シュートは見事に決まりました。
英語のTシャツをデザインそのまま、日本語に翻訳したTシャツにしたら、すごくダサくて面白い表現になりそうです。音楽の歌詞も比喩の多い世界なので、有名な歌詞をそのまんま実写化したり、行動したら、笑えるコンテンツになるかもしれません。
この発想法が、何かの問題解決にすぐ使える、即効性のあるメソッドだとは思いません。ですが、思考パターンとして1つ持っておくと、発想は広がるんじゃないかと思います。
隅狙いのシュートが多い方は、たまにはど真ん中へ、そのまんまシュートをされてみてはいかがでしょうか。