空間×グラフィック
カッティングシートにみる無限の表現力
2012/08/01 UPDATE
Vol.1色・透過・影・反射、3次元を楽しむ
裏面に粘着性のある、カラフルで薄手の塩ビ製カッティングシート(装飾用粘着シート)で、どんな表現ができるかを考えたことはあるだろうか。一般的には、ガラスなどの表面の色を変えたり、切り抜いてロゴや看板を作ったりという用途に使われるカッティングシートだが、これを単なる色シートと捉えていたならば、クリエイティビティにあふれる表現を作り出すことはできない。しかし、その特性を理解して使いこなせば、思いもよらない表現が可能となる、実にユニークな素材なのである。
ガラスの上に色をつける装飾ができるのは、カッティングシートならではの利点である。そもそも、カッティングシートはペイントの代替品として発達してきた。安定したカラーを簡単に使え、それを取り去るのも容易であるため、定期的にデザインを変えるショーウィンドウの装飾には欠かせない。この“ガラスに色をのせられる”という特長は、ショーウィンドウだけではなく、建築やインテリアの分野でも活用されている。
たとえば、ミラーにカッティングシートが映り込むことで空間に浮遊感を持たせたデザイン。板ガラスに透明なカッティングシートを貼り付けてカラフルなファサードを作り出した建築物など、“透過による光を楽しむ”“影を楽しむ”といった手法もある。ハーフミラー素材を用いて“写り込みを楽しむ”表現も可能だ。
もちろん、カッティングシートが使われるのはガラス面だけではない。“シートそのものの色を楽しむ”という基本的な特性を壁面等で発揮する例もあれば、輪郭のハッキリした色づかいで“目の錯覚による立体感を楽しむ”というデザインを施した例もある。
いずれにせよ、ほんのひと手間を加えることでユニークな空間を作り出せるのが、カッティングシートの最大の魅力と言えるだろう。なお、カッティングシートには多くの種類があり、色相とトーンを少しずつ変えたカラーチャートから色を選ぶことができるため、微妙なグラデーションも表現可能だ。
これらのカッティングシートを開発製造する中川ケミカルは常に新たな表現への挑戦を続けており、金、銀、さらに緑青や螺鈿(らでん)といった本物の素材を、誰もが扱えるように加工したマテリオシリーズの開発にも成功。独特の質感が再現できる究極のカッティングシートは、デザイン業界で高く評価され、注目を集めている。
※写真はいずれも第17回CSデザイン賞 一般部門 受賞作品。(1)中川ケミカル賞「ocean of dots」、(2)中川ケミカル賞「トリアスモール」、(3)準グランプリ「ポリゴン・ピクチュアズ」、(4)優秀賞「“9 Gold”227十中破竹展 出品作品」