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vol.01 坂崎千春(絵本作家・イラストレーター)

vol.01 坂崎千春(絵本作家・イラストレーター)

人として、作家として

人気のキャラクターを多く生み出してきたイラストレーター・坂崎千春さん。多忙になった今も、出会った仕事に精一杯取り組むというスタンスは変わりません。人との関わりの中で見つけた自分の個性を活かし、さまざまな作品に取り組む。そんな坂崎さんに、仕事で自分を輝かせるためのヒントを尋ねました。

苦手や弱点は自分の個性の裏返し

鉛筆を使う
絵を描く時は芯が柔らかく描きやすい鉛筆を使う

実は、多色使いと背景を描くのが苦手なんです。嫌いではないのにいざ自分で描こうとするとうまくいかなくて。大学の頃も、リスベス・ツヴェルガーの情緒的なタッチに憧れたのに全然描けなかった経験があるけれど、自分が好きなこととできることって違うんですよね。
若い頃なら、こういう自分の弱点も諦められずに隠したかったと思います。美術を学んでいた者として、これじゃダメだって気にしていましたし…。でも本当は、苦手な部分こそ自分の個性に繋がる鍵なんです。私であれば、ある対象をシンボライズして単品でも成立する作品を出すのが得意、っていう感じでね。
今も昔も、楽にできた作品の方がいいと言われたり高い評価をいただいたりすることが圧倒的に多いです。苦労した作品は直しが入ることが多いけど、「コレは簡単」ってできた作品は意外とすんなり進んじゃう。迷う時はきっと自分でも正解が見えていない時なのでしょうね。確信が持てないから苦しいんだろうし。キャラクターは特に、パンと出た案の方が絶対いいです。カクカク・シカジカもコンペだったチーバくんも、ほぼ最初の案のままです。
こんな風に周りの人からの作品の評価をもらう中で、自分が楽にできる部分を伸ばす方がいいんだと少しずつわかってきた気がします。

キャラクターづくりと仕事への接し方

Suicaのペンギングッズたち
Suicaのペンギングッズたち

キャラクターを考える時のポイントは特にないですが、自分の個性を出しすぎないように注意しています。あとは、頭に浮かんだものをあまり早い段階で紙に描かないことかな。視覚化するとそこに引きずられがちなので、頭にアイデアを溜めつつ形がある程度固まるまで待つんです。アイデアを充分溜めたもの提案するので、一発で決まってくれると楽なんですが…もちろんうまくいかない時だってありますよ(笑)。
クライアントワークとオリジナルワークの違いは、決定の主導権がどちらにあるかだと捉えています。
広告はクライアントさんにあるから自分の意見と違っても気にしない。逆に、絵本などは自分だから「ここは絶対譲らないよ」という主張も出しています。
今は、これが両方あるからストレスなく仕事ができているんだと思います。むしろ、登場人物の性格や動きまで考える絵本の考え方が広告キャラクターにも自然に出ていたり、バランスいい状態なのかも。Suicaペンギンなんてクライアントさん自ら「この子はこんな動きしないよ!」って指摘してくれたり、お互いに性格を作る感じにまでなっていて面白いですね。あと、カクカク・シカジカのように自分では選ばない動物に挑戦できるのも広告ならではです。鹿って普段あまり描こうと思わない動物だもの(笑)。

求められたらそこに向かうのが自分

「本当は自作のアニメーションも作ってみたいんです」
「本当は自作のアニメーションも作ってみたいんです」

今、平行しているのは、Suicaなどの広告キャラクターなどの制作、イラストエッセイの「ビンゴ先生」や「迷子の星座たち」などの連載です。今後はもう少し、2つの連載のような物語創作系ができたらいいですね。実際は広告の作業があるので難しそうですが…。
改めて今後のことや将来を聞かれると、私って本当に人生設計をしてこなかったんだなと思います。来る物は拒まずで去る物も追わない、求められたらそこに向かうのが自分ってスタンスで。だから50歳まではこれで行こうと思います。やりたい仕事をやるというより、出会った仕事にやりがいを見つけてきたように思います。今までほとんど持ち込まれた仕事だったけど、どれも面白かったですからね。
この職業は、来た仕事を選ばずにやっていけば道が開けていくと実感しています。初期の頃なら、不得手な分野も込みで最善を尽くせば必ず次の仕事につながっていくし、成長もできる。あとは得意な面も伸ばしていけば…ただこれは一人だと難しいですよね。私も、キャラクターが向いてるのは人に教えてもらったようなものですから。自分の好きな物と得意な物も違うし、自分のことって自分では意外とわからないんですよね。だからまずは自分の頭のなかにあるものを形にして、人に見てもらうことが大事だと思います。そして人からほめられた部分を自分の得意分野と認識して、それをさらに磨いていき、人に喜んでもらう。人に喜んでもらえると嬉しいので、またがんばる。その繰り返しがイラストレーターの仕事の醍醐味かなって思います。

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