中川ケミカル | 発想、素材、技術 × 装飾用シートでデザインの可能性を創造するCSデザイン賞 (2)

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発想、素材、技術 × 装飾用シートでデザインの可能性を創造するCSデザイン賞

発想、素材、技術 × 装飾用シートで
デザインの可能性を創造するCSデザイン賞

2014/09/10 UPDATE

Vol.2パッケージも含めた、新しい装飾用シート製品のデザイン

CSデザイン賞は、一般部門と学生部門の2部門で審査される。フレッシュなアイデアが集まる、学生部門第18回のテーマは“デザインステッカー”である。このアワードに興味のある人なら、おや、と思うかもしれない。前回の学生部門のテーマもデザインステッカーだった。これまではパブリックな場でのCSデザインを学生部門のテーマとしてきたが、前回身近なCS商品の開発へとテーマを変更したことで、主催者の想像を超えるユニークなアイデアが集まった。同じテーマだからこそ、新しい視点での、もっと思い切った、自由な発想で掘り下げられたチャレンジがあるはず。そう期待してのテーマ設定である。

学生部門／金賞「ISHIKI/MUISHIKI」
学生部門／銀賞「3D Arrow」

商品化を念頭に置いたデザインというのは、手ごわいものだ。まだ実務に携わっていない学生にとってはハードルが高いかもしれない。実際の商品の楽しさに加え、それを買う人にどう理解してもらうか、パッケージを見た時に使い方が分かるか、そもそも誰に買ってもらうのか、など、考えることは多い。しかし、それらの困難を乗り越えれば、自分が考えた商品を手に取って微笑む人の姿を目にすることができる。テーマに沿えば、手軽に貼ることができる装飾的なもの、機能的で役に立つものなど、何でも構わない。ただし、商品名、パッケージまでを、試作品も含めて提案する（応募時にはさらにプレゼンボードが必須となる）。

金賞を受賞したのは、ペンで描く“線”の性質と、貼ったりはがしたりできる“シール”の特性を掛け合わせた作品、“ISHIKI/MUISHIKI”。線を引く・線で囲む・ペンで塗る、という意識的なパターンと、単にくしゃくしゃと意味もなく重ねたような無意識的なパターンをCSで表現した。貼り付けても下の文字が読める半透明もの、文字が見えなくなる透過性のないものがあり、このようなシールでマーキングすれば、ただの書類も見やすくなり、楽しげな印象となるだろう。

賞の“3D Arrow”は、CSを簡単な仕掛けで切り合わせ、立体的な矢印を作るもので、金賞の作品と同じく、新たなCSの使い方を提案した点が評価された。2点目の銀賞の“おうち五輪”は、「シールとしてはある意味オーソドックスだが、ビジュアルも含め、遊びとしてのCSの扱いと完成度が群を抜いている」（審査員・工藤青石氏）と評され、現在、銅賞の“YUWAI”、入選作品の“SEI-TON”とともに、商品化が検討されている。

学生部門／銅賞「YUWAI」
学生部門／入選「SEI-TON」
学生部門／入選「PARKING」

“YUWAI”は、水引をモチーフとした、普段使いのモノを祝いのアイテムへと変化させるステッカー。“SEI-TON”は整理整頓を助けるステッカーで、色違いのブタのアイコンが上半身・下半身に分かれており、たとえば携帯電話と充電器のように、それぞれの定位置に戻すことを視覚的にサポートする。こうやってペアにする癖をつけることで身の回りが整頓されていく。

入選作品の1つである “PARKING”は、“SEI-TON”と同じく定位置管理を可能とするアイテムだ。近年の片づけへの興味の高まりを反映しつつ、CSの活用によって暮らしをもっと快適に、豊かにするという実用的な要素が盛り込まれている。このような新たな提案が、これからのデザインステッカーには必要となる。

入賞作品にはそれぞれユニークなアイデアが見られたが、今回の応募作品が全て手放しで良いわけではなかった。審査員の廣村正彰氏は「入賞作品は新たな方向の提案がなされているが、前回受賞作品の傾向を研究している学生が多いせいか、全体的に前回と似た作品が集まった」と評した。

また、審査員長の松下計氏は「仮設的な商品性を思えばユーザとの一時的な関係性に目を向けた、賞味期限のやや短い提案が多かった」と振り返り、「自分の身の回りの小さな公共に対する提案があればもっと良かった」と総評で述べている。CSはそもそも広告やディスプレイに使われることの多い、公共性の高い素材だ。CSデザイン賞の成り立ちを考えれば、当然の指摘である。今後のCSデザイン賞でどのような提案がされるのか、期待したい。